【ミイラレ!第十七話:赤マント、そして決着のこと】(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。学校の魔女との一件、そろそろ決着。 こちらは原文のみです。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/879038
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第十七話:赤マント、そして決着のこと】 #4215tk

2015-09-26 17:48:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

北都高校、屋上。煌々と燃え盛る魔法陣の中心で薫は目を細めていた。「……かいな、やられちゃったのか」ぽつりと呟く。その顔も声も、不気味なほどに無表情。「うん、いいね。だいぶ面白くなってきたよ」すぐに笑みを取り戻した彼女は、左手に握った鉄の杖を背後に向ける。1 #4215tk

2015-09-26 17:51:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

杖の先から爆炎が迸り、飛来した反物を弾き返した。「で、そうだった。かいながやられちゃうと、あなたが動けるようになるんだったね。草江さん」ゆったりと振り返る魔女の視線の先で、怜が構える。『てけてけ』の力が消えたために、その四肢が元に戻ったのだ。2 #4215tk

2015-09-26 17:54:35
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「都月先輩、今すぐ降伏を」「なんで?」怜の言葉に、魔女は首を傾げた。笑みを浮かべたままで。「これからもっと楽しくなってくるのに」「『てけてけ』をはじめ、もうあなたの手駒は動けない。私以外の退魔師がここに来るのも時間の問題でしょう」怜は淡々と事実を突きつける。3 #4215tk

2015-09-26 17:57:44
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

彼女は足元に広がる魔法陣を見やる。「……あなたの目的だった悪魔召喚とやらも、もう間に合わない」「ああ、うん。それはそうだね」魔女は肩を竦める。「けど別にあれは目的じゃない。呼べれば楽しいかなと思ったけど、それだけだよ。失敗したらそのときはそのとき」4 #4215tk

2015-09-26 18:00:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

あっけらかんと答える魔女に、怜は訝しげな視線を向けた。「先輩。あなたは何がしたいんですか」「さっきも言わなかったっけ?あたしは楽しくて面白いことがしたいんだよ」魔女が笑う。「せっかく手に入れたこの力を腐らせておくなんて、つまらないじゃない?」5 #4215tk

2015-09-26 18:03:38
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怜はそれ以上言葉を続けなかった。説得は無意味、そして無駄。そのことがはっきりとわかったからだ。相手の隙を伺い、一瞬で仕留める。……そのときだ。魔女の傍に炎が渦巻いた。怜は舌打ちする。炎の中から現れたのが、あの赤髪の悪魔だったからだ。「あれ、トリル。早いね」6 #4215tk

2015-09-26 18:06:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

魔女が振り向き、目を見張る。悪魔はそれを不機嫌そうに見返した。「そんな雑魚と遊んでる暇なんてないぞ、薫。まずあの野郎を焼き尽くす!」「あの野郎?誰?」無防備に会話を始める二人に、しかし怜は動けない。魔女だけでなく、あの悪魔まで一度に相手にするわけには……!7 #4215tk

2015-09-26 18:09:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「破ァッ!」そんな彼女の動揺を切り裂くように、屋上へ降り立つ一つの影!反射的にそちらを見た怜は、驚愕に目を見開いた。「て、寺岡先生?」「おう、草江か!来るのが遅れて悪かったな」怜のクラスの担任であるその男が笑みを浮かべる。「あと、今その名前で呼ぶのはNGだ」8 #4215tk

2015-09-26 18:12:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

魔女もまた、少なからず驚いたようだった。が、すぐに芝居がかって一礼を返す。「ご機嫌よう、寺岡先生。『学校の魔女』です」「おう、都月か。悪いが今の俺は『T』だ。寺生まれで退魔師のな。よろしく頼むぜ」「『寺生まれのTさん』?実在してたんだ」魔女が目を輝かせる。9 #4215tk

2015-09-26 18:15:16
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「わー、すごいすごーい!けど学校の先生が生徒に暴力振るうのどうかって思います!」「急に現実的な問題持ち出すんじゃねえよ!……まあ、その辺は心配すんな」Tが構える。その両手に光が灯る。「物理はなしだ。ちょっと『気合』は入れるけどな。歯ァ食い縛れ」10 #4215tk

2015-09-26 18:18:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あはは。怖いなあもう」杖をTヘ向けようとする魔女の手を悪魔が抑えた。「おふざけはもう終わりにしろ、薫」軋むような声。「『力を貸してやる』。だから『体を貸せ』」「……あは。そういうこと?」魔女が笑った。「派手にやるんだね?いいよ、喜んで。楽しもうか」11 #4215tk

2015-09-26 18:21:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

魔女が答えた途端、悪魔の姿が燃え上がる。二人の退魔師が身構える前で、炎が魔女を包み込んだ。「なにを」思わず呻いた怜は息を呑む。魔女の体の中へ、炎が吸い込まれていくのを見たからだ。炎を全て取り込んだ魔女は目を閉じ、大きく深呼吸した。「……ふう」12 #4215tk

2015-09-27 18:21:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

退魔師たちが身構える前で、魔女はゆっくりと目を開いた。その目から燃えるような光が放たれる。「滾ってきたよ……じゃあ、やろうか!」そして鉄杖を二人に向けて突き出す。「3!」杖の先に光が灯る。「2!」光が周囲の中空に複数の魔方陣を描き出す。「1!」光が強くなる!13 #4215tk

2015-09-27 18:24:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……やべえ!離れろ、草江!」同時だった。Tの声に従って怜が飛び退くのと、「0!」楽しげな魔女の声が木霊したのは。眩い光が闇夜を切り裂き、怜の視界を塗りつぶす。ついで轟音!「破アアァァァァーッ!」渦巻く爆発音の中で、Tの叫びが小さく耳に届いた。14 #4215tk

2015-09-27 18:27:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

校舎が揺れたのは、零冶の札刃を『赤マント』が赤紙の槍で切り払ったちょうどその時だった。「……今のは?」戦いの最中にも関わらず、良子は天井を見上げる。「薫っち?いくらなんでも派手にやりすぎだろ……!」赤マントが舌打ちする。零冶もまた動揺していた。今のを?薫が?16 #4215tk

2015-09-27 18:30:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「いい加減にやめてくれ、外藤」無意識に彼は口を動かす。「薫のためを思ってんならなおさらだ。度が過ぎると、もうこの学校だけの問題じゃ済まなくなる。……もっと容赦ない連中が来るんだぞ!」「そうしたいのは山々だけど」もはやフードをつけていない外藤の顔が歪む。17 #4215tk

2015-09-27 18:33:57
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「でもそれは、やっぱりできない。……仮に私が戦いを止めたってなんになる?お前たちじゃ薫を止められない!私にすら勝てないお前らじゃあ!」零冶は言葉を詰まらせる。その後方で、名雲が懐から一枚の札を取り出した。他の式神群とは明らかに異質な、黒染めの札を。18 #4215tk

2015-09-27 18:36:14
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「賀茂さん」「なんですか」振り抜かぬまま答える良子に、名雲は言った。「『空亡』の使用許可を」弾かれたように良子が振り向く。「……駄目です、それだけは!」「しかし!この状況を打破するためには、もう」「それは対悪魔用の切り札です。今使ってしまっては元も子もない!」19 #4215tk

2015-09-27 18:39:13
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

二の句も継がせぬ勢いで言い切った良子は、再び戦斧を構えて赤マントと対峙する。赤マントが静かに首を傾げた。「……話は終わった?なら、続けようか。勝負がつくまで、ずっと」その周囲に赤い紙が舞い上がる。退魔師たちが身構えた、そのときだ。「失礼しますッ!」20 #4215tk

2015-09-27 18:42:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

大きな音を立てて、図書室の扉が開け放たれる。一同は揃って入り口を向いた。そして目を丸くした。「に、日条くん?」名雲がかろうじて入場者の名前を口に出す。彼……日条四季は足早に退魔師たちと赤マントの間に割って入った。その顔は、いくらか怒っているようにさえ見えた。21 #4215tk

2015-09-27 18:45:31
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「さっきから上で大変なことが起きてるのに」彼は良子を見据え、言った。「いつまでこんなとこでケンカしてるつもりなんですか」「け、喧嘩って……」良子は思わずたじろぐ。それに構わず、四季は赤マントへと向き直る。「外藤先輩も!ここでケンカする意味はもうないでしょう?」22 #4215tk

2015-09-27 18:48:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「え……いや、ないというかあるというか……そもそも下級生くん、なんでここに」「ケンカを止めに来たんです」四季は間髪入れずに答える。「それが終わったら上に行ってトリルと話し合うつもりです。なのに上ではなんか始まってるし……!時間がないんですよ、もう!」23 #4215tk

2015-09-27 18:51:08
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