トゥー・テンプラズ・ゼア・イズ・ノット・フォー・ファーザーズ#4前編(原文のみ)

たろりん(ニンジャ) @tarorininja

「フーッ…」ナブセは長い息を吐いた。ワタナベ=サンとのユウジョウも、ミマミ=サンからの信頼も、ナットウの愛らしさも、何もかもを失った。いや。全ては虚構の上に成り立った幻想に過ぎなかった。ナブセがついた嘘の上に、彼らとの関係があった。22 #tnjtk

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自分が異常暴力サイコマニアックだと知っていれば、彼らが自分に微笑みかけてくれることはなかった。「…なんと清々しいことか。俺には余計なものが何もない」ナブセは笑った。そして、膝から崩れ落ち、泣いた。罵る言葉は全て、自分に向けてのものだった。23 #tnjtk

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「… モシモシ」ウシミツ・アワー。倉庫街へ向かう途中の公衆電話から、ナブセは警察に電話をかけた。「ナブセです。強盗及び強制前後未遂をしました。殺人予告も。ワタナベ・ワダチ=サンを殺したいです」電話口のニュービーマッポがアイエエエと叫び失禁した。24 #tnjtk

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ナブセは笑って受話器を置いた。((さあ。これで俺は犯罪者だ。…いや。ずっと前から犯罪者だった。ここが身を置くべき場所だったのだ。不相応に幸せな場所に居たのだ))ナブセは夜闇に光る、少し暖かな電話ボックスの中から、冷たい夜の中へと歩み出た。25 #tnjtk

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「…ドーモ、夜=サン。これから、ヨロシクオネガイシマス」ナブセは力なく笑い、夜にアイサツをした。夜は黙って彼を招き入れ、その懐に抱き寄せた。ナブセの背中が夜闇に飲まれ消えていく。その鍛え上げられた逞しい背中は、酷く侘しく見えた。26 #tnjtk

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朝焼けを待つ、潮錆びた倉庫街。スマグと戦ったあの倉庫の屋根の上で、二人のニンジャがまだ暗い海を眺めている。「…アア。ナブセ=サンが。…そうですか。 俺を殺すって。ヒヒッ」報告を受けた鼠色のコートを着た鳥メンポニンジャが、涎を垂らしながら笑った。28 #tnjtk

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「ハッ ピーバード=サン。万が一そのナブセというデッカーが現れても手加減などするな。何度も言うが、俺はお前を見張っている。お前の家は押さえられている」 コッカトリスが腕を組んで言う。その両腕の逞しさを見せ付けるかのように拳を握り、太い指を開く。29 #tnjtk

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「これは大きなビズだ。無事成功すれば俺もお前もポイント倍点…」コッカトリスが言い終わる前に、ハッピーバードは立ち上がり、アイサツを決めていた。ゼンめいて、一度だけ。「ドーモ、コッカトリス=サン。ハッピーバードです」そのオジギは、ナブセによく似ていた。30 #tnjtk

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「！？ドーモ、ハッピーバード=サン。コッカトリスです」困惑しながらもコッカトリスは、ニンジャの本能に従いアイサツを返す。((アイサツ、ナンデ？))そう訝しんだ時だ。ハッピーバードは青い炎だけを残し、既に視界から消えていた。31 #tnjtk

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「アナヤ！」コッカトリスは咄嗟に屋根を蹴り退避！彼の立っていたトタン屋根をデッカーガンが撃ち抜き穴を開ける！パウンッ、パウンッ！ハッピーバードが宙を蹴る独特の音が視界の外から聞こえている！「ハッピーバード=サン！ソウカイヤを裏切るか！」32 #tnjtk

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「邪魔なんですよ。いいところなんだ。俺とナブセ=サンのイクサに、アンタは邪魔だ」ハッピーバードの声が聞こえる。その姿は見えない！ハッピーバードは周囲 を見渡すコッカトリスの死角へと潜り込み続けているのだ！((こいつ、いつの間にこんなカラテを…！))33 #tnjtk

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BLAMBLAM! 「グワーッ！」背後からデッカーガンとチャカガンの同時射！コッカトリスは背中を撃たれながらも背後にスリケンを投げ返す！「イヤーッ！」しかし当たらぬ！もはやそこにハッピーバードは居ないのだ！パウンッ、パウンッ！音と青い炎がコッカトリスを囲む！34 #tnjtk

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「ヌゥーッ！？」 コッカトリスのニンジャ第六感が危機を告げる！円の中から抜け出そうとした彼は、いつの間にか、周囲に大量の塵か埃かが舞い散っているのに気づいた。 ((粉…？))その僅かな違和感の後、周囲の空気が燃え盛り、爆発を起こした。KABOOOOM！35 #tnjtk

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敵の周囲を舞い飛びながら粉塵を振りまき、カトンによって引火する。ハッピーバードはコッカトリスを殺す日を待っていた。そして備えていた。それが今日なのだ。鮮やかな後方回転宙返りで爆破圏内から退避したハッピーバードは、燃える倉庫の屋根の上を見た。36 #tnjtk

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「オノレーッ！」黒煙の中から怒号！まだ生きている！何たるニンジャの強靭さか！だがその声で場所を掴む！「イヤーッ！」ハッピーバードはシャウトと共に青い火を蹴り黒煙に飛び込む！BLAMBLAM!デッカーガンチャカガン同時射で急加速！ネズミ花火めいて回転！37 #tnjtk

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「イヤーッ！」「グワーッ！」黒煙の中で声！何者かのケジメされた腕が回転しながら飛び海に落下！「イヤーッ！」「グワーッ！」黒煙の中で声！何者かのケジメされた腕が回転しながら飛び海に落下！そして煙は晴れゆく…！38 #tnjtk

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そこには互いに右腕を失った二人のニンジャ！「フゥーッ、フゥーッ！許さぬぞハッピーバード=サン！よくも俺の腕を！殺してやる！」「アハハァ。お互い様じゃあないですか」額に脂汗を浮かべながらハッピーバードは笑ってみせる。そして屋根を蹴り、再び宙へ舞い上がる。39 #tnjtk

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黒煙の中、コッカトリスはハッピーバードを誘うために声を上げた。そして右腕と引き換えにハッピーバード渾身の回転蹴りを止め、チョップの打ち下ろしでハッ ピーバードの左腕をケジメしたのだ。コッカトリスの装束は粉塵爆発で焼け焦げ、皮膚は所々炭化している。40 #tnjtk

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片翼をもがれた痩せた鳥の、鼠色のコートが風にはためく。片腕を失ったせいで空中でのバランスがうまく取れない。ハッピーバードの速度は見る影もなく落ちて いた。「イヤーッ！」「イヤーッ！」ぶつかるスリケンとチャカガンの弾丸！コッカトリスは彼を捉えている！41 #tnjtk

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皮肉にも、彼に残されたのはデッカーガンではなくスマグの杖状仕込み銃だった。ハッピーバードは宙を蹴りながらコッカトリスの死角へと潜ろうとする！「イ ヤーッ！」「イヤーッ！」ぶつかるスリケンとチャカガンの弾丸！速度が落ちているため死角へ潜り込めぬ！42 #tnjtk

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片腕ではチャカガンのリロードはできぬ。粉塵をばらまくことも出来ぬ。チャカガンの残弾は残り1発。スリケンと相殺させる訳にはもはやゆかぬ。そしてこの1 発でコッカトリスを殺せるとも思えぬ。((だが近接のカラテは俺に分が悪い))ハッピーバードは冷静に分析した。43 #tnjtk

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ハッピーバードは機動力に優れるが、ニンジャ耐久力とカラテの重さに劣る。渾身の回転蹴りでようやくコッカトリスの右腕を持っていける程度だ。速度を活かし中距離を維持し、射撃で弱らせカラテで仕留める。それが彼の導き出した己の力の活かし方だった。44 #tnjtk

たろりん(ニンジャ) @tarorininja

((粉塵も銃撃も使えない。近接のカラテはリスクが高い。コッカトリス=サンが粉塵爆発のダメージから回復すれば勝機はない))ハッピーバードの頬を汗が伝う。 このニンジャを殺さねば家族の身が危うい。殺すなら今しかない。しかしその現実的な手段がない。45 #tnjtk

たろりん(ニンジャ) @tarorininja

…今なんと？ハッピーバードは己の思考を訝しんだ。((家族だと？俺はニンジャだ。オハギは美味い。家族などどうでも良い))ハッピーバードは自らの行動の不合理さを説明できなかった。もう、彼には思い出せなかった。((違う。俺はただコッカトリス=サンが嫌いなだけだ))46 #tnjtk