黄昏町(柊)三十一日目

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@hiiragi_r_t_d

【三十一日目】 【魂11/力10/探索6】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、半透明(探索+3、力-3) #hollytk

2015-08-27 20:11:55
@hiiragi_r_t_d

「あー楽でいいなあ、ホント楽だぜ」 「あのねえ……自分の立場を理解してますか?」 「理解してるぜ?アンタは解剖するまでアタシを守ってくれるんだろ?」 昨日の一件で完全に調子に乗っている。 「あまり調子に乗っているとブチ殺しますよ」 「わーこわーい」 01 #hollytk

2015-08-27 20:12:20
@hiiragi_r_t_d

やれやれ。私は溜息をつく。 背中でカスカがぼそりと呟く。 「別にいいじゃない…こういうの、久しぶりなんだから」 私はもう一度溜息をつく。 わざとなのか、天然なのか…… 「仕方がない。もう少し付き合ってあげますよ」 まあいい。どうせ解剖までの付き合いだ。 02 #hollytk

2015-08-27 20:14:02
@hiiragi_r_t_d

もうしばらく歩いていると、突然カスカが何かを口ずさみ始めた。 「ぴーらやらよーいよい」 「どうかしましたか?」 「聞こえる?祭囃子の音がするぜ?」 「おや、そうでしょうか」 「ぜってぇそうだって!ぴーらやらよーいよい、ぴーらやらよーいよい」 03 #hollytk

2015-08-27 20:16:10
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背中から飛び降りたカスカが、私の手を引く。 「ほら、こっちこっち!」 アスファルトの路面に、湿った足音と革靴のコツコツという音が響く。 「そういえば、カスカは裸足でしたね」 裸足にアスファルトの硬い路面は堪えるだろう。 どこかで履物と服を調達してあげよう。 04 #hollytk

2015-08-27 20:18:02
@hiiragi_r_t_d

「うわぁーっ、見ろよ!」 カスカと手を引かれた私が辿りついたのは、巨大な石で出来た鳥居。 「繋ぎ目が見当たりません…一つの岩塊から削り出されたのでしょう」 あるいは超常の力で繋ぎ合わせたか。 「でっけぇな!」 簡単に一言で済ませるな。 05 #hollytk

2015-08-27 20:20:21
@hiiragi_r_t_d

鳥居には一面に苔が貼り付いていて、何が彫られているのかは判別できない。 「ぴーらやらよーいよい」 今度は私にも聞こえる。祭囃子の音だ。 「ぴーらやらよーいよい」 足元を沢蟹が歩いている。法被を纏い、ねじり鉢巻きを巻いた沢蟹が。 「えっ?」 06 #hollytk

2015-08-27 20:22:07
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私はもう一度沢蟹を探すが、なかなか視界に捉えられない。視界の端をチラチラと横切るのだが、視界の真ん中に来ると消えてしまうのだ。 「まるで妖精だな」 さしずめ祭りの妖精、といったところか。 「え、何が?」 「蟹ですよ。足元で踊ってるでしょう?」 07 #hollytk

2015-08-27 20:24:17
@hiiragi_r_t_d

「蟹?踊る?アンタも冗談とか言うんだな。ホッとしたぜ」 カスカには見えないらしい。 「私も冗談くらい言いますよ、ハハハ」 笑って誤魔化しておいた。 「さて、行きましょうか。貴方の楽しみにしていた縁日ですよ」 「どこがだよ、ここはただのだだっ広い神社だぜ?」 08 #hollytk

2015-08-27 20:26:08
@hiiragi_r_t_d

「むむ……?」 私には大鳥居の向こうに並ぶ屋台とずらりと並んだ提灯の明かりが見えるのだが…? 「カスカ、ちょっと鳥居の奥に行ってみましょうか」 「まあ、いいけどよ……痛っ!」 鳥居をくぐろうとしたカスカが、バチリという鋭い音と共に弾き出された。 09 #hollytk

2015-08-27 20:28:10
@hiiragi_r_t_d

「やはり、結界ですか……」 「おい何だこれ?説明してくれんのか?」 うっすらと煙を上げる自らの手に息を吹きかけながらカスカが私を上目遣いに見上げる。 「おそらくこの大鳥居はある種の結界になっているのでしょう。弾く基準が分かりませんが」 10 #hollytk

2015-08-27 20:30:06
@hiiragi_r_t_d

私は鳥居の向こうに手を伸ばす。今度は拒まれず、すっと通った。 私はカスカに手を差しのべる。 「私は通れるようですね。行きますよ、カスカ」 「え、でもアタシは……」 「なんとかなるでしょう。それに楽しみにしていたのは貴方ですよ?」 11 #hollytk

2015-08-27 20:32:11
@hiiragi_r_t_d

「…でもこの結界はアタシを弾いてるんだろ?アタシはお呼びじゃねえって事だ」 私は溜息を一つ吐き出す。 「いつもふてぶてしい貴方にしては珍しいですね。そんなに拒まれる事が怖いですか?」 カスカの背中がビクリと震える。 12 #hollytk

2015-08-27 20:34:08
@hiiragi_r_t_d

「別にいいじゃないですか。入れるのなら入ってしまえば。いいですかカスカ、ズルというのはね」 私はカスカの手を取って引き起こすと、 「できるように作った奴が悪いんですよ」 思い切り抱き締めた。 「えっ、ちょっ、何してんのさ!」 カスカが慌てる。 13 #hollytk

2015-08-27 20:36:02
@hiiragi_r_t_d

私はカスカを抱き締めたまま、数歩移動する。 「はい、終わりましたよ」 混乱の只中にあるカスカを解放してやる。 「えっ?ここって…?」 カスカが目をぱちくりさせる。 私とカスカは、騒がしい縁日の喧騒の中に立っていた。 14 #hollytk

2015-08-27 20:38:06
@hiiragi_r_t_d

「上手くいったようですね。一応、常に私の身体の一部に触れておく事をお勧めします」 「お、おう」 カスカは大人しく、私の尾をぎゅっと握った。 「さて、どの出店に行きましょうか」 「こんなズルしてるのバレたらマズいんじゃ…」 「入った時点でアウトですよ」 15 #hollytk

2015-08-27 20:40:12
@hiiragi_r_t_d

とりあえず一通り、私達は出店を見て回った。 「なるほど、客も出店の主人も皆異形持ちなのですね」 ただの異形持ちではない。皆多くの異形を宿している。 「皆楽しそうじゃねえか」 「ここじゃ殺し合いは御法度!お嬢ちゃんも飴玉いるかい?」 飴屋の主人が売り込む。 16 #hollytk

2015-08-27 20:42:08
@hiiragi_r_t_d

「今はとりあえず見て回ってるんですよ。また気が向いたら来ますね」 カスカの代わりに私が応対する。 「おう、分かったぜ!待ってるからな!」 飴屋の主人…角の間に飴を飾った男は店に戻っていった。 「ほら、貴方の事なんて皆ただの子供としか思っていませんよ」 17 #hollytk

2015-08-27 20:44:37
@hiiragi_r_t_d

「頭じゃ分かってんだけど、不安でさ」 「そうですか……」 何か、対面式でじっくり会話できる店があれば…… 私の目が、「圓百回一 占子賽」と書かれた机に止まる。 占い、か。……圓?旧通貨の圓だろうか? そんなものは持っていない。家には数枚あった気もするが。 18 #hollytk

2015-08-27 20:46:17
@hiiragi_r_t_d

「あれ、アンタそのコインはなんだよ」 「はい?」 カスカに言われて自分の胸元を確認してみると、硝子の服と服の間に真鍮のコインが入っているのが透けて見える。 取り出してみるとそれは、五百圓玉だった。 19 #hollytk

2015-08-27 20:48:05
@hiiragi_r_t_d

表に富士山と「圓百五」。裏返すと難しい顔をした男が描かれている。 「なんですかね、コレ……」 旧五百圓は紙幣だったはずだが。 「まあいいです。あるものは使いましょう」 私はカスカの手を引いて占い師の待つ柳の下へと歩き始めた。 20 #hollytk

2015-08-27 20:50:09
@hiiragi_r_t_d

近付くにつれて占い師の風貌が明らかになる。 端正ながら、謎を秘めた翳りを持った美貌。 すらりとした体躯を、アイヌ文化の匂いを漂わせる独特の紋様があしらわれた浴衣が包んでいる。 俳人のような四角い帽が、ゆらゆらと柳のようにうねる白髪の上に乗っていた。 21 #hollytk

2015-08-27 20:52:15
@hiiragi_r_t_d

「ほら、カスカ。行ってきなさい」 「アタシ?アンタが行きたいんじゃねえのかよ。まあいいけどさ……」 カスカは占い師に近付く。一歩、二歩、三歩。 「いらっしゃい………あら、可愛らしいお客さんね」 お見事。私は心中で占い師に喝采を贈る。 22 #hollytk

2015-08-27 20:54:25
@hiiragi_r_t_d

あの占い師は先程から私とカスカを観察していた。カスカが乗り気でないこともお見通しだろう。その上でカスカがある程度まで近付いた所で声を掛けたのだ。 「そこに座って……そう、その椅子よ。」 私も後から歩み寄り、机の上に五百圓玉を置く。 23 #hollytk

2015-08-27 20:56:06
@hiiragi_r_t_d

「はい、お釣りはこちらね」 占い師は両手を動かさず、代わりにその髪が変化した蛇が四枚のコインを咥えて持ってきた。それを見たカスカが腰を浮かせる。 「うふふ…蛇は苦手?」 「す、すまねえ」 「いいえ、仕方のない事ですから。そういうお客さん、結構多いのよ」 24 #hollytk

2015-08-27 20:58:02