野田篤司さんの、深宇宙探査なら種子島が欧州やSPACE-Xより有利だよという話

2015年11月24日。日本で初めて外国の衛星打ち上げを受注したH2A29号機は、無事、衛星の軌道投入に成功しました。それにちなんでの野田篤司さんの一連のtweetをまとめました。 日本のロケットは高コストで、種子島からの打ち上げは経済的に不利といわれますが、それは曖昧な議論で、実際は衛星をどういう軌道に投入するかで変わってきます。 低軌道や静止軌道は確かに種子島は不利だけど、火星や金星など他の天体にいくなら断然種子島が有利。まあ、深宇宙が商業的にたくさん需要が出るまでには、まだしばらく時間がかかりそうですがw
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野田篤司 @madnoda

これだけ、衛星分離まで時間のかかると、ドキドキするねえ

2015-11-24 18:09:28
野田篤司 @madnoda

NHKのニュース、 なんか誤解を山ほど受けそうな説明だったなあ (たぶん、誰一人、原理を理解できていないのであろう)

2015-11-24 19:09:49
野田篤司 @madnoda

一応、マジに説明しよう 種子島からのロケットで静止衛星を打上げるのは、軌道が種子島の緯度30度傾いた楕円のトランスファー軌道から赤道面にするために衛星に燃料が余計にかかる。これは、ほぼ赤道上に発射点があるヨーロッパ(アリアンロケット)に比較しての話であるが(続く

2015-11-24 19:45:39
野田篤司 @madnoda

それなら、衛星に余計な燃料を使わせないように、ロケットを使って30度傾いている軌道面を赤道に合わせれば良い。赤道面と30度傾いたトランスファーが交わるの近地点と遠地点で、どちらかでロケットを噴射すれば良い(続く

2015-11-24 19:46:11
野田篤司 @madnoda

SF好きなら、「軌道制御は高度が低ければ低いほど良い」と言うのを知っているかと思うが、これはあくまで「軌道面内制御」つまり「軌道の持つエネルギー(位置エネルギーと運動エネルギーの総和)を変化させる時」だけ(続く

2015-11-24 19:46:42
野田篤司 @madnoda

軌道面制御の場合、逆に遠地点の方が有利だ。例えば、トランスファー軌道の近地点で30度の軌道面制御するには約5000m/sものΔVが必要だが、遠地点なら約800m/sのΔVで済む(続く

2015-11-24 19:47:17
野田篤司 @madnoda

問題は近地点での赤道との交差は打上げ後20分だが、遠地点に行くにはトランスファー軌道の周期の半分の約5時間もかかること 従来のH2Aは、打上げ後2時間くらいまでしか制御コンピュータの電源などが持たなかった。今回のH2Aは5時間もつよう改良し遠地点で二段目の再々着火できる(続く

2015-11-24 19:48:27
野田篤司 @madnoda

なお、厳密には、今回のH2Aは、遠地点で軌道面を30度変えて赤道に合わせているのではなく、少し足りない。足りない分、近地点高度を上げるようにして、最終的にはアリアンロケットで打上げた場合と同じ衛星側燃料で済むように帳尻を合わせている。

2015-11-24 19:48:46
野田篤司 @madnoda

私も動画配信を見始めたのだが、少なくともNHKの説明よりは正しい

2015-11-24 20:09:24
野田篤司 @madnoda

ニコ生で「種子島はロケット発射点として、赤道直下のアリアンに比べて駄目じゃん」と言うような書き込みがあるけど、あくまでも不利なのは静止軌道だけ 火星や木星、金星など惑星や、小惑星に行くには、種子島の方が圧倒的に有利

2015-11-24 20:14:13
野田篤司 @madnoda

日本のロケットは、SPACE Xに比べると高いかもしれないが、それは低軌道打上げの話。H2Aは液酸液水エンジンなので遠くに行くほど有利 赤道に発射点のあるヨーロッパに比べ静止軌道は不利。だが、惑星間なら逆に有利 不利な条件で勝負しないで、有利な深宇宙(惑星間)で勝負すれば良いのに

2015-11-24 20:23:50
野田篤司 @madnoda

なぜ、種子島打上げの方が赤道直下のアリアン打上げよりも、惑星間軌道に有利か 例えば、火星や木星へのホーマン軌道を考える。 地球引力圏からの離脱の後は、太陽に対して、地球の公転軌道の接線方向に増速しなければならない。(金星などの内惑星へには接線方向に減速する) (続く

2015-11-25 21:07:37
野田篤司 @madnoda

最も効率的なホーマン軌道投入は、可能な限り低い高度の近地点で噴射し、双曲線を描いて地球から離れるようにする。この場合、盃のような形状の軌道なので、近地点から180度反対側では無く、120度とかの角度の方向に飛んでいく(この角度は近地点高度や地球からの離脱速度で変化する) (続く

2015-11-25 21:08:46
野田篤司 @madnoda

いずれにしろ、双曲線は地球中心を通る面に沿っている。この軌道面が重要である。 赤道直下の打ち上げの場合、最も効率的な東向きの打ち上げの軌道面は赤道面と一致する(これを変えるのは不可能ではないが、燃料的に不利である) (続く

2015-11-25 21:09:26
野田篤司 @madnoda

夏至と冬至の場合、赤道面は、地球の公転軌道の接線を含む。しかし、それ以外の時期だと絶対に赤道面は、公転軌道の接線を含まない。 一方、種子島からの最も効率的な東向きの打ち上げは、種子島の緯度(ここでは30度とする)だけ赤道から傾いた軌道面になる。(続く

2015-11-25 21:09:56
野田篤司 @madnoda

ただし、赤道面から30度傾いた面は、地軸周りに360度回ったように存在する。打上げ時間の種子島と地心を通る赤道面から30度傾いた面になる。 夏至と冬至に関わらず、年間を通じて、地球の公転軌道の接線を含む軌道面に打上げる事が、1日に2回は打上げる時間がある。(続く

2015-11-25 21:10:22
野田篤司 @madnoda

これは、地軸の傾き23.5度より大きい緯度の打上げ射点であれば、1日2回ある。 さて、火星や木星へのホーマン軌道の場合、夏至と冬至に打上げれば、それで良いと言うものでは無い。(続く

2015-11-25 21:10:47
野田篤司 @madnoda

目的の惑星がホーマン軌道の遠日点に無ければいけないので、火星の場合、2年2カ月弱に一回、木星の場合1年1カ月に一回しか打上げのチャンスがない。これが偶然、夏至と冬至に一致しなければ赤道直下は発射点からは効率の良い打上げはできない。勿論、夏至と冬至に一致する偶然は確率が小さい(続く

2015-11-25 21:11:42
野田篤司 @madnoda

種子島からなら、どんな時期であっても、必ず1日2回の発射のチャンスがある。 まず、1日2回のチャンスに地球の公転軌道の接線を含む軌道面に打上げる。この時、直接、双曲線に入れるのではなく、一度可能な限り低い円軌道に入れる。それは、必ずしも種子島ば理想的な双曲線の近地点ではないか(続

2015-11-25 21:12:06
野田篤司 @madnoda

低い円軌道に投入された第二段ロケットは、地球から離脱する方向の120度とか手前のところまで慣性飛行する。そこで二段エンジンを再着火し、双曲線軌道となり、地球引力圏を離脱し、ホーマン軌道で目的の惑星へ向かう。(続く

2015-11-25 21:12:34
野田篤司 @madnoda

低い円軌道に投入されてから、理想的な双曲線軌道の近地点に行くまで、最大で円軌道の周期約1時間30分待つこともある。打上げから最初の円軌道投入まで20分とすると、ロケットの最後の噴射終了まで1時間50分もかかることになる(続く

2015-11-25 21:13:00
野田篤司 @madnoda

これが、はやぶさ2の打上げ後、衛星分離まで1時間47分もかかった理由でもある。

2015-11-25 21:13:09
野田篤司 @madnoda

(まあ、はやぶさ2の場合、ホーマン軌道じゃないから、ちょっと違うけど、その辺は許して・・・)

2015-11-25 21:22:27
野田篤司 @madnoda

地球引力圏から離脱する双曲線の盃のような形状の軌道で、近地点から180度反対側では無く、120度とかの角度の方向に飛んでいくと書いたが、計算してみた 近地点高度を250kmとすると、火星へのホーマン軌道なら151度、木星へなら116度である

2015-11-26 19:59:16