【ミイラレ!第十一話:トンカラトンのこと】(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。修行回……? こちらは原文のみです。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/858208
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第十一話:トンカラトンのこと】 #4215tk

2015-08-08 21:31:19
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

放課後。体育館下にある格技室。「うー……ごめんなさい」「本当にすいません」正座した小雨とともに四季は改めて頭を下げた。「いえ、事情はわかりましたから。……特に日条君はそこまで気にしなくても大丈夫です」学生退魔師たちのリーダー、良子が苦笑して答える。1 #4215tk

2015-08-08 21:33:17
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

大天狗のながれの助力もあり、あの場はなんとか丸く収まった。とはいえ退魔師たちに迷惑をかけてしまったことには変わりない。そんなわけで良子に頼んで説明と謝罪の場を設けてもらったというわけである。「しかし、これほどの怪異が知り合いにいるとは……」2 #4215tk

2015-08-08 21:36:01
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

半ば感心したように呟いたのは、良子の隣に座る名雲。どうやら彼女の副官的な立ち位置であるらしい。四季はそう判断した。「山神様でもあったとは思いもしませんでした。……山から離れられても大丈夫なのですか?」「ん?あー、全然問題ないよ」彼の問いにあっさりと小雨が答える。3 #4215tk

2015-08-08 21:39:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あたし以外にも山神はいるからね。今は私が取りまとめてるってだけで、少しくらい離れても大丈夫!」「おぬしが大丈夫でも、それに付き合わされる他の連中が大丈夫ではないわ」苦々しい声で吐き捨てたのはながれ。彼女は小雨の肩に腰掛けている。高い場所にいたいのだろうか。4 #4215tk

2015-08-08 21:42:20
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「それに人間どもも困るであろう。早々に山に帰れ」「えー!嫌だよ、四季を危ないとこに放っておくなんて!」悲鳴じみた声で小雨が抗議。ちなみにその瞬間には、四季は彼女の腕の中に収まっている。抵抗する間もなかった。「なんだか変な怪異がいるんでしょ、ここ?」5 #4215tk

2015-08-08 21:45:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……『学校の魔女』と名乗る怪異が潜んでいるのは事実ですけど」良子と名雲のやや後ろで怜が答えた。この場にいるのはこれで全員である。「でも、退魔師もいます。四季はなんとか守ってみせますから」「守る、ねえ」少し困ったように、小雨が退魔師一同を見回す。6 #4215tk

2015-08-08 21:48:14
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「正直、君たちに四季を任せるのすごい不安なんだけど。自分の身を守るだけで精一杯なんじゃない?」「それは……!」反論しかけた怜は、しかし悔しげに口を閉じる。「ちょっと、小雨!」「うん、ごめんね。四季はすこーし静かにしててね」諌めようとした四季も口を塞がれた。7 #4215tk

2015-08-08 21:51:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「言い方はどうかと思うが、まあ小雨の気持ちもわかる」腕組みをしたながれが、厳しい眼差しで良子たちを見下ろした。「その年頃の退魔師としては確かに優秀かもしれん。しかし悪魔を従えるような存在とことを構えるには、おぬしら少々ひ弱過ぎるわ」良子は苦い顔をするのみだ。8 #4215tk

2015-08-08 21:54:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ゆえに!儂が一肌脱いでやろうと思う」胸を張って言う天狗に、退魔師たちは訝しげな視線を向けた。「一肌脱ぐ、とは……」「鍛え直してやる、という意味じゃ。おぬしらがどの程度退魔師をやっておるかは知らんが、あまり高位の怪異とは戦ったことはないじゃろう?」9 #4215tk

2015-08-08 21:57:02
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「模擬戦、ということですか」目を丸くした良子が、やがて納得したように頷く。「そうですね……そうした形でお力添えいただけるならば、これほどありがたいことはありません」「早速希望者を募ってみますか?」「ええ、お願い」名雲の言葉に、彼女は迷うことなく頷いた。10 #4215tk

2015-08-08 21:59:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「稽古つけてあげるの?」相変わらず四季を抱えたまま、小雨が首を傾げた。「相変わらず変なとこで面倒見がいいよね、ながれは」「四季坊のわがままを聞いてやるには良い手じゃろうて」ながれが素っ気なく答える。「そして良い機会じゃ。ついでに四季坊にもちょいと指南をするぞ」11 #4215tk

2015-08-10 21:21:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「プハッ!……俺も!?」ようやく小雨の手を払いのけた四季は、驚いてながれを見やる。天狗は当然のように頷いた。「そうしたほうがよかろ。昔のままならともかく、今のおぬしは百鬼夜行の長でもある。より目をつけられやすくなっておるだろうからの」そしてニヤリと笑う。12 #4215tk

2015-08-10 21:24:14
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「安心せい。退魔師どもとは違って優しく教えてやるでな。手取り足取り」「えー!なにそれ、ずるい!」四季がまたきつく抱きしめられる。小雨だ。「そういうことならあたしも手伝う!いいよね!?」「さあてのう。どうするかね、賀茂のお嬢ちゃんや」退魔師たちが顔を見合わせた。13 #4215tk

2015-08-10 21:27:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……そう、ですね。八尺殿にもお手伝いいただけるならば、ありがたいのは確かですが」「本当!?」ぱぁっ、と小雨の顔が明るくなる。そして片腕を良子へと差し伸ばし「やめい!」「あいたっ!」ながれから錫杖ではたかれた。思わず四季は溜息をつき、天井を仰ぐ。目が合った。14 #4215tk

2015-08-10 21:30:02
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

目?四季は訝しんだ。そう、目がある。ちょうど自分たちを見下ろせる位置に、一つきりの目がぽっかりと空いている。それはぎょろりと四季を見下ろした。「なんかいる!」思わず上げた声に、まず反応したのは小雨だ。片手で四季を抱えたまま、もう片方の腕を閃かせる!15 #4215tk

2015-08-10 21:33:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

軽い音を立てて天井に突き刺さったのは黒色の針。いや、長さとしては串といったほうが近いか。「……ダメだ、逃しちゃった」小雨が悔しげに呟く。ながれも厳しい表情で天井を見上げる。「本体はここにはおらんな。……ええい、儂としたことが。ここまで気づくのが遅れるとはの」16 #4215tk

2015-08-10 21:36:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「怪異?」ようやく事態を把握した名雲が呻く。「結界を張ってあったのに」「覗き見るだけ故、効かなんだのかもな」ながれが肩を竦める。「いずれにせよ、いつ魔女とやらの手のものが現れるかわからん。早急に稽古を始めるとしようかの」天狗の言葉に、退魔師たちは黙って頷いた。17 #4215tk

2015-08-10 21:39:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ははぁ、修行?なるほどね!いいね、面白いね!」学校内のとある暗がりにて。魔女の楽しげな声が木霊した。「いいね、すごくいい。ありがとうね、星見ちゃん。スクープだよ」『えへひひひひはははは、ふ、ふ、ふ、ふ!』魔女の言葉に答えたのは、不気味な笑みの合唱である。19 #4215tk

2015-08-10 21:42:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『そう言ってくれるとありがたいッス』『こっちも危ない橋渡ったので』『喜んでくれると嬉しいッスよ』複数の声。それは奇妙なことに、魔女の前に吊り下げられた一つの影から聞こえてくるようだった。周囲の暗さのために、その怪異の正体を見定めることはできない。20 #4215tk

2015-08-10 21:45:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『でもどうするんスか?』『退魔師はともかく』『天狗と山姫はあたしらの手に余るッスよ』「それはトリルに任せればいいよ」ひらひらと手を振りながら、魔女。「それよりも修行だよ。魔女としては、何か趣向を凝らしてあげなきゃ。そう思わない?」怪異は答えず、ぎぃ、と揺れた。21 #4215tk

2015-08-10 21:48:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『趣向』『趣向とは』『なにをなさるおつもりで?』「それを今から考えようと思ってるんだよー」椅子に深く腰掛け、リラックスしながら魔女は言った。「退魔師が強くなるのは、まああたしが面白くなるからいいんだけど。黙って見てるのも癪じゃない」『そうかもしれないッスねぇ』22 #4215tk

2015-08-10 21:51:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

振り子のごとく揺れながら、星見と呼ばれた怪異は呟く。『それはそうと』『あれ放っておいていいんスか?』「あれ?」『トイレの花子さんッスよ』「あー」魔女が声を上げた。「あれは『赤マント』に任せてるから。あいつのことだから、好きなタイミングで仕掛けるでしょ」23 #4215tk

2015-08-10 21:54:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『ならいいんスけどねぇ』『ぶっちゃけ』『向こうのテリトリーで太刀打ちできるとは思えないんで』「そりゃあそうだねー」魔女はケラケラと笑う。「ま、トイレは『赤マント』の領域でもあるし。どっちが勝つか見ものだね」ぎぃ、ぎぃ。星見が同意するように揺れた。24 #4215tk

2015-08-10 21:57:03
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