不知火に落ち度はない 37(不知火)
はじめに
本編
「試算ですが、合計でこの程度の金額になります。他のオプション……例えば風呂施設などは別料金です」 「なるほど。プラマイでこれに10%ぐらいみときゃいい?」 「そうですね。あとネット回線は?」 「引いといてやりたいね」 妙高と司令室でお話なう。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:00:59妙高の行動は早かった。 だいたい基地の現状を見越していたのであろう。 試算金額から、プレハブの施工期間、他オプションの選択までしっかり資料にまとめてくれた。 さすが、表向き大手土建屋。 そこらの営業員も真っ青な手腕である。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:03:49「しかし、やっぱこんぐらいにはなる?」 「ええ。必要経費はかかりますから。これでも結構割引してますよ」 「そうな。いつもよか8%ぐらいは低いね。ありがてえ」 「勉強はしてますから」 たかだか8%? いえいえ。でかいですよ、この規模の金額だと。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:06:50価格的にざっと考え、引きすぎない程度に引いてる。 これを見ると妙高の会社がブラックな企業ではないと推測できる。 どっかのホームなんとかの広告費だけで半分ぐらい占めてるおうちとは全然違うなー。 設備費と人件費はしっかり取ってるって感じだ。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:10:52「説明すると、広告費の分を引いてます。施工記録に海軍基地と、乗せていいんですよね」 「それはもちろん。会社の功績にしてくれていいよ。このパンフ妙高さん作ったの?」 「はい。昔広告代理店に行きたかったんです」 「なるほど、よくできてるパンフだと思った」 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:14:32ウチでもたまーに、外へ発注するんだがしっかりできてる。 世が平和なら、デザイナー妙高さんがいたりしたのかね? って、あれ。そいや、このやり方、もしかして? 「あのさ。基地祭のパンフって……」 「はい。前回は私と羽黒でやってますよ?」 マジで。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:18:41「じゃあ、給与に反映しておかんといかんね。不知火が頼んだの?」 「ええ。陽炎ちゃん経由で」 「あいつ、道理で融通効いてるわけだよ」 こんな所に広告担当が居たとはつゆしらず。 「手慰みですからね」 「那珂ちゃんパンフもいつか頼むかも」 「いいですよ?」 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:20:25「つことは、羽黒も広告デザイン勉強してたの?」 「あ……えっと、まあ。はい」 おや、歯切れ悪いね? 「あまり深くは聞いてあげないでください」 「ん? 訳ありかい?」 「読書好きな女の子のかかる麻疹が、あるんですよ」 わかったような、わからんような。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:23:12「んじゃ深くは聞かない方向で。基地祭のキャラとか描いたの羽黒?」 「そうですね。ゆるキャラとか、得意みたいですよ」 「ああ、ケージュくん」 「ええ、ケージュくん」 わりとご近所でウケがいいんだ。あのゆるキャラ。 北上っぽくて。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:30:24「では、この方向で進めていいです?」 「あ。ちょいまち」 さて、と。念のため聞いておかねば。 「もーちょい、下がらない?」 「もう少し、ですか?」 うん。今期予算はまだ余裕あるんだけどさ。 まだ、上半期も終わってないのよ。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:32:25「そうな。えーと、エアコンついてない価格じゃん、これ」 「そうですね。納入する電気屋さんとの交渉になるんですけど」 ぱちぱちとそろばんをはじき出し。 「だいたいこのぐらいで」 「やっぱそれぐらいだよなあ。大手メーカーのだと」 「信頼に関わりますから」 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:35:03「そこをなんとか。白物だし」 「うーん。でもあまり下げるとその分、他で上げないと……おわかりでしょう?」 うん。いっぺん値切るとそのままだとずーっと下げ続けるハメになるから。 「メンテの一括依頼なんかもできるし」 「そうですね……」 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:38:07「そうですね。じゃあ、これにサインして貰えますか?」 「おうおう。書く書く」 すっと紙を受け取って万年筆を取り出す。 「名前と印鑑だけでいいですから」 「ほいほい、兵頭──」 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:39:35って待て。おい。 「こ れ 婚 姻 届 っ て 書 い て ね え ?」 「あら、書類間違えました。こちらですね」 紙が新たに出てくる。 「結 婚 誓 約 書 っ て 書 い て ね え ?」 「ほら、そのうちするでしょう?」 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:40:59「義弟のためなら、お姉ちゃん頑張っちゃう♥」 「まだしてねえから。まだ保留だから!」 くっそあざとい。 仕込んでくるとおもったけどあざとい!! この妙高ポーズはあざといけどかわいい。 強いなあ、同年代。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:42:54「ちなみに、これ書いたらドンだけ下がるの?」 「100%です♥」 「タダかよ!?」 「ええ。そのうち会社を継ぐんですから、その分なんて投資ですよ?」 「え、待って待ってその話し聞いてない」 マジで。俺社長になるの? 「男手、足りないんですよねー」 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:45:15いやそんなふうに、しみじみ言われましても。 っていうか、会社社長とか無理、マジ無理。 「引退したら提督、計画は?」 「引退しないから。定年まで」 「あら、お義姉ちゃんそれじゃ困っちゃう」 「まーだーしーてーまーせーんーかーらー!」 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:47:50あかん。婿割りとか夫割りどころじゃねえ。 割引100%で会社社長までおまけについてくるとは予想外。 そんな山盛り特典でパーフェクトマスヲホールドされるなんてやだー!! 万一、なったらギンブチの会社と喧嘩できるかもな。 でも俺に社長の能力ないっす。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:50:38「実際、なってくれると一番楽で嬉しいんですけどね」 「どういうことすか」 「血気盛んなの押さえられるでしょう?」 「まあ、喧嘩は得意だけどさ」 「テレビにも顔出してるでしょ?」 「お仕事ですから」 「組長として文句なしですね」 「そこ隠して!」 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:54:25あかん。モグリが俺のスーツ指さして「よう組長!」ってのが現実になっちゃう。 それは避けないといけません。 定年したら親父のチャリ屋でも継いで、思ってた俺の人生計画が狂う。 親父からは「いや、いいけどもっと上目指せよ」とは言われてます。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 22:59:08「組長は今ントコ保留です。これなっちーと、俺の問題でしょ?」 「そうですね。じゃあ今度会食セッティングしますね?」 はい、流れるようにスケジュール取らない。 「もーちょっと俺らに任せてくれない?」 「はあ。でもどっちもちゃんと連絡取ってます?」 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 23:01:07鋭い。くそ、強い。 「それなりに。都合いいときゃ飲みに行く話してるよ」 「それならいいんですけど……あまり、待たせないでくれると嬉しいですね?」 「検討します。工事の方は──」 「はい。じゃあこれで進めておきますね」 間髪入れずに書類が前に。 #不知火に落ち度はない
2015-05-22 23:02:59