紙飛行機【カオルレイ】

紙飛行機、前編です
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二次小説創作ぶどー。 @uminosati

【紙飛行機〜カオル〜】 あと半年しか生きられないと余命宣告を受けた、あの日。生きる事を諦め、何もかもに自暴自棄になっていたあの日…… 私は、柵の向こうの少年に恋をした。

2015-04-02 21:59:26
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

おっとっと。まずは私の紹介をしなくては。 私の名前はカオル。原因不明の病にかかっているため、病院に入院している。病気の症状は、どんどんと体が衰弱していく……というもの。不治の病だ。 でも、この病院にはそれを治せるかもしれないという先生がいるから……もしかしたら、治るかもしれない。

2015-04-02 22:02:24
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「やっほーカオルちゃん」 「検診の時間よ」 ……っと。自己紹介はこれぐらいにしておこう。先生が来た。 『ユウ先生、チサ先生』 数年前から声が出なくなってしまい、今は手話で話している。 「じゃあ、まずは血圧から測るわね」 『はい』 そう言いテキパキと準備をしていくチサ先生。

2015-04-02 22:05:58
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「血圧、は問題ないわね……」 「体温も問題なし。正常だよー」 こうして、朝の検診は終わる。2人の先生は用具を手慣れた様子でしまっていく。 「そういえば、カオルちゃん」 チサ先生が、目線を上げずに聞いてきた。 「変わった事はないかしら?例えば、目眩がする……とか」

2015-04-02 22:08:54
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

目眩?そんなものは特にない。その他の変化も特になし。 『いいえ』 そう答えると、チサ先生は少し呆気にとられたような顔をする。 「……そう。ならよかった」 でも、何故そんな事を聞いてきたのだろうか。私にはそれが少し不思議だった。 こうして、今日の朝の検診が終わった。

2015-04-02 22:12:33

これが、私のいつもの日常。
今では愛すべき平凡な日々……

二次小説創作ぶどー。 @uminosati

そして、その昼。珍しいお客さんが病室に来た。 「カオルちゃん元気?」 「……見舞いに来た」 白と黒の、髪色。性格も真反対の2人。 『リョウさん、ソウタさん!』 ……そう。リョウさんとソウタさんだ。この2人は、お父さんの仕事の部下らしい。

2015-04-04 23:36:23
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

あれ、そういえば……私お父さんが何の仕事をしているかハッキリ分かってない。でも、この病院の隣にある建物でお仕事をしているのは知ってる。 まあ、何の仕事をしていたとしても私には関係ない……はず。 「調子はどう?」 『いつもと変わらずー、ですよ』 そう言うと、2人共怪訝な顔をする。

2015-04-04 23:42:25
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『……えっと?』 「あ、いや、気にしないで!何でもないよ!」 チサ先生達といい、リョウさん達といい……一体どうしたのだろうか。 「……そういえば」 林檎を皮をむいていたソウタさんが口を開く。 「退院の日時が決まったぞ」 ……? ………… ……………… ……えええええええ!!?

2015-04-04 23:46:57
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「は、ちょ、おいソウタ!?」 「嬉しいか?」 ……嬉しいを通り越して、信じられない。 『え、でも病気……』 「もちろん、それが治ってから」 病気が、治る……? 『病気、治るんですか?』 「ああ」 何でもないようにそう言いきるソウタさん。 ……嬉しい。とても、とても嬉しい……!

2015-04-04 23:49:23
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……っ!ご、ごめんなカオルちゃん。ちょっと用事思い出したから、俺達そろそろ帰るね」 そう言い、リョウさんはソウタさんの腕を掴んで病室の外へと足早に去ってしまった。 病室に残ったのは、ソウタさんがむいてくれた林檎と嬉しくて泣き出した私。

2015-04-04 23:51:27
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

泣いたのに気付いて、出ていってくれたのかな……そうだとしたら、とても優しくて気が利く人だ。 そして、何気なくフォークを手に取り林檎を一口食べた。その途中で涙がポタポタ林檎に落ちてしまった。少しだけ、しょっぱかった。

2015-04-04 23:53:54

「退院」
その言葉は、私に希望を与えてくれた。

二次小説創作ぶどー。 @uminosati

次の日。いつもと同じように朝の検診が始まる。 『そういえば、チサ先生』 「どうしたの?」 『私、退院出来るって本当ですか?』 そう手話で伝えた瞬間、チサ先生は注射器を落とし、ユウ先生も持っていた紙の束(カルテ、って言うんだっけ……)をバサバサと床に落とした。

2015-04-05 17:59:19
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……誰から、聞いたの……それ?」 数秒の間があり、ようやく口を開いたチサ先生。落とした注射器には目もくれない。 『へ?え、えっと、昨日の昼間にソウタさんに……』 「ソウタ……あの野郎……!」 ……チサ先生の、この反応は何なのだろうか。私にはよく理解出来ない。

2015-04-05 18:02:36
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『あの、チサ先生?』 「……あ、ああ、ごめんねカオルちゃん。驚いちゃった?」 いいえ、と伝え笑顔を見せる。よかった。いつものチサ先生だ。 「全く……折角私から伝えようと思ってたのに……」 なるほど。それなら、さっきのチサ先生の反応にも納得がいく。

2015-04-05 18:05:19
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「ああー!楽しみ奪われた……ねえ、ユウ?」 「え?……あ、う、うん。そうだね」 「何ボーッとしてるの?……あ、注射器落としちゃったから新しいの持ってきて」 「はいはい」 そう言い病室を出ていくユウ先生。私はそのやりとりを笑顔で眺めていた。

2015-04-05 18:07:31
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

チサ先生とユウ先生はとても仲がいい。なんでも、研修医の時代から2人一緒だったそうで…… 「……と、いうわけでカオルちゃん。今年の秋の終わり頃には無事退院出来るよ。でも、病気を治すために手術とかしなくちゃいけないけどね」 改めて私に向き直り、お医者さんの顔でそう告げるチサ先生。

2015-04-05 18:09:48
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

こういうところを見ると、チサ先生は本当にかっこいいなあ……と思ったりする。 『手術……』 「うん。難しい手術になるから、カオルちゃんとお父さんの許可がいるんだけど……」 難しい、手術。考えるのが少し怖い。 だけどそれが終われば……私は退院出来るのだ。家に帰ることが出来るのだ。

2015-04-05 18:12:44
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『私は平気です』 本心を伝えた。すると、チサ先生はふっと笑う。 「よし!よく言ったカオルちゃん」 そう言い、頭を撫でてくれる。その手は優しく、温かい。 「よーし、カオルちゃんのために、私も頑張ろう!」 『お願いしますっ!』 そして、チサ先生と笑顔でハイタッチした。

2015-04-05 18:15:50

退院出来るのなら、手術だって怖くない!

……あれ、雨が降ってきたみたい。

二次小説創作ぶどー。 @uminosati

ざああ……と部屋に響くその音。窓の外を見てみると、空はいつのまにか曇り空となり雨が降っていた。 「カオル、元気かい?」 そんな時に訪れたこの人。黒のコートを脱ぎ、帽子を取り、病室に入ってきた。銀縁の眼鏡がキラリと光る。 『お父さん!』 そう。この人は、私のお父さん。

2015-04-06 23:50:55
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「元気そうだね。よかった」 そう言い、ベッドの横へ椅子を置いた。 『お父さん、もうお仕事は終わったの?』 「終わってないけど……カオルの顔が、見たくなってね」 そう微笑み、椅子に座る。 お父さん。優しく、そして……私の唯一の家族だ。お母さんは、私を産んだ時に死んでしまったらしい。

2015-04-06 23:54:23
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「そういえば、もう退院の話しをきいたんだって?」 『うんっ!退院出来たら、色んなことをしたいなあって思ってるの!』 「そうか。それはよかった」 そう言い、頭を撫でてくれる。その手からはチサ先生と違った優しさ、暖かさが伝わってくる。 とても、安心する。お父さんがいれば、私は大丈夫。

2015-04-06 23:57:41
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

それから1時間ほどお父さんとお話しした。 「カオルちゃん、夜のご飯タイム……って、あ、カイトさん」 チサ先生がご飯を持ってきてくれた。そして、お父さんを発見する。 「ああ、もうそんな時間か……では、お父さんはもう行くね」 そう言いコートと帽子を持ち、部屋を出ようとした。

2015-04-06 23:59:33