トゥー・テンプラズ・ゼア・イズ・ノット・フォー・ファーザーズ #4 後編

たろりん(ニンジャ) @tarorininja

①togetter.com/li/803394 ②togetter.com/li/818248 ③(前編)togetter.com/li/822837 #tnjtk

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③(後編)togetter.com/li/828707 ④(前編) (実況付き)togetter.com/li/840016 (原文のみ)togetter.com/li/840019 #tnjtk

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俺のハートの中に一羽の青い鳥がいる/外に出たがるが/そいつには俺がタフ過ぎる/俺は言う、そこにいろ、俺は誰にも/おまえを/見せないのだから。-チャールズ・ブコウスキー『青い鳥』 #tnjtk

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トゥー・テンプラズ・ゼア・イズ・ノット・フォー・ファーザーズ#4(最終セクション)後編 #tnjtk

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「アアアア…！燃える…！燃えちまう！」コッカトリスが叫ぶ。「俺のキンボシ・オオキイが！」彼は燃え落ちる倉庫をただ見ていた。簡単なビズの筈だった。警察にも黙認され、ニンジャ二人掛かりで指定のポイントを回り、積荷を下ろすだけ。それが何故、こんなことに。1 #tnjtk

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「立てるか、ワタナベ=サン」ナブセが駆け寄る。「なんか、ナブセ=サンに似た人がいる」ハッピーバードがフラフラと立ち上がる。そして咳き込み、メンポを外した。酷く血の気の失せた、やつれた顔があった。右腕は失われている。口の周りは血とオハギで汚れている。2 #tnjtk

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「詳しい話は後だ。ミマミ=サンとナットウはあの家から逃した。だが警察も信用できん。急いで二人を連れ、キョートへ逃げろ。…これを」ナブセは鍵を取り出し、ハッピーバードに渡した。「…アア」トロリとした瞳が、輝きを取り戻していく。「…鍵だ」3 #tnjtk

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「これだ。ずっと探してたんだ。…ずっと」まるでクリスマスの朝にプレゼントを見つけた子供めいて、ハッピーバードは掌の上の銀色の金属を眺めている。「でも、思い出せないんだ。何で探してたのかな？」無邪気な声。ナブセは悲しげに笑い、彼の手を包み、握らせた。4 #tnjtk

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「仕舞っておけ。外側のポケットには入れるなよ」「アイ、アイ。分かったよ、優しい人」彼は嬉しそうにうなづき、鼠色のコートの内ポケットに鍵を仕舞った。「…ナァァブセェェ…！」燃える倉庫の方角からジゴクめいた声。ナブセは口を固く結び、その方向に向き直った。5 #tnjtk

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コッカトリスが怒りを露わにこちらを睨みつけている。その全身には恐ろしいカラテが漲っていた。「よくもやってくれたな…非ニンジャの屑が…！」その左腕が赤紫色に変わっていく。「お前は誰だ。何故俺の名を知っている」ナブセは意思の力でNRSを押さえ込み、聞いた。6 #tnjtk

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「答えぬ！ドク・スリケン！イヤーッ！」コッカトリスはスリケンを4枚投擲！そのスリケンも赤紫に染まり、溶け出している！「イヤーッ！」ナブセは人の身でありながらこれを転がり避ける！赤紫スリケンは後方のフォークリフトに刺さりこれを溶かす！7 #tnjtk

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「何ッ！？」コッカトリスは驚く。スリケンを避ける非ニンジャが居るはずはない。しかし目の前の男は避け、身を起こし、あまつさえこちらに走ってくる。((俺にカラテを挑もうというのか！イディオットめ))獰猛に笑うコッカトリス。彼の腕は触れたもの全てを毒に侵す。8 #tnjtk

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このドク・ケンはコッカトリスの高いニンジャ耐久力と毒への耐性あってこそ実現した、失なわれた暗黒カラテ奥義の一つだ。しかしこのジツを使うのはコッカトリスにもリスクがある。強すぎる毒が彼自身をも蝕むのだ。故に彼は滅多なことではドク・ケンを使わない。9 #tnjtk

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一見怒り狂っているだけと見えるコッカトリスは、実際己の油断を反省していた。ハッピーバードを舐めていた。故に腕を失った。ナブセを舐めていた。故にオハギの運送に失敗した。今はドク・ケンを使うことも躊躇わぬ。保身は無用。ただ全力を以って敵を殺すべし！10 #tnjtk

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ナブセは既にコッカトリスのカラテの範囲内に踏み込んでいる。「イヤーッ！」ドク・ケンによる首を狙う致命の貫き手！ナブセはこれを避けようともせず、更に一歩踏み込んだ。その拳は固く固く握られている。しかし普通と何かが違う。握りこんだ親指に支えられ突出した中指！11　#tnjtk

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ナブセはスリケンを回避して以来、継続的に続くソーマト・リコールの中にいた。((死ぬ。俺は死ぬ。殺される))非ニンジャにすぎぬ自分が、ニンジャに真っ向からイクサを挑んでいる。勝てぬ。殺される。赤紫の腕。アブナイ。ザムラ・カラテ。カラテとは。拳とは。衝撃。震動。12　#tnjtk

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簡素なドージョー。「ずっと」「ゼン」「すぐ」など、永遠と一瞬の狭間にゼンを探るショドー。「ヨウジを石に刺すことは可能か」ジュー・ウェアを纏いタタミの上に正座するのはザムラ・シンダキ。彼はゼンモンドーめいて弟子に問う。相対し正座するナブセは、首を横に振る。14 #tnjtk

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ザムラとナブセは丸い石を挟み向かい合う。両者の前には奥ゆかしく、左を向いたヨウジが一本置いてある。ザムラはヨウジを指でつまみ、立ちあがる。老いた身体にカラテが漲る。「イヤーッ！」SMAAAAASH！ヨウジが割れ、石にヒビが入る！ナブセは目を見張る。「センセイ」15 #tnjtk

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ザムラは割れたヨウジを見、ヒビの入った石を見、それから弟子を見た。「時間と面積だ。衝撃はそれが小さいほど、大きくなる」物理学と一致するカラテだ。ナブセは頷く。((一瞬のカラテのために、一生をカラテする。そこにゼンがある))ザムラ・シンダキの理念。16 #tnjtk

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((インパクトの刹那、僅かにヨウジを引く。衝撃面と、衝撃時の両方を点にする))ナブセは立ちあがり、ひび割れた丸石を見つめ、ヨウジを構えた。「イヤーッ！」SMAAAAASH！ヨウジが割れ、石が完全に砕け散る！「そうだ」ザムラが嬉しそうに微笑む。17 #tnjtk

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「ヨウジを石に刺すことは可能か」もう一度、師は弟子に問う。「できます」弟子は答えた。「カラテはいつの日か、それを可能とします」「そうだ」ザムラは頷く。「その一瞬のために、カラテは受け継がれていく。俺でなくとも、お前でなくとも。ヨウジを石に刺せ、ナブセ」18 #tnjtk

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「！」驚きはコッカトリスのものだ。首を狙う致命の貫き手を見て、更に一歩踏み込むことでそれを躱す。なんたる狂気にも似た決断的踏み込みか！凶悪なる赤紫の左腕を突き出したコッカトリスの懐に踏み込んだナブセは、不自然なまでに上半身を捻っている。20 #tnjtk

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コッカトリスの時間感覚が泥めいて鈍化する。目の前の男がこちらに目がけ右拳を撃ちだしてくる。ハヤイ。大仰なモーションであるにも関わらず無駄がない。避けられぬ。左手は突き出してしまっている。防御もできぬ。己の体重は未だ前方向に移動を続けている。21 #tnjtk