黄昏町(柊)

柊 @hiiragi_r_t_d

【これより黄昏町のテキストを投下します。 実況する方は #hollytk を使っていただけると幸いです。】

柊 @hiiragi_r_t_d

[ハンドアウト]血の味がして、君は目を覚ます。自分の指を噛んでいたようだ。【魂10/力0/探索0】 《開始地点[町]shindanmaker.com/541547》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541552 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

鉄の味がする。 鉄…………血…か？ 01 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

私は立ちくらみでふらふらしながら起き上がる。……起き上がる？そう、私は路上で寝転がっていた。危ないな。車に轢かれたら大変だ。誰か起こしてくれれば良かったものを。まったく現代日本の人情の廃れようは目に余るものがある。これだから若いもんは…………… 02 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

立ちくらみも収まったところで私は周りを見渡してみた。時刻は夕暮れ。ここは町。新旧の民家と入り組んだ路地が私を取り囲んでいた。 「あ……………帰らなきゃな」 そう、私は自宅に帰る途中だった。 「ここは………」 03 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

『道に迷ったらまずマップアプリ』とは私の言葉だ。ジャケットの裏ポッケから引っ張りだしたやや古い型のスマホを起動。……………画面が点かない。充電切れか？ 仕方が無い。誰かに聞くとしよう。あまり気は進まないが。 04 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「あのー、だれかいませんかー」 誰もいない。人情がないのではなく人気がない。 「道に迷っているんですー、だれかいませんかー」 05 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

歩き回って探すしかなさそうだ。 「やれやれ……痛っ！」 指に噛み跡が残って血が出ていた。普段そんな癖はないのだが………… 06 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

──────── 07 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

随分長いこと歩き回った………ような気がする。気はするのだがまだ日が暮れていないところを見るにそこまで時間は経っていないのだろうか。 結論から言うと誰もいなかった。人っ子一人いない。 08 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「よお、こんなとこで何してんだぁ？」 「へぁっ!?」 せっかく向こうから話しかけていただいたのに奇声で応えた非礼を許して欲しい。なにせ彼は突然後ろから、つまり私が歩いてきた方向から声をかけてきたのだ。 09 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「あっ、どうも………道に迷っていまして………」 「あー、そうかそうかー。まあここ迷いやすいもんなー。で、どこに行きてえんだ？連れていってやろうか？」 「あー、とりあえず最寄りの駅に……」 10 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「ん？ああ。なるほど。なるほどねぇ」 彼は一瞬不思議そうな顔をしたあと何かを閃いたらしく、深く頷いている。 「うんうん。やっぱそれがベターだよなァ。いやベストだ。それ以外ありえんな！」 11 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「あのー、それで駅は…………」 「へ？ああ、駅。駅ねェ。OKOK、ついてきてよ」 ……………なんかうさんくさいなこの人。大丈夫か？ まあ案内してくれるというならついて行こう。 「分かりました。で、駅はどっ..」 12 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「ぶん」いや正確に表現するなら「ブゥン」や「ぶわっ」が正しいだろうか。 紙一重で避けられたのは日頃の行いが良かったからだろう。彼、いや「それ」の放った回し蹴りは私の鼻先を掠め、風圧が肌を撫でるにとどまった。 13 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「ちっ、避けたか。最初みたいだから楽に逝かせてやろうと思ったのによォ」 「それ」は先程まで私と噛み合わない会話を演じていた彼ではなかった。いや間違いなく彼なのだが、あまりの変貌ぶりに理解が追いつかないのだ。 14 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

外見が変わったわけでも、口調や人格が変わったわけでもないのだ。なのにこの『違和感』は一体なんだ…？ 「………最初………？」 結局私の口からこぼれたのは問いかけの形にすらならない呟きだけだった。 15 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

最初……楽に……イカセル？ 殺……される？ 嫌だ。 私には別に生きる目的などという高尚なものはないが、こんなわけのわからない場所で化け物に殺されるほどの悪徳を積んだ覚えもない！ 16 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

理由は定かではないが「それ」は蹴り足を戻した後、何もせずにこちらを見ている。観察のつもりか？ 私には武道の心得は欠片もないが私のジャケットにはとっておきの「アレ」がある。隙を突いて使えば多少の時間稼ぎにはなるだろう。そのうちに……逃げる！ 17 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「おお、その顔………なんか思い付いたな？いいぜ、遊んでやるよ」 いける。コイツは私に傷つけられる事など想像もしていない。 「そぉらッ！」鋭い右蹴り。狙いはあくまで顎か。 18 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「！」避けようとしたが予想よりも速く、顎をかすめる。 「次はマジで当てるぜ。気張って避けろよッ！」 蹴り足を戻した勢いでそのまま流れるような回し蹴り。 19 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「ぐっ！」 慌てて右腕でガードする。あらぬ方向に右腕が曲がる。これ以上傷を負うと本当に逃げられなくなりそうだ……早く、早く足以外で攻撃しろ…… 「はッ、結局特になんも無しかよ。お手上げ、ってかァ!?」 20 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

掴みかかってくる。………来た！ 私はポケットから取り出した「アレ」、即ち小振りな折り畳みナイフを握りしめると「それ」の掌に突き立てた。 21 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

肉を切り裂く感触と硬いものにぶつかる感触があった。確実に刺さったはずだ。 22 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

私は「それ」の横をすり抜け、路地へと逃げ込…………………………あ……れ？ 23 #hollytk