【ミイラレ!第十五話:あさんさごのこと】(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。反撃開始。 こちらは原文のみとなります。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/872967
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第十五話:あさんさごのこと】 #4215tk

2015-09-12 21:00:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……成る程。状況は掴めました」四季の説明を聞き終えた巡は、開口一番そう言った。「つまるところ、相手もまた一気呵成に勝負をつけに来ていると。正直ありがたい話です。長期戦に持ち込まれると面倒ですからねえ」彼女は懐から取り出した扇子を勢いよく開き、口元に当てる。1 #4215tk

2015-09-12 21:03:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「敵の数は六人。悪魔、魔女、赤マント、てけてけ、『カイダンさん』とやらに、まだ姿を現さぬ怪異と」「あの小童以外の怪異などどうにでもなろう」ながれが口を挟んだ。「儂がおるでな。が、あの小童……トリルのやつを抑えるには、儂らだけでは荷が重い」「でしょうなあ」2 #4215tk

2015-09-12 21:06:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

巡が頷く。「ですが、今回は相手に打ち勝つことが目的ではありません。あくまであの退魔師のお嬢ちゃんを助けることが最優先事項です。そのためにまずやることは」音を立てて扇子が閉じられる。「魔女の手足となる怪異を除けておくことでしょう。若旦那、最後の怪異なんですが」3 #4215tk

2015-09-12 21:09:21
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「う、うん?俺に聞かれても……なんだか妙な技を使うことくらいしかわからないよ?」「そこは重要ではありません。ですが、若旦那はその正体を聞いているでしょう」あ、と。四季は声をあげていた。そういえばその通りだ。彼は薫……魔女その人から、最後の怪異の情報を聞いている。4 #4215tk

2015-09-12 21:12:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そうだった!不幸の手紙の送り主。たしか昔は『あさんさご』って名前で」「あさんさごぉ?」巡が眉間にしわを寄せる。その反応に四季は戸惑った。「……知ってるの?」「はあ、まあ。怪異としてその名は知っておりますが……本当にその名を言っていたので?魔女が?」5 #4215tk

2015-09-12 21:15:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そう言ってたよ。あとなんだっけ……『僧文是』とか『よだそう』とかとも名乗ってたって」「……ふうむ。若旦那、そいつの今の名前、なんと言いましたっけ?」「ええと、レイル・インヴァードだったかな」「退魔師の嬢ちゃんに送られた差出人の名前、日本語でしたか?」6 #4215tk

2015-09-12 21:18:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季は記憶から手紙の写真を引っ張り出す。「……いや、英語だな。英語だった」「綴りは覚えておいでで」「つ、綴り?」面食らう四季の前に、紙とペンが差し出された。書け、ということだろうか。四季は記憶を探り、手紙に書かれていた名前を書き付けた。Rail Inverdと。7 #4215tk

2015-09-12 21:21:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

巡がそれを手に取り、目を細めて眺める。やがてその顔に薄い笑みが浮かんだ。「……敵の数は五人と考えてよいですな、これは」「え?」「此奴の住処は?」「図書室だったと思う。その、都月先輩の言うことが本当だったらだけど」「成る程。ま、退魔師共に恩を売るのも悪かない」8 #4215tk

2015-09-12 21:24:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

戸惑う四季の前で、巡が立ち上がった。「あたしが先行して、そのレイルとやらを片付けます。若旦那の話に出た、空間を歪める怪異もおそらくそいつでしょう。あたしが道をならしてから、ゆるりとお出になってくださいな」「え……一人で行くつもり!?」彼は目を丸くした。9 #4215tk

2015-09-12 21:27:19
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「いえ、二人ばかりお貸しいただければ。まず、畦走の」『お、俺ェ?』四季の肩に現れた小さな怪異が、驚きの声をあげる。「道案内がいるからね。でもう一人ですが」と、鬼女は視線を移す。人形にお菓子を与えている幽霊へ。「小夜子、あんただ。さっさと来な」10 #4215tk

2015-09-12 21:30:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「わ、私ですか!?」唐突に声をかけられて驚いたのか、小夜子がお菓子を取り落とす。メリーがそれをキャッチしつつ鬼女を見た。「あら。ということは、私を解放してくれるのかしら?」「ああ、そうさね」巡は興味なさげに返事をし、小雨へ視線を送る。「少し捕らえ方を変えるが」11 #4215tk

2015-09-12 21:33:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「え?」ニヤニヤとしたメリーの笑みが消える。瞬間、彼女の身体は大きな手に掴まれていた。小雨だ。彼女は引っ掴んだ人形を迷うことなく傍の袋の中へ放り込んだ。人形が暴れ出す前に口を締める。袋は少しの間もごもごと動いていたものの、やがて静かになった。12 #4215tk

2015-09-12 21:36:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「な、なにしたんです?」咄嗟に憑依を解除し、メリーから飛び離れた小夜子が恐る恐るといった様子で聞く。「別に。ちょっと大人しくしてもらっただけだよ」事も無げに答える小雨。「本当は元気のいい子を安全に運ぶためのものなんだけど。怪異にも効果あるみたいだね」13 #4215tk

2015-09-12 21:39:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

絶句する小夜子の体が引っ張られる。巡の糸に手繰られたのだ。「ほら、ぼんやりしてる暇はないよ」「ふえっ!?ま、待ってください!四季さーん!?」助けを求めるかのように手を差しのばす小夜子の姿が、トイレの闇の中に消える。当然、肩にナナを乗せた鬼女と一緒に。14 #4215tk

2015-09-12 21:42:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

……「おう、戻って……うおおっ!?」個室から出てきた人影に花子が驚愕の声を上げた。巡はそれを煩わしげに見やる。「なんだい、喧しいね」「わ、悪りい。てっきり四季のやつが戻ってくんのかと」「若旦那はお疲れだ。少し休んでいただく間に、あたしが道を均しておくのさ」15 #4215tk

2015-09-12 21:45:32
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

そう返し、巡はトイレの出口へ視線を向けた。「件のちのりとかいう怪異以外に、こっちに来る奴はいなかったのかい」「ん……まだ見てねえな。ここだとあたしに敵うはずもねえから、待ち伏せしてんのかも」「ま、それが妥当な線かね」花子の言葉に頷き、巡は足早に出口へと向かう。16 #4215tk

2015-09-12 21:48:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あ、あのう……」「なんだい小夜子さん。情けない声を出すんじゃないよ」背後に隠れるようにぴたりと身を寄せてくる幽霊に、巡は眉をひそめた。小夜子は顔を情けなく歪ませる。「そ、そんなこと言われましても!私、その、なんというか、荒事はちょっと苦手で」17 #4215tk

2015-09-12 21:51:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そんなことかい。そこまで怖がる必要はないさ。別に喧嘩をさせるためにここへ連れてきたわけじゃないからねえ」トイレから闇の広がる廊下へ。足を踏み出した巡は、頭上から振り下ろされた縄のような何かを片手で掴み取る。「ほら、早速出番だ」『ちぇっ、見抜かれてたッスか』18 #4215tk

2015-09-12 21:54:02
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

天井から生えたその縄の脇に、口が現れる。その中にはぎょろりとした目玉。『あの坊ちゃんとこの鬼女さんッスね?おっとり刀で駆けつけたと』「別にそこまで慌てちゃないがね。うちの春は元気にしてるかい」『忌々しいことに!あそこまで手こずらせてくれるとは大したもんッス』19 #4215tk

2015-09-12 21:57:28
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「はは、そりゃあそうだろうさ。あんたらとあいつとじゃあ、歴史がまるで違う」軽口を叩く巡は腕に異様な感覚を覚える。手の内に収めた縄が伸び、腕に絡みつくように首へと這い進んできているのだ!『若者ナメちゃあダメッスよ、おばさん』忌月が嘲笑う。「絞め殺してやるッス!」20 #4215tk

2015-09-12 22:00:24
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

……「ふむふむ、ふーむ。四季くんのとこの青行燈さんが来たの?」屋上。忌月からの報告を受けた薫は、やや眉をひそめた。「どうやって侵入したのかな。レイルが気づかないのはおかしいよね」『トイレから出てくるのを見つけたんスよ』忌月が言う。『あの坊ちゃんと入れ替わりで』21 #4215tk

2015-09-13 17:51:15
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「トイレ……?」魔女は眉間にしわを寄せた。が、すぐに合点がいったように手を叩く。「『トイレの花子さん』か。あれえ、でもおかしいな。あれは紅子がなんとかしたって聞いたんだけど。ねえ、かいな?そう言ってたよね?あいつ」振り向いて問われた鹿島はただ肩を竦めるだけだ。22 #4215tk

2015-09-13 17:54:23
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

薫は沈思黙考する。あの怪異が生きていたとなると、少し策を練らなければ。少なくとも今のようにのんびりとはしていられないだろう……退魔師たちは忌月のサポートを受けたレイルが翻弄しており、かの少年の護衛は赤マントと戦闘中。そこに無視できぬ存在が介入してきたとなれば。23 #4215tk

2015-09-13 17:57:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「かいな、悪いけど少し手伝ってもらえるかな?」「ん……別に大丈夫だけど。誰を狙うの?日条くん?」「いや、それはやめとこう。青行燈さんが出張ってきたってことは、あの天狗さんや山姫さんがも四季くんの側にいそうだからね」「鬱陶しい連中だ」口を挟んだのはトリルである。24 #4215tk

2015-09-13 18:00:47