黄昏町(九板)三日目
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[ハンドアウト]路上に転がった君の側からカラスが一羽飛び上がる。電柱の上から君を観察した後、興味を亡くしたように去っていった。《開始地点[町]shindanmaker.com/541547》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541552 #hollytk
2015-10-10 00:54:10「はぁー……痛っ!痛い!」 ズキズキと痛む肩の周りをまさぐると、飛び立つ羽音と嘲るような鳴き声が聞こえた。 「痛っ……たいですね……」 わたしは硬いアスファルトの路面からよろよろと起き上がる。 カラスは電柱の上に止まり、わたしをじっと見つめていた。 01 #hollytk
2015-10-10 00:54:29「はぁー……わたしの肉は、そんなに美味しいですか?」 ガァガァ、ガァー。 答えるようにカラスが翼を広げて鳴く。 「ごめんなさい……わたしはまだ、死んでいないので」 カラスは何処かへと飛び去っていった。わたしの言葉を理解した、という訳でもないのだろうけど。 02 #hollytk
2015-10-10 00:56:21まだぼんやりとしている頭を振りながら、わたしは歩きだした。 なんだかとても、恐ろしい夢を見た気がする。というか、ここはどこだろう? ぼんやりしているところに、考え事をしながら歩いていたからなのだろう。 わたしは全く、近づいてくるエンジン音に気付けなかった。 03 #hollytk
2015-10-10 00:58:20ドンッ、と衝撃が響き、わたしは路面に打ち付けられる。 「痛っ、たぁ……」 頭に手を当てると、どろりとした感触。 慌てて引き離した手は真っ赤な血に塗れ、てらてらと光っていた。 「う……あ……あ…あ」 学校。竜。痛み。ガラス。夢だったはずの記憶が、鮮明に蘇る。 04 #hollytk
2015-10-10 01:00:14そうだ、わたしは、竜に、竜に食べられて、死………… 「な……んで、生きてるんですか、わたし……うっ、ぷ」 喉の奥からせり上がる異物感に耐え切れず、わたしは地面に横たわったまま、吐いた。セーラーの襟が吐瀉物で汚れ、路面に汚れた水溜りが広がる。 05 #hollytk
2015-10-10 01:02:25息が苦しい。わたしはわたしが死んだという事実が受け入れられない。わたしはこうやってここに生きている。体は痛いし、息は苦しい。それは今確かにわたしが感じていて、でもわたしは死んだ。間違いない。あの時わたしは確かに全身をズタズタにされて、竜に呑み込まれて死んで 06 #hollytk
2015-10-10 01:04:19「き、君!?大丈夫!?」 わたしをはねた乗用車から少年が降りて来るのを視界の端に捉えながら、わたしの意識はぷっつりと途絶えた。 07 #hollytk
2015-10-10 01:06:11目を開けると、そこは車の中だった。 倒した助手席にわたしは寝かされている。 体にはバスタオルがかけられているが、セーラー服は脱がされていた。 「これは……?」 「あ、気が付いた?」 声のする方を振り向くと、さっきの少年が水路で洗い物をしていた。 09 #hollytk
2015-10-10 01:10:19わたしは車を降りて、バスタオルを巻いたまま少年に歩み寄る。 「どうも……あの、わたしのセーラー服」 「かなり汚れていたから洗っておいたよ。あっちに干してある」 「ありがとうございます……えーと、わたしは九板です」 「九板さんだね。僕は鏑木。よろしく」 10 #hollytk
2015-10-10 01:12:22わたしは目の前の少年……鏑木君の顔をぼんやりと眺める。それなりに整った目鼻立ち。髪を伸ばしているし、それなりに背丈もあるので分からなかったが、こうして見るとまだまだその顔立ちには幼さが残っている。わたしよりも年下かもしれない。 「あの車は、鏑木君が?」 11 #hollytk
2015-10-10 01:14:25鏑木君はわたしの声を聞くとビクリと体を震わせ、なにやら慌てたように喋り始めた。 「あっ、うん、そうだよ!こっこんなところじゃ法律も何も無いしね!でっでも、君をはねちゃった事は反省してるよ!」 「いえ、まあわたしも不注意でしたから……こんなところ、とは?」 12 #hollytk
2015-10-10 01:16:12「この町は、特別なのですか?」 鏑木君のような少年が車を乗り回し、法律をあっさり否定する場所……もしかしてここは、マフィアか何かが蔓延っている町なのだろうか?そうだとしたら大変だ。わたしが裏社会に関わりを持つ理由なんて一つもないし、さっさと出ていかないと。 13 #hollytk
2015-10-10 01:18:59「君はこの町に来たばかりなのかな?この町にはね、バケモノがいるんだ」 「バケ……モノ……!?ゲホッ、ゲホゲホッ」 「っ!?大丈夫かい!?」 わたしの脳裏に浮かんだのは、あの巨大な竜の目玉。 胃が裏返るような異物感と堪え切れない吐き気がせり上がる。 14 #hollytk
2015-10-10 01:20:10思わずえづき、その場に崩れ落ちそうになったわたしを鏑木君が咄嗟に支えてくれる。彼の腕を取りながら、わたしはよろよろと立ち上がる。バスタオルがはらりと落ち、下着だけの上半身が剥き出しになるが隠す余裕は今のわたしには無い。 「バケモノ……詳しく、聞かせて」 15 #hollytk
2015-10-10 01:22:14「で、でも苦しそうにしてたし、しばらく休んだ方が」 渋る鏑木君の両肩を掴んで揺さぶる。 「いいから、早く!」 口の中はまだヒリヒリするが、今のわたしにはそんな事はどうでもいい。 バケモノとは何なのか。わたしは一体どこに来てしまったのか。 16 #hollytk
2015-10-10 01:24:06「いや、でも………」 鏑木君が、何かに気付いて言いかけた言葉を飲み込む。 彼の視線を辿ったわたしは、つつ、と指先を走らせ、自分の唇をなぞる。 知らぬ間にわたしは唇の端を目一杯釣り上げ、大きく大きく、歪な笑みを浮かべていた。 17 #hollytk
2015-10-10 01:26:15ああ、そうか。わたしは、わくわくしているんだ。 すぐそこに近づいている『非日常』に。 「聞かせてください。全部」 「ちょ、ちょっと、九板さん」 わたしは鏑木君に更に詰め寄り、耳まで赤くなった彼の顔を覗き込む。息のかかる距離で、彼の瞳にわたしの顔が映る。 18 #hollytk
2015-10-10 01:28:04そこにいたのは毎朝鏡の中にいるつまらなさそうな顔をした女子高生ではなく、目をぎらぎらと輝かせた知らない女の子だった。 「わ、分かった、分かった。全部話すから、その……」 「なんですか?」 鏑木君は俯き、チラチラと視線を落とす。 「は、離れて……当たってる」 19 #hollytk
2015-10-10 01:30:32視線を下げると飾り気のない下着に包まれた二つの膨らみが、鏑木君の広い胸板に押し付けられていた。 「あー……ごめんなさい」 私はひょいと二、三歩下がり、彼から離れる。 言い訳させてもらうと、押し当てているつもりは無かった。 「いや、その、いいんだけど……」 20 #hollytk
2015-10-10 01:32:19ゴニョゴニョとなにやら呟く鏑木君を尻目にバスタオルを拾い上げ、軽く羽織る。 「さて、日が沈むまで聞かせてもらいますよ?」 女の子の下着姿は、安くないのだ。なんてね。 「この町について。知ってる事を、全て。嘘は無しですよ?」 21 #hollytk
2015-10-10 01:34:19[町]住宅地に足を踏み入れた途端、通りの向こうから乗用車が君を目がけ勢いよく走ってきた。《異形1つ以下なら保護される【魂+1】異形2つ以上で轢死【魂-2/異形『半透明(探索+3、力-3)』を入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk
2015-10-10 01:36:53