黄昏町(柊)五十日目

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@hiiragi_r_t_d

【五十日目】 【魂19/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) #hollytk

2015-09-15 22:08:27
@hiiragi_r_t_d

「ああ……渇く」 私は喉が渇いていた。身体が結晶化しても、喉は渇く。なぜなら私が生きているから。 夕暮れに照らされた路面では逃げ水は起きないが、それはなんの慰めにもならないのだ。 逃げ水でもいいから水が見たい。 01 #hollytk

2015-09-15 22:08:42
@hiiragi_r_t_d

もう少し歩いて水場が無かったら、そこら辺の民家から拝借しよう……そう思って歩いていた私の前に、広い公園が姿を現した。 得体の知れない銅像と豊かな緑。そして水飲み場では上を向いた蛇口から水が流れ出している。 02 #hollytk

2015-09-15 22:08:56
@hiiragi_r_t_d

あからさまに怪しい。 なぜ水が出しっぱなしになっている? なぜこの公園には鳥が一羽もいない? なぜ周囲の茂みから物音がする? これは罠だ。明らかに。 しかしそうと分かっていても、水の誘惑は強い。私はゴクリと生唾を飲み込んだ。 03 #hollytk

2015-09-15 22:10:21
@hiiragi_r_t_d

少しくらいなら…急いで飲んでから、適当に脅かして逃げればいいだけの話なのでは? 私は竜尾を構え、周囲に気を配りながらゆっくりと水飲み場に近付く。 茂みの中から、ざわめく声がかすかに聞こえる。 04 #hollytk

2015-09-15 22:12:09
@hiiragi_r_t_d

私は蛇口に手を添えて水をすくい、ガブガブと飲み干す。 四回ほど繰り返して喉の渇きを癒した後、私は顔を上げて周囲を見回す。 私の視線が向いた茂みだけが、しん、と静まり返る。 「……もしかして、バレてないつもりなのでしょうか」 どうやら彼らは素人らしい。 05 #hollytk

2015-09-15 22:14:08
@hiiragi_r_t_d

調子に乗ってバケモノ退治に手を出したばかりの住民グループ、といったところだろうか。 この手の素人は、出鼻をくじいてやれば引き下がる。 ビギナーズラックがあるのは、カジノのテーブルの上だけだと教えてやろう。 このような愚行は、双方のためにならないのだから。 06 #hollytk

2015-09-15 22:16:06
@hiiragi_r_t_d

私は腕を組み仁王立ちになると、意図的に重々しい声を出す。 「そこの茂みに隠れている虫ケラども」 あちこちの茂みから響いていたざわめきが一瞬にして静まる。 「そこと、そこと、そこと、そこ。頭数ばかり随分と揃えたようだな」 「バレてる!やるぞ!行動開始!」 07 #hollytk

2015-09-15 22:18:30
@hiiragi_r_t_d

茂みから立ち上がった男達が、先端に重りを結んだ縄を投げる。縄は私の上を通り、反対側にいた男達が受け取る。 「もっとだ!動きを止めろ!」 更に追加で縄が投げられると同時に、端が木に縛り付けられる。 あっという間に私は太い縄でぐるぐる巻きにされていた。 08 #hollytk

2015-09-15 22:19:20
@hiiragi_r_t_d

「よし、いくぞ……」 指揮官と思しき男が数人を連れ立って私に近付く。 私は動けなくなっている風を装いながら、相手が近づくのを待つのみ。 彼らが完全に茂みから離れた瞬間、私は左手で縄を掴み、全力で引き千切った。 09 #hollytk

2015-09-15 22:20:23
@hiiragi_r_t_d

「なっ、馬鹿なっ」 慌てている指揮官に、千切れた縄を投げつける。それなりに重い縄を顔面に喰らい、男はもんどりうって倒れ込む。 頭に血が上る。私はいつの間にか、目の前の人間達に怒りを覚えていた。 「貴方達、バケモノ舐めてるんですか?」 10 #hollytk

2015-09-15 22:21:19
@hiiragi_r_t_d

「わ、私はっ、私はぁっ」 恐怖か衝撃か、まともに話せない様子の男に私は問いかける。 「バケモノが憎いですか?」 「あっ、当たり前だろっ!」 私は溜息をつく。 「そうですか…まあ、でも」 そして右手を男の頭へ。 「死ねばそんな事は、どうでもよくなりますよ」 11 #hollytk

2015-09-15 22:23:19
@hiiragi_r_t_d

なぜ異形を持つ者は弾圧されるのか?それは同じ人間だと理解されないから。 ならば全員に体験してもらおう。 「ひっ、ひぃぃっ、ひ」 ぐしゃり。ばたり。 下顎だけを残して頭部を失った男が、公園を血に染める。 12 #hollytk

2015-09-15 22:25:07
@hiiragi_r_t_d

私の仮説が正しければ、彼もこの町のどこかで異形を得て蘇ることだろう。 その時彼はやっと理解する事ができるのだ。異形を持っていても、同じ人間なのだと。 そうして全ての住民が理解すれば、この不毛な争いもぐっと減るだろう。 なにせ自分も友人もバケモノなのだから。 13 #hollytk

2015-09-15 22:27:18
@hiiragi_r_t_d

男の無惨な姿を見て、周囲の男達が一斉に懐から刃物を取り出す。彼らの手元で煌めく刃を見て、我に帰る。 一体私は何をしているのか。指揮官を潰す余裕があればその間に離脱すべきだった。 「ああ、どうしてこうなったのでしょう」 すぐ逃げる予定だったはずなのだが。 14 #hollytk

2015-09-15 22:30:10
@hiiragi_r_t_d

ここまで事が進んでしまった以上、今更ぼやいても仕方がない。 「来なさい。ただし最初に踏み込んだ十人には、死んでもらいますよ」 普通の人間ならば、これほどの力量差の相手に積極的に仕掛けては来ないだろう。誰だって自分の命は惜しい。 15 #hollytk

2015-09-15 22:32:15
@hiiragi_r_t_d

あとは時間が経って相手が疲弊したところを強行突破…… 「う、うおおおおおお!」 どさり。 私は包丁を構えて突進してきた男の首を竜尾で吹き飛ばした。 おかしい。こいつらは自分の命が惜しくないのか? 16 #hollytk

2015-09-15 22:34:14
@hiiragi_r_t_d

惜しくないならバケモノ狩りなどしないだろうから、きっと命は惜しいと思うのだが…… 「おのれええええ!」 ぶん。ばたり。竜尾の一撃で首が宙を舞う。 「死ねえええ!」 「クソがあああ!」 ぐしゃり。左腕の一撃が二人まとめて挽肉に変える。 17 #hollytk

2015-09-15 22:36:14
@hiiragi_r_t_d

左腕で潰し、右腕で喰らい、竜尾ではね、蹴り、踏み付け、投げ飛ばす。 しかしそれでも刃物を持った住民達は、先人の骸を踏み砕いて迫る。 「狂っている…」 集団ヒステリー? ぐさり。 18 #hollytk

2015-09-15 22:38:36
@hiiragi_r_t_d

ついに排除しきれなくなった刃が、脇腹に突き刺さる。 ぐさり。ぐさり。ぐさり。 痛みで動きが鈍ったところを、背中や脚に、手当り次第に刃物が突き刺さる。 私は声を出す余裕すらないまま全身に無数の刃を受け、絶命した。 19 #hollytk

2015-09-15 22:40:20
@hiiragi_r_t_d

──────── 【五十日目】 【死亡】 【魂-2】 【魂17/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) 20 #hollytk

2015-09-15 22:40:34
@hiiragi_r_t_d

[町]喉が渇いた…。公園の水飲み場へ近付くと、怯えた顔の住人達が得物を手に君を取り囲む。《所持異形1つ以下なら保護される【魂+1】、異形2つ以上で死亡【魂-2/異形『棘(力+2)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk

2015-09-15 22:40:49