辻仁成 ツイッター小説「つぶやく人々」その1

芥川賞作家でミュージシャンで映画監督で中山美穂とやっと会えて6月12日にはアントニオ猪木主演の映画『ACACIA』の公開も控えている辻仁成(@TsujiHitonari) のツイッター小説まとめです。
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辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第93回:「だから、つぶやいて心を維持しているにゅ。でも、普通につぶやくのはキモいにゅ。言葉尻ににゅを付けると、なんとなくキモ臭さが緩和され、微笑ましくなって、キモ可愛いくなるにゅ」俺が涙目で訴えると、亡命文壇粛清委員たちが顔を見合わせ頷いた。つづく

2010-03-12 00:15:01
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第94回:「確かにツイッターには校閲も推敲も編集者もいないにゅ。でも、誰もがつぶやくことができるにゅ。疲れた時に覗くとなぜかほっとするにゅ。他人のつぶやきを覗きながらにやにやしてることもあるにゅ。損得がないにゅ、だから、ほのぼのできるにゅ」つづく

2010-03-13 00:21:20
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第95回:「とはいえ、それらは本物のつぶやきではないにゅ。厳密にいえば、考えたことや思いを活字に変換してるにゅ。読者を意識した瞬間、つぶやきに作意が混ざるにゅ。でも、実はそこがツイッターの高度なトランスセクスにゅ。作意と無意識の間、にゅ」つづく

2010-03-13 00:22:36
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第96回:「ツイッターで世界に発信した瞬間、つぶやきはひとりごとではなくなるにゅ。実は大勢に向けられたメッセージ。いないようで確かにいる幽霊に向かって。誰かが、おはようにゅ~、と送るにゅ、受け取る側は意識と無作為の間で、静かに微笑むにゅ」つづく

2010-03-13 01:07:19
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第97回:「一度に書くことのできる文字量は140字、実際に小説を書いてみて分かったにゅ、誰が考えたの完璧な分量。ごーしちごしちしちのようなある種の定型が存在するにゅ。つぶやきの黄金比があるにゅ」「馬鹿げてる、ナンセンス!」と亡命批評家が叫んだ。つづく

2010-03-13 01:22:45
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第98回:「確かに、ツイッター小説は奇を衒ってるにゅ。馬鹿馬鹿しいことをすると批判されるにゅ。でも、馬鹿馬鹿しいことも続けて貫けば、すごい、になるにゅ。物語ははじまったばかり、ここで挫けるわけにはいかないにゅ。つぶやく人々の世界のためにゅ」つづく

2010-03-13 01:29:09
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第99回:「あんたたちだって本当はツイッターで小説書きたいにゅ!」俺が彼らを指さすと、亡命編集者が刀を振りかざして叫んだ。「にゃにゅ~!」残りの成員が亡命編集者を振り返った。「にゅって言った!」俺が指摘すると、亡命編集者は顔を赤字で埋めた。つづく

2010-03-13 01:33:48
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第100回記念:「貴様、小癪にゅ~、ありゃ?」亡命文壇成員がお互いの顔を覗きあう。「やばいにゅ~、くそ、にゅって出てしまうにゅ~」亡命文壇成員がパニックになった丁度その時、耳をつんざく爆発音が地下室に轟いた。翁が「V2ロケットじゃ!」と叫んだ。つづく

2010-03-13 01:46:45
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第101回:パニくる翁の頭の中では、その時、パリは壊滅的状態にあった。彼らは都合よく話を替え、第二幕は大戦末期のパリへと移行、亡命文壇はレジスタンス国民会議に変わり、翁は自らをシャルル・アンドレ・ジョゼフ・ピエール=マリ・ド・ゴールと名乗った。つづく

2010-03-14 17:27:35
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第102回:彼らの歴史の中ではV2ロケットはパリをも直撃していた。ド・ゴール将軍を中心に自由フランス軍の面々はナチスドイツへの徹底抗戦についてつぶやきあっていた。でも、俺は疲れたので参加せず眠ることに・・。早く家に帰りたい、と思えば涙も流れた。つづく

2010-03-14 17:35:12
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第103回:長い眠りから目覚めるとそこは40年代、デ・プレの地下クラブ、翁はヴォリス・ヴィアンに変わり、脱走兵というシャンソンを歌っている。俺は書きかけツイッター小説のことが気になってしょうがない。地上に戻る時が来た。ああ、早くつぶやきてえ!つづく

2010-03-14 17:46:34
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第104回:wifiを求めてマックに飛び込みパソコンを開いて驚いた。誰かが「つぶやく人々」を勝手に更新している。しかも、知らぬ間に連載は百回を超えているし、フォロワーが7千人ほどに・・・。俺は怒りで震えた。くそ、これは俺の小説だ。フォローミー!つづく

2010-03-14 17:54:43
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第105回:俺は家に戻ることにした。妻ともめてる場合じゃない。勝手に俺の小説を更新している奴を捕まえなければ・・。おのれ、偽辻仁成め、待っておれ!ところがどっこい、家まで辿り着いたものの、どこかで鍵を落としちまって入れない。くそ、まいったね。つづく

2010-03-14 18:05:21
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第106回:俺はtsujiと表示されたインターフォンのボタンを押した。まもなく妻が出た。「ウイ」「俺だよ、あけて」「どなた?」「俺!」すると返事が戻って来ない。もう一度ボタンを押すと少しして見知らぬ男が「どなたですか?」と言ってきた。 ん? つづく

2010-03-14 18:13:28
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第107回:「誰にゅ、お前は?」俺は思わず叫んでいた。相手が「マスコミの方なら申し訳ありませんが事務所を通してもらえますか?」とめちゃくちゃ偉そうな態度でほざいてきた。「マスコミじゃねえよ、お前こそ誰にゅ!」すると男は「辻仁成」と冷静に告げた。つづく

2010-03-14 18:21:50
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第108回:「ポコリン!」俺は我を忘れて叫んでいた。「ポコリン、俺だよ、開けてくれ!」インターフォンをいくら押しても、返事は戻ってこなかった。まもなく、サイレンの音、警察の車両が見えたので俺は慌ててそこから逃げることになる。くそ、フォローミー!つづく

2010-03-15 07:39:26
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第109回:俺はマック、シャンゼリゼ店でPCをwifiに接続した。偽辻はfake小説を通してすっかり俺に成りきっている。俺の捨て台詞「まいったね」まで奪っている。その上、アヘアヘまで付けやがって。耐え難き侮辱。アヘアヘだけはどうしても許せねえ。つづく

2010-03-16 06:42:53
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第110回:俺はパソコを覗いて絶句した。偽辻が俺の小説をパクりやがった。fake28~30まではツイッター小説の1~3までと全く一緒じゃねえか。ツイッターに著作権はないのか?国内法整備はどうなってんだ!俺はチーズバーガー齧りながら怒りに震える。つづく

2010-03-17 18:22:04
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