【ミイラレ!第十四話:ちのりちゃんのこと】(原文のみ)

年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。最後の戦いは唐突に。 こちらは原文のみとなります。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/869531
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第十四話:ちのりちゃんのこと】 #4215tk

2015-09-04 20:06:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

都月薫……『学校の魔女』は異界の只中に着地する。片腕で怜を担ぎ上げたままで。「ふーむ?おかしいな」周囲に目を走らせ、彼女は小さく首を傾げた。魔女の邪眼に縛られ、身動きがとれない怜はその言葉の意味を理解する。ちょうど薫の目の前に、一人の退魔師が立ちはだかっていた。1 #4215tk

2015-09-04 20:09:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「零冶じゃん。なんでこんなとこにいんの?」「お前を止めに来た。……いや、違うな」ポケットから取り出した二つの札を刃と変え、木野零冶は構えを取る。「学校の魔女、お前を捕縛する」「へえ!」薫が目を丸くした。「なんだ、もうあたしの正体バレてたの?」2 #4215tk

2015-09-04 20:12:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そうガッカリすんなよ、薫。俺もさっき気づいたばっかだ」刃を魔女に向け、退魔師が言う。その表情は複雑だ。「お前の家、こっちじゃねえだろ?妙に気になったんでな、尾けさせてもらった」「アハ、ストーカーだ」魔女が笑った。「こんなことで気づかれちゃうなんて。けど」3 #4215tk

2015-09-04 20:15:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

空いた左腕を宙に差し伸べる。その手の中に鉄の杖が収まった。「退魔師一人にどうこうされちゃうほど、あたしは弱くないんだな」余裕の笑みを崩さぬまま、魔女は軽やかに手の内で杖を回す。「そりゃそうだろうな」硬い表情のまま、零冶。「俺がいつ一人だけで来たっつった?」4 #4215tk

2015-09-04 20:18:16
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

魔女の笑みが消える。ほぼ同時、三筋の矢が斜め上から彼女に到来!「なんとっ!?」慌てた様子で杖を振るい、矢を叩き落とそうとした。しかし杖と矢が触れた瞬間、矢が小規模な爆発を起こす!爆札が巻かれていたのだ!「うわっと」その爆圧に負けたか、薫がよろめいた。5 #4215tk

2015-09-04 20:21:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

その隙を突き、零冶が殺到する。彼は声もなく刃を振るう!魔女は鉄の杖で応戦。間断なく金属音が鳴り響いた。「アハ、びっくりした」数合打ち合ったところで、薫が笑う。「他にもいたとは気づかなかった。それに零冶、やるねえ」「オオオッ!」退魔師は答えず、さらに攻め立てる!6 #4215tk

2015-09-04 20:24:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怜は舌を巻いた。実質片腕だけにも関わらず、零冶の二刀流に対応できているとは。普通の人間ではほぼ不可能な芸当。やはり彼女は怪異だったのか?「今のうちに降参しとけよ、薫!」斬り結びながら零冶が吼える。「加茂先輩や阿部先輩も向かってる。片手間じゃ済まなくなるぞ!」7 #4215tk

2015-09-04 20:27:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

零冶の言葉に嘘はない。怜もこの場に向かう退魔師たちの存在を察知している。それは魔女にも同様のはずだ。「うーん、そうだねえ。このままじゃ遊べないな」薫がわずかに眉をひそめた。刃と杖が激突する。その反動で魔女は飛び離れた。「しょうがない。『てけてけ』、よろしく!」8 #4215tk

2015-09-04 20:30:16
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

空中で、魔女は不意に怜を放り投げた。怜は相変わらず指一つ動かせない。迫る地面に、彼女は思わず目を見開く。目を閉じることすらできないのだ!……しかし、彼女を待っていたのは受け止められるような柔らかい感覚。虚空から現れた両腕が、怜の体を受け止めたのである。9 #4215tk

2015-09-04 20:33:15
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

受け止められた途端、怜は目眩を覚える。周囲が暗転した。目眩がさらに強くなる。振り回される感覚の中、彼女は不意に理解する。この怪異は……『てけてけ』は、自分をどこかへ連れ去ろうとしているのだ。「さあ、遊ぼうか」魔女の言葉を最後に、怜の意識は途絶えた。10 #4215tk

2015-09-04 20:36:25
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……都月先輩が?」カイダンさんを前に、四季は呻く。『そういうことッス』『なんかそっちの方でビビられると』『あたしの立つ瀬がないんスけど』怪異の言葉に答える余裕は今の彼にない。ひとまず巡たちに連絡……いや、二人の先輩の前でそれをやるわけにはいかない。12 #4215tk

2015-09-05 17:42:16
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あの、先輩!すいません、急用、が……?」二人に声をかけようとした四季の言葉が止まる。なぜか?鹿島の腕がなくなっていたからだ。制服の袖がぶらぶらと揺れている……「え」「悪いね、下級生くん」外藤が困ったように笑った。「こっちも急用ができたとこだ」13 #4215tk

2015-09-05 17:45:15
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

呆気にとられる彼の前で鹿島の腕が戻った。なぜか怜とともに。その目は静かに閉じられている。「怜!?」四季は叫ぶ。そこに飛びかかったのは外藤だ。首に巻いた赤いスカーフが広がり、まるでマントのごとく変化する。これはいったい『若!お下がりを!』脳裏に声が響く。14 #4215tk

2015-09-05 17:48:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

その声に弾かれるように、四季は飛び退いた。そんな彼の目の前に小さな怪異が具現する。春!その拳が外藤だったものを迎え撃つ!赤い『それ』は拳に蹴りを合わせ、距離をとった。「……そうか。お前が『ボディーガード』か」外藤が笑った。その顔を赤いフードが包む。15 #4215tk

2015-09-05 17:51:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「おうよ。山ン本組、古木春とはあたいのことだ」四季をかばうように構え、春が眼前の『怪異』を睨む。「テメエのことは巡のやつから聞いてる。『赤マント』だな」「然リ」フードの奥から漏れたのは、先ほどとは違う無機質な声。「現在ノ、北都高校ガ七不思議。ソノ一人ダ」16 #4215tk

2015-09-05 17:54:51
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……まったくもう。薫ちゃんも紅子ちゃんも、そう自分から正体をばらさなくても」怜を担ぎ上げた鹿島が露骨にため息をついた。その表情は半ば前髪に隠れ、伺えない。「まあ、もう隠し通せる事態じゃないものね。仕方ないか」彼女は四季に視線を向ける。17 #4215tk

2015-09-05 17:57:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ごめんね、日条くん。私は『てけてけ』。紅子ちゃんと同じ、七不思議の一人だよ」「……怪異?」四季は呆然と呟く。この二人が?そんな馬鹿な。初めて出会ったときからずっと、そんな空気は感じなかったというのに。しかし、実際今の彼女たちから感じられる気配は……!18 #4215tk

2015-09-05 18:00:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『あの』『お二人とも』『ちょいとお聞きしたいんッスけど!』鹿島が鬱陶しそうにカイダンさんを見やる。「どうしたの、忌月ちゃん」『魔女の正体の件でペナルティとかないッスよね!?』『あれは不可抗力ッスから!』「わかってるよそんなこと。なにもしないよ」19 #4215tk

2015-09-05 18:03:26
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「カイナ。ソノ子ヲ確保シテオケ」春と対峙したまま、赤マントが言う。「忌月ハ手伝エ。下級生クン……モトイ、日条四季ヲ確保スル。取リ逃ガシタラ、マタアノ悪魔ガ煩イゾ」『了解ッス!』カイダンさんが体中の口で唱和する。そして上昇し、天井へと姿を消した。20 #4215tk

2015-09-05 18:06:23
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季は天井を見上げ訝しむ。次の瞬間、彼が見たのは天井から自分めがけて殺到する縄の……否、カイダンさんの触手!「うわっ!?」慌てて退避する四季。それを狙い、滑空するように赤マントが迫る。「やらせねえッ!」彼に伸ばされた腕を、春が弾いた。21 #4215tk

2015-09-05 18:09:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「若!ここは一旦撤退を!殿はあたいが務めます!」春の声に、四季は反論しようとした。まだ怜がいる。……しかし、同時にわかる。この状況はあまりにも不利!「……わかった。気をつけて!」そう言い残し、四季は階段を転げるように降りていった。追いすがる縄を避けながら。22 #4215tk

2015-09-05 18:12:17
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

……「ナントマア、逃ゲ足ノ速イ」赤マントが苦い声を出す。四季はすでに階段を降りきり、廊下へと駆け出すところだった。『ひとまず』『ちのりのやつに』『連絡を!』「……ソウスルトイイ」響き渡る忌月の声にそう答えてから、彼女は眼前の小さな怪異と対峙する。23 #4215tk

2015-09-06 17:09:21
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