4/1（水）大井浩明　《不屈の民》変奏曲(TPUWNBD!)＋《毛沢東詞三首》

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　　グル高橋のミサ＠浜離宮に行って来ました。
　　知人のネトウヨ・Ｋさん（笑）から、「余ってるのでもらって～」とお知らせを拝見したのが２ヶ月前で、そもそもジェズアルドを平均律のモダンピアノで弾く公演など論外なので無視していたら、先週再び「余ったままなのでもらって～」とのお知らせを頂き、そこまで人気が無いなら、と馳せ参じました。（・・・）
　　登場したグル高橋、まあとにかくしゃべるしゃべる、片時もマイクをはなさず、しゃべっては弾き、そのまま退場するかと思いきやまたしゃべり出す。内容はいつもの如く、その折々に自分に都合の良い歴史観・世評談義、柴田南雄止まりの音楽学知識、それを粉飾するデマと余談。
　　バッハ・ハイドンは、あんな短いのにわざわざ譜めくり嬢が出版譜をめくってました。
　　高橋氏のピアノ演奏が論評に価しなくなってから既に久しい。ここ十数年の感じで言うと、アマチュア中学生レベルがアマチュア小学生レベルへ退行した感じ。舌はまわるのに、まわらぬ指。コンサート冒頭のフランス組曲第５番アルマンド、あそこまで体全体を硬直させた（その結果指が回らない）ピアノ演奏というものを聴いたことが無い。バッハのフランス組曲やハイドンソナタなんて小学生時代に弾いていたものでしょうが、恐らくご本人の１０歳時点より劣化している。生まれてからずっと家にグランドピアノがあり、考えうる最高の教師陣に早期エリート教育を施され、主にピアニストとしてキャリアビルディングしたにも関わらず、ここまで人間ってピアノが下手糞になれるのかという奇観。あれほど近代批判・啓蒙思想批判してるくせにモダンピアノは決して手放さない倒錯。ＭＣでハイドンの時代にフォルテピアノが「進化した」と言ったのは、聞き逃しませんでしたよ。そこまで指がふにゃふにゃなら、心おきなくチェンバロやクラヴィコードを弾けばいいじゃない。
　　ともあれ古楽的観点であろうがモダン奏法的観点であろうが評価出来る点は毫も御座いませんでした。もしこれをいまだに評価するプロ評論家がいたとしたら、そいつは耳節穴と断言して良いです。（・・・）
　　せっかく作曲家なんだから、フランス組曲には即興プレリュードでも付けたら宜しいのに。バッハもハイドンも繰り返しアリでうんざり。バッハの繰り返し時の装飾は、もたもたしたトランブルマンと上昇ティエルス・クレーの２パターンのみ。ベーレンライター版しか見て無いと気付かないけど、816のサラバンド最後のフィオリトゥーラは一回目は初期稿を使うと二回目が生きますよ。
　　（・・・）バッハ・ハイドンはともかく、ジェズアルドをピアノで弾くのは、真鯛の刺身にメイプルシロップをかけるが如し。そういえば１０年前にジョヴァンニ・ド・マック《ストラヴァガンツァ》の氏による頓珍漢な演奏はコア石響で聞きました（もちろんモダンピアノ）。その時点から一歩も進歩なし。ジェズアルドというよりは、「河合拓始が初見で、難しいところは適当に細かい即興を入れながら弾くショスタコーヴィチの前奏曲」、みたいな感じでした。とにかく不思議なのは、次々に聞くに堪えない演奏をした直後でも、へらへらとＭＣを続けられること。頭おかしいんか？　しかもブラボー叫ぶ信者とかいるし。
　　前半最後、クリスチャン・ウォルフ《Pianist:Pieces》(2001)。クセナキス追悼作品。曲はいつものスカスカのウルフ調。ＭＣで「シナファイは自分が初演した」と発言。初演者はジョルジュ・プルデルマシェ。
　　やっと休憩かと思いきやまたマイクを握り、「福島の放射能汚染はまだまだ危険であること」「東京も決して安全とは言えないこと」を強調、「かと言って反原発を主張してるのではなく考えるための材料を提供しているだけ」と日和り、最後にわざわざゲーテ《聖なるあこがれ》を情感たっぷりに朗誦。
　　後半、高橋《海からの黙示　Revelation from the Sea》(2012/14)。作曲者による解説：「２０１１年の地震、津波、原発事故の後の富山妙子の絵画から２０１２年に作曲し、２０１４年に映像が完成した。予知できない災害と見えない放射能をめぐって、政治や経済にまどわされない想像力をはたらかせるように、少ない音と静かなイメージの２４分間」。
　　チラシでもパンフレットでも、福島はつねに「フクシマ」とカタカナ表記。富山妙子の品性下劣極まりないスライドには心底吐き気がした。火災・廃墟・血・津波を想起させるおどろおどろしいイメージが浜離宮ホールステージ背面に拡大投影され、そこに「フクシマ　セシウム１３７」などの文字が次々に挿入される。過呼吸を起こす客がいても不思議では無かった。ＭＣで何度も「福島の蝶は遺伝子異変」と連呼していたが、それって３年も前のデマですから。　http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/skondo/saibokogaku/great fishing.html　この遺伝子変異した「蝶」というモチーフは今回の公演の大きな鍵になっていた筈で、せめて真偽くらいググっとけと言いたい。そもそもコミュニストの分際でRevelationとは笑止千万（誰が誰に何を黙示するのか）。高橋の曲は言うに及ばずnegligible。（・・・）