ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10101711:ニチョーム・ウォー #9前半(個別版)
「なんとまあブザマな戦いぶりだこと!」キュアは扇子で己をあおぐ。『ドーモ、繋がってるかい?』『ドーモ、レディオ番組にリクエストするなんて初めてだけど』『ヨー、これは驚きのセクシーボイスだぜ。何かレディオネームは?』「呑気な放送……実際滑稽ね!」ヤクザが押し寄せる! 24
2015-07-12 00:36:14「スッゾオラー!」「グワーッ!」「ザッケンナコラー!」「グワーッ!」キュアは乱入してきた第三のニンジャに不快げな目線を投げる。「あら。ネザークイーン=サン?あらあら……本陣も車椅子も捨てて決死の覚悟?ウフフフフ」「チェラッコラー!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」 25
2015-07-12 00:38:52『そうね、YCNAN、洋上から聴いてるわ』「YCNAN?」キュアは呟いた。「……洋上?」『YCNAN!イェー!目下指名手配中の謎の美女!試算懲役数千年のヤバい級ハッカーが、KMCレディオに突如現れた!俺の懲役なんて足下にも及ばないぜ!』キュアは眉間に皺寄せ、固唾を飲んだ。26
2015-07-12 00:42:50「イヤーッ!」「「「「アバーッ!」」」」ヤクザ達が血を吐きながら倒れた。シルバーキーは咳き込み、吐血した。守るようにネザークイーンとディスカバリーが立った。更なるヤクザウェーブを繰り出しながら、キュアのニューロンには、様々な懸念の雲が立ち込めはじめていた。アルゴスの分析は?27
2015-07-12 00:45:13嫌な感覚だ。ニンジャスレイヤーはネオサイタマから洋上へ向かい、マスターマインド、ハーヴェスターを倒した。「12人」の共有する情報だ。ニンジャスレイヤーに手引きを行ったYCNANが、なぜレディオに?何を企んでいる?このニチョームに何らかの関係が?『私もぜひ真実を伝えたくって』 28
2015-07-12 00:50:50キュアのもとには、ニチョーム市街に散ったニチョーム・ニンジャ達との交戦情報がリアルタイムに入ってくる。彼女は随時それらに応答し、徐々に送り込まれる増援を手足のごとく操る。敵はヤグラ337へ再び集まろうとしている算段だが、その結末は平安ニンジャじみた集団セプク以外にあるまい。 29
2015-07-12 00:56:52いかなる抵抗を行おうと、圧倒的物量がそれを押し潰す。スターゲイザーの死亡はあまりに大きな痛手であり、悲劇である。ゆえに、それをこそ克服する事で、アマクダリ・セクトのシステムの完全性をより強固に証明する必要がある。それにしても、異常な一日だ。これほどの事が起こる。 30
2015-07-12 00:59:32『フォレスト・サワタリと交戦中……不覚……』チリングブレードからの通信。「どうした?レッドキャップ=サン、セコエンシア=サンをそちらの区画へ向かわせた。連携を」『セコエンシア=サンがアンブッシュを受けて死亡……私も一端体勢を立て直さねば……』「情けないこと」彼女は呟いた。 31
2015-07-12 01:07:51『ヨー、こりゃ穏やかじゃねえな。NSTVじゃとても無理!たちまちスポンサー様を怒らせて、番組は打ち切り!何しろ奴らのスポンサー様がアマクダリだ!』「なにを……」キュアは呻いた。レディオ……?即ちネオサイタマ全域に……?市民の支持など得ておらぬ零細放送局といえど、これは……。 32
2015-07-12 01:13:02目の前の三人のニンジャをヤクザによって追い詰めながら、キュアは各ニンジャへの追加指示を検討、並行してレディオ懸念についても思考を巡らす。戦線は膠着状態に入りかけている。敵はフィールドを熟知しており、増援ニンジャはいまだ慣れておらぬ。 33
2015-07-12 01:18:35レインメイカーやロングカットのようなスナイパーニンジャの睨みが現在も利いておれば、取れる戦術もまた違った筈。彼らは戦闘の初期に、ニチョームに組みする何者かの手で直接のアンブッシュを受け、殺害された。斥候めいて立ち回るニンジャの存在を彼女は把握している。変身能力。情報が少ない。34
2015-07-12 01:20:46『秘密結社アマクダリ・セクト、謎に包まれてた幹部十二人のリストを初公開』YCNANの挑発的な声が流れた。「何ッ!」キュアは神輿の上で立ち上がる。「イヤーッ!」「アバーッ!」シルバーキーが再びジツを発動、ヤクザが転倒。凄絶な表情のネザークイーンが見上げた。「アーラ!何かしら!」35
2015-07-12 01:27:09「イヤーッ!」「グワーッ!」プリザーヴのダブル・ショート・ボー・ツキがスーサイドを打ち据え、膝をつかせた。「イヤーッ!」「グワーッ!」シャドウウィーヴはモナークの強烈な蹴りを喰らい、壁に這う配管パイプに叩きつけられた。それは生死を決する瞬間だろうか。ユンコは怒りに吠える。36
2015-07-12 01:35:26「GRRRR!」「な……グワーッ!?」モナークは上から降ってきた獣に食らいつかれ、狼狽して振り払った。コヨーテは地を蹴り、そのままプリザーヴに襲い掛かった。「GRRRRR!」「イヤーッ!」「GRRRR!」プリザーヴは振り向きざまにボーを叩きつける。 37
2015-07-12 01:37:51与えられた一瞬をシャドウウィーヴは逃さなかった。プリザーヴの動きが凍り付いた。そこへスーサイドがタックルをかけた。モナークがシャドウウィーヴに襲い掛かる。「カラテ!」ユンコが殴り掛かる。モナークはこれを防ぐ。そこへフクロウが飛びかかり、モナークの左目を抉り出す。「グワーッ!」38
2015-07-12 01:40:14「イヤーッ!」「アバーッ!」シャドウウィーヴはモナークの首を絞めつける。そしてスーサイドはプリザーヴの生命力を直接奪いにかかった!「ハァハァハァハァ!」フクロウは着地し、コヨーテに変身すると、尻尾を振って若者たちを振り返った。「後、よろしく」「クール」ユンコが親指を立てた。39
2015-07-12 01:43:28「押せッ!とにかく押せ!」キュアは扇子を振り捨て、後方から続々と合流してくるクローンヤクザY200を煽った。「半端者のニンジャなど!」ネザークイーン達は決して下がらない。これ以上!スピーカーからは「12人」の醜聞!『……ここまで全員、今日ニンジャスレイヤー=サンが殺したわ』40
2015-07-12 01:54:33『残る6人は、リー先生、アルゴス、スターゲイザー、キュア、スパルタカス、アガメムノン。ちなみにアガメムノン=サンは、サキハシ知事に仕えるシバタ秘書。今頃カスミガセキ・ジグラットで忙しいかしら?エマージェンシー作業服、とっても似合ってたわ』『ヨー、ニチョーム、聴こえてるか?』41
2015-07-12 01:55:34「ダマラッシェー!」キュアは目を剥き、歯茎を剥き出して絶叫した。『キュア=サン』チリングブレードからの通信だ。『今の放送はどの程度信憑性が』「惑わされるでないわ!」『無視はできん』ドラゴンベインからの通信だ。「無視……とにかく戦えい!ワシらの絶対的有利じゃ!戦線を維持せい!」42
2015-07-12 01:58:46「聴こえてるぜ!」ディスカバリーがレディオに叫び返した。「スターゲイザーはくたばった!」離れた区画からはっきりと別のニンジャが応えた。『ヨー、ニチョーム、無線が切れて心配してるが、まだ戦ってるよな?サシバ=サン、生きてるだろ?』「生きている!」どこかで応える声! 43
2015-07-12 02:03:14『これは』『キュア=サン』増援ニンジャ達からも訝しむ通信が入り始めた。キュアは唸った。やはりニンジャはバイオでなくば。不測の事態に無駄に狼狽え、ロクに働きもせず不平ばかりをこぼす!サブジュゲイターとバイオニンジャのピラミッドが機能すれば……!サブジュゲイターは戦闘継続不可だ!44
2015-07-12 02:10:21『ドーモ。ディバステイターです』その時、航空部隊を率いるニンジャからキュアに通信が入った。キュアは空にわだかまるツェッペリンとヘリの編隊を見上げた。『作戦行動可能距離に到達』……セクトの勝利は、今、決した。「目にもの見せてくれようぞ」キュアは呟き、拳を握りしめた。 45
2015-07-12 02:13:17その時、彼女のニンジャ視力は捉えた。航空部隊に向かって矢のごとく飛び来たる輝きを。彼女の明晰な思考力は残酷な結論を出す。あれは湾岸の方向から飛翔してくる。あれは……彼女のニンジャ視力は、理解させてしまう……あれはミサイルであり……その上に……赤黒の死神の姿。 46
2015-07-12 02:21:21「何だよ」シルバーキーは拳で血涙を拭い、ディスカバリーの肩に手を置いて立ち上がった。ヤクザウェーブが絶えた。キュアのペイシェント神輿の周囲はヤクザの死体で一杯だ。神輿の後方からなおもヤクザ増援が合流しにくるが、多少休むことができるかもしれない。ところでキュアはどこを見ている?47
2015-07-12 02:37:54キュアのやや虚ろな眼差しを追って、シルバーキーは思わず後方を振り返る。絶望的なアマクダリ航空戦力。こんなにも近く。こんなにも……「何だありゃ」シルバーキーは呟いた。光の矢?「追加が来るわよ」カラテを構えるネザークイーンが咎めた。「集中して頂戴」「悪りィ……なんか、だけど……」48
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