黄昏町(柊)十四日目

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@hiiragi_r_t_d

【十四日目】 [ハンドアウト]気が付くと、君は明滅を繰り返す電灯を見上げ、口笛を吹いている。好きだったはずなのに、曲名が思い出せない。《開始地点[町]shindanmaker.com/541547#黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541552 #hollytk

2015-08-09 09:30:33
@hiiragi_r_t_d

「〜♩♬〜♪〜♪〜〜」 私は口笛を吹いていた。 「ぴゅ〜、ひゅ〜ひゅひゅ〜」 意識した途端に吹けなくなった。 さっきまで上手く吹けていたのに。 私はいつもそうだ。意識すると上手くいかない。 01 #hollytk

2015-08-09 09:31:17
@hiiragi_r_t_d

「ひゅ〜、ぴゅ〜、シュ〜」 「ふしゅる、ふしゅる、ふしゅる」 「ひゅ〜、ひゅひゅ〜、ぴゅ〜」 「ふしゅる、ふしゅる、ふしゅる」 …………私は冷や汗を浮かべながら振り向いた。 「ふしゅる、ふしゅる、ふしゅる」 3m近い巨大な毛の塊が、そこにいた。 02 #hollytk

2015-08-09 09:32:11
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モップのように薄汚れた長毛。 その中に埋れた、黒い小さな目。 首も腰もない、おおよそ関節の見当たらない体。 そこから伸びる、黒く、長い爪。 あるのかどうか定かではない足でずるり、ずるりと一歩づつ近付いてくる。 03 #hollytk

2015-08-09 09:33:57
@hiiragi_r_t_d

私は棘を出し、後ろに飛び……下がれない。 「んなっ!?」 いくら力を込めても、棘は一本も現れなかった。 私はその毛むくじゃらを睨みながらゆっくりと後ずさる。 04 #hollytk

2015-08-09 09:35:17
@hiiragi_r_t_d

状況はあまり良いとは言い難い。 間違いなく私の異形の中で最強であった全身から伸びる棘は、今や影も形もない。 あの分厚い毛皮に、右腕の噛みつきが通じるとは思えない。 残るは左手と、硬化の力。 となれば、取るべき戦法は一つ。 05 #hollytk

2015-08-09 09:36:15
@hiiragi_r_t_d

私は毛むくじゃらに背を向けると勢い良く走り始めた。 長い指とそれを硬化させる事で得られるウェイトを大きく振り、今までにない速度で私は駆ける。 06 #hollytk

2015-08-09 09:38:00
@hiiragi_r_t_d

…………一応言っておくと、遁走している訳ではない。 あの毛むくじゃらがどのくらいの速度で移動するのか分からない以上、逃げ切れるとは思わない方が賢明だろう。 私の考えた作戦を実行するために必要なあるモノを探しつつ、助走しているのだ。 07 #hollytk

2015-08-09 09:38:21
@hiiragi_r_t_d

ない……ない……………あった! 私はやっと見つけたモノ、すなわち踏み切りに丁度いい高さのモノ、すなわちポストに向かって猛然と駆ける。 08 #hollytk

2015-08-09 09:40:50
@hiiragi_r_t_d

「いち!」 アスファルトの路面を踏み切る。 「にの!」 ポストの頭を蹴って更に飛び上がる。 「さんっ!」 空中で身を捻る。眼下には毛むくじゃらのバケモノの姿。 私は左手の指をピンと揃え、硬化させた腕を大きく振り上げる。 09 #hollytk

2015-08-09 09:41:40
@hiiragi_r_t_d

「ハァッ!」 私は左腕をその重量に任せ、バケモノに叩き付けた。 左腕の筋肉が瞬間的にその密度を増し、秘められた暴威を解き放つ。 バケモノの身体が扁平に潰れ、路面に放射状のヒビが入った。 10 #hollytk

2015-08-09 09:45:18
@hiiragi_r_t_d

おかしい。 この程度の攻撃でここまでの威力が出るはずがない。 これではまるで、鬼が……鬼が殴りつけたようだ。 11 #hollytk

2015-08-09 09:46:33
@hiiragi_r_t_d

「ふしゅる、ふしゅる」 扁平に潰れていたはずの毛むくじゃらのバケモノはいつの間にか元の形を取り戻していた。 しかし私の左腕をじっと見つめ、怯えている。 12 #hollytk

2015-08-09 09:47:21
@hiiragi_r_t_d

私が左手をバケモノにかざすと、パニックを起こしたかのようにバケモノは逃げていった。 「これは………悪くない」 昨日まみえた鬼が私に与えた異形なのだろう。 見た目には分からないが、使おうと思えば先程のように鬼の暴威を振るうことが出来る。 13 #hollytk

2015-08-09 09:49:02
@hiiragi_r_t_d

私は左手を拳に握り、腰だめに構えると試しに正拳を目の前のポストに叩き込む。 ポストはひしゃげ、中から手紙だった筈の黄ばんだ紙屑が溢れ出す。 「………足りない」 やはり鬼の一撃には、劣る。 14 #hollytk

2015-08-09 09:50:44
@hiiragi_r_t_d

この異形が鬼より一段劣る………という訳ではないだろう。 あの鬼は、力任せに殴りつけていた訳ではないのだ。 15 #hollytk

2015-08-09 09:52:32
@hiiragi_r_t_d

とにかく、この異形は露払いにもなるし便利で強い。 私は病院の鬼に心中で感謝すると、ポストの残骸を後にのんびりと歩きだした。 16 #hollytk

2015-08-09 09:53:59
@hiiragi_r_t_d

──────── 【十四日目】 【生存】 【魂+1】 【魂8/力10/探索3】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鱗(水耐性、力+1)、石肌(火耐性、力+1)、鬼腕(力+5) 17 #hollytk

2015-08-09 09:59:45
@hiiragi_r_t_d

[町]背後から、ふしゅるふしゅる、と奇妙な音。振り返ると2mを越す躯体の怪物が、君を見下ろしている。《力3以上で勝利【魂+1】、力2以下で死亡【魂-1/異形『爪(力+2)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk

2015-08-09 09:54:48