トゥー・テンプラズ・ゼア・イズ・ノット・フォー・ファーザーズ#4前編(原文のみ)
- tarorininja
- 1080
- 0
- 0
- 0
①togetter.com/li/803394 ②togetter.com/li/818248 ③(前編)togetter.com/li/822837 ③(後編)togetter.com/li/828707
2015-06-27 18:10:08(前回のあらすじ)ワタナベ=サンチでテンプラをご馳走になったナブセは、深夜の住宅街でハッピーバードと邂逅する。彼を連れ戻そうとするナブセだが、ハッピーバードはこれを拒絶。オハギの大量輸送計画をナブセに伝え、月の中に飛び消えた。 #tnjtk
2015-06-27 18:15:05ナブセはニンジャに勝てるのか。オハギの大量輸送計画を阻止できるのか。そして、ワタナベを取り戻すことができるのか。幾重にも重なるインガオホーが、ナブセとワタナベをイクサへと駆り立てていた。 #tnjtk
2015-06-27 18:20:06「ワタナベ=サン…!」ナブセは、ネオサイタマの月の中に飛び消えていったワタナベの名を虚しく呼び、激しく咳き込んだ。「ゴホッ、ゴホーッ…!」吐血。あれ がニンジャのカラテ…!視認するのも困難な速度。どんなカラテカからも受けたことのない重さの蹴り。1 #tnjtk
2015-06-27 18:25:04((勝てない))ナブセはそう直感していた。カラダチでも無効化できぬ威力。身のこなしを見るに、本来ならば連続の回し蹴りを放つつもりだったのだろう。もしカ ラダチで防御していなければ、一撃目で腕をケジメされ、二撃目で首を跳ね飛ばされていたに違いない。2 #tnjtk
2015-06-27 18:30:07((それでも俺は、ワタナベ=サンを連れ戻さねばならぬ))ナブセは痛む身体を起こし、路地の壁にもたれかかるように立ち上がった。「…鍵だ」ナブセは呟いた。 「彼には鍵が必要だ」ミマミの協力を得て合鍵を作らねば。デッカーとしての勘が、そう叫んでいた。3 #tnjtk
2015-06-27 18:35:03数十分後、ナブセはゼェゼェと息を吐きながらワタナベ=サンチのドアをノックした。「はい」躊躇いがちにミマミの声が聞こえる。「…ナブセです。ワタナベ=サンを見つけました」「本当ですか!」ミマミが勢いよくドアを開け、ナブセは額をしたたかに打った。4 #tnjtk
2015-06-27 18:40:06「アー…」 顔を押さえるナブセ。その服には彼自身の吐血した血がかかっている。ミマミは青ざめ、彼を部屋に引き入れた。ミマミは手当を申し出たが、ナブセはこれを奥 ゆかしく断った。二人は正座して向かい合う。「…ワタナベ=サンは『帰れない』と言っていた」5 #tnjtk
2015-06-27 18:45:03「何故」ミマミは問うた。「…俺がワタナベ=サンに聞いたのは2つだ。『何故帰らない』『そのシャツの汚れはオハギか』。ワタナベ=サンは『鍵を失くした』『これはオハギだ』と答えた」ナブセは嘘をついた。ニンジャに関わる部分だけを避けたのだ。6 #tnjtk
2015-06-27 18:50:18ミマミは訝しんだ。ナブセの回答は不完全だ。何か大事なピースが欠け落ちているように感じられた。ナブセは言葉を選びながら話を続けた。「推測を交えて話すなら…ワタナベ=サンはブルズアイに辿り着いた。オハギの流通ルートを押さえた」7 #tnjtk
2015-06-27 18:55:07「しかし何らかのアクシデントが発生し…ワタナベ=サンはオハギ密輸組織に捕らえられ、オハギ中毒者にされた。そしてオハギの流通を手伝わされている。…彼が 帰れなくなったのは、オハギ中毒者となってしまった自分を貴女やナットウに見られたくないからだろう」8 #tnjtk
2015-06-27 19:00:08ナブセの推測は殆ど真実に近い。彼がニンジャとなっていたこと、「ソウカイニンジャ」という謎の組織に所属していることを黙っている以外には。「おそらくオハギ組織はこの家も押さえている。ワタナベ=サンが妙な動きをしないようにだ」9 #tnjtk
2015-06-27 19:05:06「私たちが人質になっているということですか」「そうだ」「信じられません、そんな陰謀論めいた話は。何か裏付けられる証拠は?」ミマミの目はシリアスだった。ナブセは、ワタナベがニンジャになっていると伝えるのを諦めた。ミマミは、シリアスすぎた。10 #tnjtk
2015-06-27 19:10:05「… 確かに俺の話には何の証拠もない。ワタナベ=サンに会ったことも証明できない」「その怪我は何ですか?」彼女はもはやナブセの話を聞くつもりはなく、必要 な情報を引き出そうとしていた。ナブセは辛そうに目を伏せた。((そうだな。嘘つきの言葉など信じぬ方が良い))11 #tnjtk
2015-06-27 19:15:05「ワタナベ=サンは仲間を連れてきていた。…囲んで警棒で殴られた」それでもナブセは必死に嘘をついた。「ニンジャになったワタナベに蹴られた」と言っても、 シリアスなミマミは信じない。そうすれば彼女からの協力は得られなくなる。合鍵が手に入らなくなる。12 #tnjtk
2015-06-27 19:20:07「貴方がオハギ組織のヨタモノに遅れを取るとは思えません。夫が貴方を殴らせるとも思えません」ALAS!ミマミは残酷なまでにシリアスだ。今や取り調べられ ているのはナブセだ。彼は狼少年の話を思った。嘘つきの話は信じてもらえない。もはや、自分の言葉は届かぬ。13 #tnjtk
2015-06-27 19:25:04インガオホーだ。ツジギリの事実がワタナベのナブセに対する信用を失わせ、見抜かれた嘘がミマミのナブセに対する信用を失わせた。そしてナブセが信用されねば、ミマミの協力は得られない。そうなればワタナベを連れ戻せないばかりか、彼女らの身も危うい。14 #tnjtk
2015-06-27 19:30:10重要なことは二つだ。ワタナベを組織から逃すこと。ミマミとナットウをこの家から遠ざけること。だが、もはや説得は望めぬ。状況判断だ。ナブセは実力行使に出る覚悟を決めた。((まず必要なものは、鍵だ))ナブセは黙って立ち上がり、部屋の中を見渡した。15 #tnjtk
2015-06-27 19:35:04写真立ての、家族写真が目に入る。((…ワタナベ=サンを取り戻すきっかけになるかもしれぬ))ナブセは更に部屋の中を見渡す。冷蔵庫脇のマグネットフックに掛かったワタナベ=サンチの鍵。ナブセはそれ目をやりながら、低い声で言った。「ミマミ=サン。真実を教えてやる」16 #tnjtk
2015-06-27 19:40:19「…?」ミマミが少し気圧されながら、それでも気丈な瞳で、ナブセを見上げた。ナブセはずかずかと部屋の中を歩き、ワタナベ=サンチの家族写真を取り、冷蔵庫横の鍵を取った。「何を」ミマミが立ち上がる。彼女は困惑している。ならば脅すに都合が良し。17 #tnjtk
2015-06-27 19:45:04必要なものは手に入れた。後はこの家からミマミとナットウを遠ざけなけるだけだ。どんな方法でも良い。生きてさえくれれれば良い。「イヤーッ!」ナブセは突如冷蔵庫を殴り破壊!「アイエエエ!」ミマミが叫ぶ!「イヤーッ!」コタツ破壊!「アイエエエ!」18 #tnjtk
2015-06-27 19:50:06誰もいなくなったワタナベ=サンチで、ナブセは荒い息を吐いた。部屋の中はめちゃくちゃだ。冷蔵庫はひしゃげ、コタツの天板は割れ、テレビジヨンは虚しくスパークし、タタミはひっくり返り、まるで押し入り強盗に入られたようだ。ナブセがそれをした。20 #tnjtk
2015-06-27 20:00:20ミマミは泣き叫ぶナットウを抱き抱え、暴れるナブセから逃げた。ナブセは狂人めいてミマミに交際と前後を迫り、「ワタナベ・ワダチは俺が殺す」と叫びながら家具を破壊した。ミマミがこの家に戻るとしても、警察と共に金品を取りに来る時くらいだろう。21 #tnjtk
2015-06-27 20:05:04