黄昏町(柊)二日目

トゥギャッター慣れぬ。なんか最後の方がツイートが重複とかしていたのでいじってみた。 初日/一日目→http://togetter.com/li/849906 翌日/三日目→http://togetter.com/li/851532
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@hiiragi_r_t_d

[ハンドアウト]気が付くと、君は川沿いの道をぼうっと歩いている。いつから歩いていたのだろう。足がくたくただ。《開始地点[町]shindanmaker.com/541547》【魂9/力2/探索1】 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541552 #hollytk

2015-07-21 23:02:13
@hiiragi_r_t_d

川沿いに整備された遊歩道を私は歩いていた。一体全体いつから歩いていたのか、そもそもなぜこんなところを歩いていたのか、それは…………どうしてだ?思い出せない。 頭を搔こうと思って右手を挙げた瞬間、背筋が凍り付いた。 01 #hollytk

2015-07-21 23:03:10
@hiiragi_r_t_d

右手首に裂け目がある。常人ならば、そして記憶の中にある私の右手ならば太い静脈が青く脈打っているはずの位置にグロテスクな裂け目がパックリと開いている。信じられずに手を開いてまじまじと見るとその裂け目は中指の付け根から肘の内側まで伸びている。 02 #hollytk

2015-07-21 23:04:18
@hiiragi_r_t_d

間違いない。これはさっき私を殺した男のものだ。…………私を、殺した? 矛盾している。私はここに生きている。私は足元を確認した。………いつもの黒い革靴だ。まあ合成皮革なのだが。とにかく透けてはいない。 03 #hollytk

2015-07-21 23:05:20
@hiiragi_r_t_d

足元に転がっていた小石を拾い上げる。 平たくてすべすべしている。水切りなどに使えばかなり飛距離を稼げそうだ。まあそれはどうでもいい。足が透けていなくて物に触れる。ならとりあえず幽霊ではないのだろう。 04 #hollytk

2015-07-21 23:06:23
@hiiragi_r_t_d

せっかくいい石を拾ったことだし、特に意味はないが昔を思い出して投げてみる。人差し指をかけ、親指で押さえ、勢いよく腕を振って、手首のスナップを効かせてリリース。勢いよく回転しながら飛んでいった小石は川の半ばほどまで跳ねていった。 05 #hollytk

2015-07-21 23:07:37
@hiiragi_r_t_d

自身の実在を確認し、小石を処理したところで私は自分の腕を見分する。 指の動きとは別に動く。内側には鋭い歯がびっしり並んでいる。舌も声帯もなく、呼吸や発声には使えない。呑み込んだ先は管になっているがそれが私の胃まで繋がっているのかは分からない。 06 #hollytk

2015-07-21 23:08:26
@hiiragi_r_t_d

しかしどうしてこれが私の腕にくっついているのだろうか。 ………先程会った男の様子は尋常ではなかった。 ………彼は明確な殺意を持って私をその「腕」で食べた。 07 #hollytk

2015-07-21 23:09:31
@hiiragi_r_t_d

………食べられた(はずの)私の腕には今、彼の腕にあったものと寸分違わぬ口が備わっている。 以上の事から私は一つの仮説を得た。 「この口は呪いの一種で、他人を殺す事で呪いを押し付ける事ができる」 どうだろうか。結構自信があるのだが。 08 #hollytk

2015-07-21 23:10:28
@hiiragi_r_t_d

この口が超常現象や呪いの一種なら私が生きていることも説明がつく。いや全く説明にはなっていないが、とにかく納得できる。 私は自分の身に起こっている事に、とにかく一定の説明がついたことに満足して、夕焼けを眺めながら歩いていた。 09 #hollytk

2015-07-21 23:11:25
@hiiragi_r_t_d

こんな風にぼんやり夕焼けを眺めるなんていつ以来だろうか。 小学校の頃は毎日空が夕焼けに染まるまで友達と遊んで、暮れかかる日にまだ暮れるな、まだ沈むなと願いながら家路を急いだものだ。 10 #hollytk

2015-07-21 23:12:36
@hiiragi_r_t_d

そんな風にノスタルジィに浸りながら歩いていると公園に出た。広い河原を利用してグラウンドが作られ、バットやサッカーボールが転がっている。 堤防の上、それら全てを見渡せる場所に少女が一人、膝を抱えて座り込んでいた。 11 #hollytk

2015-07-21 23:13:20
@hiiragi_r_t_d

こんな街に来ている以上彼女も何らかの事情を(あるいは異形を)抱えているのであろう。 私は彼女に気付かれないうちにこの場を通り抜けようと静かに、しかし足早に歩を進めていった。 12 #hollytk

2015-07-21 23:14:27
@hiiragi_r_t_d

「あの!」 残念ながら気付かれてしまったようだ。 「あの………その…………」 全速力で逃げてやろうかとも思ったが、どうやら彼女に害意はないらしい。 話くらいは聞いてあげよう。 …別に下心がある訳ではない。この町でマトモな人間に出会えたのが嬉しいのだ。 13 #hollytk

2015-07-21 23:15:31
@hiiragi_r_t_d

「どうかしましたか?」 「その………ここで人に会うの、初めてで……」 なるほど。うさんくさい男に頭からかじられた経験は彼女にはないらしい。 「私も人間に会うのは初めてです」 「そっ、そう、ですか………」 14 #hollytk

2015-07-21 23:16:39
@hiiragi_r_t_d

「一応断っておくと私は人間ですよ。なんなら」 「あのっ!」 ばっさり遮られた。悲しい。 「その………これって、夢じゃあないん……ですよね………」 「夢だったらいいんですけどね……」 夢でなどあるものか。あの痛みも、あの恐怖も、そして今眺めている夕焼けも。 15 #hollytk

2015-07-21 23:17:32
@hiiragi_r_t_d

彼女は勢いよく立ち上がると堤防を駆け下りてきた。(逆に言うと私からは彼女に一歩も近づいていない。襲ってきたら怖いからだ) 近付くにつれて彼女の着ている服が制服だと気付いた。白地に青のラインが目に涼しいセーラーの夏服だ。 16 #hollytk

2015-07-21 23:18:23
@hiiragi_r_t_d

彼女は駆け寄り、両手を後ろに回してはにかみながら挨拶した。 「あのっ、あらためてこんにちは!いや、もう夕方だからこんばんは、かも?」 「ああ、こんばんは、の方がいいかもしれませんね」 まあこの町に昼や夜があるのか、私は残念ながら知らないのだが。 17 #hollytk

2015-07-21 23:19:37
@hiiragi_r_t_d

それから彼女と私はグラウンド端のベンチに座ってしばらく話した。 学校の事、家族の事、試験が近い事、帰って犬の世話をしなくてはならない事… 彼女はよっぽど人恋しかったらしく、私は彼女の話に頷くばかりであった。 19 #hollytk

2015-07-21 23:21:47
@hiiragi_r_t_d

「それで、うちのイチが首輪外して逃げ出しちゃってさー」 「ふむ」 「家族総出で街中探したのに結局おばあちゃんの布団の中にいたの!」 「灯台もと暗しだな」 ちなみに私はデスマス調を禁止された。非常に話しづらい。 20 #hollytk

2015-07-21 23:22:35
@hiiragi_r_t_d

「あとは何があるかな〜。あ、うちのセンセーに黒板消しトラップ仕掛けた話ってした?」 「それはさっき聞いた。……で、そろそろその左手について聞いてもいいか?」 話題が尽きたのを見計らって私が投げた問い。彼女の表情が固まる。 21 #hollytk

2015-07-21 23:23:33
@hiiragi_r_t_d

「…………いつから気付いてたの?」 「最初の違和感は挨拶の時だな。」 「そっか。…………じゃあ仕方ないね。」 そう言うと彼女はポケットから左手を出す。 「私は何もしないから、逃げないでね…?」 22 #hollytk

2015-07-21 23:24:33
@hiiragi_r_t_d

彼女がポケットから出した左手には真っ白なハンカチがきつく巻きつけられていた。 彼女はゆっくりとハンカチをほどく。その下から現れたのは…異形であった。 23 #hollytk

2015-07-21 23:25:31
@hiiragi_r_t_d

白魚のような美しい肌。桜色の爪。特におかしな点はない。……………その「長さ」以外。 彼女の指はとても長かった。常人の三倍はあろうか。当然、生まれついてのものではあるまい。 24 #hollytk

2015-07-21 23:26:34