不知火に落ち度はない 35(第十七駆逐海賊団編 END)

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はじめに

※ この話は艦これ二次創作的な何かのネタ帳じみたものです。
艦これ本編以外の独自設定がちらほら混じってるので、適当にご笑覧ください。

なお、感想はハッシュタグ #落ちぬい か コメントまでいただけますと喜びます。

今回はセブ島最終幕。
さて、決着やいかに?

本編

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

彼ならば大丈夫と思っていた。 谷風を一人追っていく姿に、何の不安もなかった。 そのままもしかすると全員連れ帰ってくれるのかと。 そんな期待すら抱いていた。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 14:25:35
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

だから屋根伝いに走っていっても、特に不安はなかった。 念のために、神通と不知火に連絡を取り、市場の端に先回りして貰おう。 そうすれば、多分提督が谷風を捕まえて乗せるまでの時間が短縮できる。 そんな考えで、彼女は後を追っていった。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 14:28:24
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そして、彼女に現実が突きつけられる。 彼女の目の前には意識を失った、兵頭提督の姿がある。 頭には包帯が巻かれ、顔は湿布が貼られており。 両股を銃で撃ち抜かれていた。 それが浜風の楽観した結果である。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 14:32:24
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

彼──兵頭提督は決して超人などではなかった。 人より無茶苦茶な行動を取りやすいが、決して無敵というわけではない。 高い身体能力があるが、素手で銃には勝てなかった。 さらに、銃よりも深手を負ったのはおそらく── #不知火に落ち度はない

2015-05-16 14:35:08
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

外傷の具合、そして状況から想像に難くない。 これは浜風の仲間の仕業だった。 磯風。 彼女と同じ十七駆逐隊の仲間にしてリーダー格。 『特注品』と言われた事のある、特異な艦娘。 自分たちとは異なり、肉体を重点強化された──一種の怪物である。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 14:38:29
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

かつて、同一部隊に配属された時の夜番で教えて貰ったことがある。 「私は少し、人と違うんだ」 磯風はそう語り、飲み終えたコーラの瓶を素手で握り潰した。 破片が飛び散り、手を傷つけた。 浜風は思わず、彼女をしかりつけたが。 その後秘密を明かしてくれた。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 14:42:23
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「流石にナイフとかの深い傷はダメだが、ほら」 傷が、消えていた。 刺さったガラスを抜いた後、ほんの10分しない間に、彼女の手から傷はなくなっていた。 人にあり得ない再生能力、そして人の倍以上はある筋繊維の強化。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 14:45:38
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

それが磯風の身体に行われた『処置』らしい。 磯風が『施設』から外に出て、艦娘と成る為の。 万一、適性がなかった際も、歩兵・海兵として配属される予定があったそうだ。 それは軍事面からすれば、必要なことだったのかもしれない。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 14:57:24
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

人為的に超人を作り、英雄を製造する。 つまり、偶発的な指揮官ではなく、そう生まれついたものを作るのだ。 それは望まれることだったのかもしれない。 少なくとも──深海棲艦の発生しているこの時代では。 磯風は、そんな自分が少し誇らしい、と語った。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 14:59:50
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「どこから生まれたか知らぬ、この身一つで立身できる。施設の他の子らの希望にもなるだろうし」 ──だから私は出世する。 幾多の深海棲艦と矛を交え、多くの首級を揚げ、いずれは英雄となろう。 そうして平和な世を作ろう。 彼女はそう、胸を張り語った。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 15:06:26
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

浜風はそれを聞いて、やはり怒った。 磯風が基本的な事を忘れていたからだ。 超人? 英雄? その中に彼女の安全や、個人の幸せが一ミリも含まれて居ないのだ。 だから、思いっきり怒ってやった。 それこそ1年分はたっぷりと。 寝ていた二人が起き出すぐらい。 #不知火に落ち度はない

2015-05-20 16:01:13
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そのまま、彼女は怒り、泣き、そして怒り。 磯風にできる限り個人の幸せも考えてみる、と返答させた。 それが第十七駆逐隊の強い絆にもなったのだが── その磯風が、兵頭提督をこんな姿に変えてしまった。 英雄となり、希望となるはずの力は、暴力と変わったのだ。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 15:15:30
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

おかげで、彼の意識はまだ戻らない。 応急処置が早かったおかげで、なんとか命こそ助かったものの。 現在こうして、車の後部座席の倒したシートの上で眠っている。 さらに浜風を追い詰めるのは──自分のふがいなさ。 巻き込んだ後、自分は何ができた? #不知火に落ち度はない

2015-05-16 15:19:09
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

異変を察した不知火達が到着するまでの間できたのは、せいぜい彼を建物から引きずり出すことだけ。 その後重たい彼の身体を車まで運び込んだのは神通。 不知火は事情の説明と賠償の処理をマーケットと警察に手早く行い、車に運び込んでからはすぐに処置を行った。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 15:24:09
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

救急車を呼ぼうと主張したが、それも差し止められた。 それは不知火の判断であった。 「救急車を呼び民間の病院に任せるぐらいなら、不知火の応急処置の方がましです」 実際銃創や、打撲などの処理については驚くほど早く、しかも詳しかった。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 15:28:00
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

浜風は、なにもできなかったのだ。 しかし、神通も不知火も責めたりはしなかった。 二人は前の席で、運転しながら即席のミーティングを始めていた。 まるっきり彼のことを心配していないように。 だが、彼がいつ起きても良いように。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 15:31:39
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

では、浜風は何ができるのだろう。 この、負傷した彼に何ができるのだろう。 彼にどうやって報いれば良いだろう。 上官と、そして同僚にどう詫びればいいのだろう。 今はただ手を握るぐらいしか、できそうになかった。 無力を嫌と言うほど、思い知った。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 15:40:38
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

できることと言えば── 不知火と、神通を見て、浜風が思う。 それは、自分でこの件を片付けることくらいだろう。 情報はどうする? 町中を当たるには限度がある。 ならば自分の俸給を全て使って情報を当たるのはどうか。 それは無意味かも知れない──が。 #不知火に落ち度はない

2015-05-16 15:45:55
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

やってみなければ──無駄かどうかなんてわからない。 兵頭の手を握り、浜風は顔を上げる。 二人にそのことを申し出ようとし── #不知火に落ち度はない

2015-05-16 15:46:35
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ひにゃああああああ!?」 思わず変な声が出てしまい、何事かと不知火が振り返り、神通が急ブレーキを踏み。 浜風は思わずフルスイングで手を振ってしまう。 ぱしこーんと強い音が一つしたあと、意識のなかったはずの彼は浜風の胸から手を離し── #不知火に落ち度はない

2015-05-16 15:49:59
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ちーす。なんか顔がひりひりすんだが心当たりある?」 ほっぺたに紅葉を刻んだままむっくりと起き上がって来やがったのである。 そんな兵頭に浜風は思わず── 「自分の胸に聞いてください!!」 などと叫んでしまったのであった。 #不知火に落ち度はない

2015-05-20 15:59:48
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