囚人【レイカオル】

囚人と紙飛行機、僕夢バージョンです。 ちょっと色々いじくったり、全部まとめてみたりしました。
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二次小説創作ぶどー。 @uminosati

そのまま拳をつくり……そいつの顔面に、当てた。左頬に当たる。そいつはよろける。 ……力が弱かったか。もう一発。そう思った瞬間だった。 「はい、終了」 その声と同時に、首に強い衝撃がはしる。視界が一気に暗くなる。 その声は、ノドカさんのものだった。そして、そのまま僕は意識を失った。

2015-03-30 02:49:14

「ノドカさん……何で……」
その言葉は喉まで出かかっていた。だけど、その前に意識が途切れてしまった……

二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……っ……」 目が覚める。体が重く、頭がズキズキと痛む。 「あ、れ……?」 手を動かすと、ジャラッという音がした。ついでに言うと、足も。 見てみる。両手首手足に、鎖がついていた。 「な、なに……」 それを見た瞬間急に意識が冴え、慌てて辺りを見回す。見慣れない場所だ。

2015-03-30 12:38:38
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「ああ、起きた?」 いつの間にか、目の前にはノドカさんが立っていた。いつものように微笑んでいる。だけど、僕にはその表情がとても怖かった。知らない。こんなノドカさん、知らない。 「君の処分が決まったから、伝えに来たよ」 ……は?処分? 何を言っているのだろうか。意味が分からない。

2015-03-30 12:41:45
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「外部との接触、看守への暴力。 ……これで、処分が無いっていうのは有り得ないよねぇ」 そう言い、また微笑む。 「の、どか、さ……」 信じられない。今まで、仲良くしてきたと思ってた。 なのに……それは、それは…… 「僕を安心させるための……嘘だったって、事ですか……?」

2015-03-30 12:44:21
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「そうなるねぇ」 さらり。何でもない風に、さらりと言う。 「う……そ……」 「嘘じゃないよ?……ああ、今までの私の行動は全て嘘だけど。君を安心させるための、ね」 何かが。何かが壊れていく。 「……僕は……何の為に、生かされていたんですか……?」 震える口で、必死に言葉をつなぐ。

2015-03-30 12:46:49
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「あの子を長く生かすため、さ」 ……へ?あの子……? よく分からない。でも、それって、その言葉って、つまり…… 「実験として利用させてもらったよ」 そして、崩れ去る。ギリギリまで踏ん張っていた理性も、心も何もかもが。 「あ、ああ……あああああああああ!!」

2015-03-30 12:49:36
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「おや……まあ、大丈夫だよ。君はもうすぐ何も関係が無くなるから」 そう言い……ノドカさんの顔から、表情が無くなる。 「じゃあ、後は頼みましたよ」 そう言うと、看守の人が出てくる。そして、両手足の鎖を外し、手首についた鎖を持った。

2015-03-30 12:51:48
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「さっさと立て!」 そう言われ、僕はフラフラと立つ。 その様子をノドカさんがじっと見つめている。そして、何かを思い出したようにこう言った。 「そうだ。前、レイ君にあげたあの花。あれ、アメリカイヌホオズキって花だよ」 ……何故、今それを言ったのか僕には理解できなかった。

2015-03-30 12:55:38

そして、広く長く冷たい廊下を歩かされた……

二次小説創作ぶどー。 @uminosati

大きな鉄扉の前に立たされる。その大きさと立派さに、少しだけ驚く。 「ふ、副看守長!」 扉から視線を滑らし横を見る。見知った二人が、そこにいた。 「……何の用」 自分でも驚くほどの冷たい声が出る。 「副看守長だから、囚人の処刑は見届ける義務がある」 いつもの冷たい声で返事を返した。

2015-03-30 16:45:53
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

……よく見ると、1人は黒い眼帯をしていて、1人は左頬に傷を負っている。 「……お前にやられた傷だ。俺はこんな傷が残り、リョウは右目を失明した」 「へえ、それはよかった」 その瞬間、そいつが胸倉に掴みかかってきた。 「お前……!」 「ソウタ」 それを制したのは、失明した白髪の人。

2015-03-30 16:50:02
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「りょ、リョウ!」 「……ソウタ」 じっ、と。白髪の人はそいつの目を見つめていた。まるで何かを訴えるかのように。 「……っ」 悔しそうな、悲しそうな表情をしてそいつは僕の胸倉から振り払うように手を離した。僕はそのまま尻もちをつく。 「立て!ほら、早く中入れ!」

2015-03-30 16:53:11
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

そう言い鉄の扉を開け、僕を投げるようにして無理やり部屋の中へ入れさせる。 「……副看守長」 「ああ。ソウタ、閉めるぞ」 「……分かった」 そして、どんどん扉は閉まっていく。部屋はどんどん闇に包まれていく。 ……もう、死んでも未練はない。生きていても意味はないから。

2015-03-30 16:57:35
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

何もかもを諦め、冷たく硬い床に倒れ込んだその時。 カサッ 紙の音が聞こえた。その音は、僕の服の中から聞こえたような…… その場所へ手をやると、確かに紙の感触がした。そして、思い出す……あの日の事を。

2015-03-30 16:59:38
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「そうだ……あの日、僕、1枚だけ守って……」 ……そう。手紙を破かれたあの日。実は、1枚だけさっと服の中にいれて、破かれるのを逃れていたのだ。 ……彼女の、手紙。それが、今ここにある。 読もうとする。が、部屋は既に暗闇に包まれようとしている寸前だった。 「待って!開けて!」

2015-03-30 17:02:05
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

そんな声も虚しく……扉は完全に閉められてしまった。何も見えない。 「ねえ、開けて!彼女の手紙があるんだ!それを読みたいんだ!開けて!」 扉を叩く。……けど、返ってきたのは…… シューッという音がする。胸が突然苦しくなる。 それは、毒ガスだった。そして、その場に膝から崩れ落ちる。

2015-03-30 17:05:01
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「う、あ、がっ……」 胸のあたりを手でおさえる。苦しい。息が出来ない。 そのまま扉に背をつき、手紙を胸へ抱きしめた。少しだけ安心する。 だけど、息苦しいのに変わりはない。 「あ"……だっ……」 助けを求めるように手を伸ばす。だけど、それは空気を掴むばかり。

2015-03-30 17:08:04
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

口を大きく開き、空気を吸おうとする。だけど、出来ない。当たり前に出来ていた事が、出来ない。見開いた目からは涙がボロボロこぼれ落ちていた。 「いぎ、だい"……」 必死に声を出す。 「あの"子に……あい"だい"っ……」 それは、僕の本心からの言葉だった。

2015-03-30 17:10:45
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「う……ぐ、が……あ……」 そして、そんな言葉も発せられなくなる。口を開いても、呻き声しか出てこなくなった。 ……どんどんと息苦しくなり、どんどんと意識が遠ざかっていく。 これが、「死」…… 最後に、君に会いたかった。それが、僕の最期の願いだった。

2015-03-30 17:13:46

後日談

二次小説創作ぶどー。 @uminosati

【囚人】最終話 中性的な顔立ちをした男が、小さな墓に向かって問いかける。 「君は、生きていて幸せだった?」 返事は何も返ってこない。 その男は墓に小さく可愛い白い花を手向けた。それは、アメリカイヌホオズキ。前、目の前で静かに眠っている少年にあげた花と同じものだった。

2015-03-30 17:20:03
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……アメリカイヌホオズキ。花言葉は『男への死への贈り物』……君は、私にこれを渡された時点で……こうなると、決められていたんだよ」 その言葉に、反応は何もない。当たり前だが。 そして、その男は白衣を風に靡かせながらその場を去った。 「君と、もっと過ごしていたかったよ」

2015-03-30 17:23:12
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