- IngaSakimori
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なぜか続いてしまった秋津洲バレンタインの後のお話である 『秋津洲ホワイトデー』 はじまりまーす #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:34:00「ふっふふーん♪ かもかもか~も~♪ 大艇ちゃんか~も~♪」 トラック泊地。提督の執務室内に設けられたミニキッチンから、小気味よい鼻歌が響いていた。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:34:16ミニキッチンには一人の飛行艇母艦が立っている。 そして、ぴーぴーと音を立てるヤカンには沸騰したお湯が。さらにその隣には封を破られたインスタント焼きそばがあった。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:35:09「とう~! 秋津洲流インスタント焼きそば術!」 熱湯がごぼごぼと注がれた焼きそばのカップに、秋津洲はソースとかやくを躊躇なく投入した。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:35:26「ふっふふーん♪ 大艇ちゃんと~秋津洲で~かもかも~♪」 うっすら茶色の液体に何の疑問も感じずに、ふたたび鼻歌をうたいながら待つこと数分。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:35:41「できあがりかも!!」 秋津洲は焼きそばのお湯をシンクに捨て始める。繰り返すようだが、うっすら茶色の液体に疑問を感じることはない。 そして、当然のように急速に熱せられたシンクは、ぺこん!!と音を立てた。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:36:01「ひゃあ! かも!!」 秋津洲の両手から焼きそばカップがおちる。 まるで狙ったようにひっくり返った焼きそばカップからは、半分以上の麺がぶちまけられていた。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:37:07「あわっ…や、やってしまったかも…さ、3秒ルー…あつっ! 火傷しちゃうかも~!」 素手で焼きそばをカップに戻そうとして、悲鳴をあげる秋津洲。 右手が勝手に水道の蛇口をひねる。シンクにそそがれた大量の冷水は、こぼれた焼きそばを排水口へと洗い流していく……。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:37:58「ううう、ちょっとしかカップに残らなかったかも……」 カロリーにして数分の一以下となってしまった、お昼のカップ焼きそばと共に、がっくり肩を落とす秋津洲。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:38:11「………………」 「あっ、提督? ううう、ごめんなさいかも~!!」 そんな彼女を見守っていた提督の視線に気づいて、秋津洲はぺこりと頭を下げた。 なぜか感極まったように涙ぐんでいる提督を不思議に思いながら、彼女はなんとか罪滅ぼしをしたいと考える。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:38:38「このたびは本当にごめんなさいかもなので、何か提督に……あっ、そうだ! もうすぐホワイトデーっていうのがあるって、秋津洲聞いたかも!!」 鎮守府最優秀艦にして、唯一の飛行艇母艦である秋津洲は知っている。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:39:24なんでも、そのイベントはバレンタインデーがチョコを食べるものであるのに対して、クッキーやキャンディなど甘いお菓子を食べるらしい。 そう、秋津洲は知っている。何か物を食う。ただそれだけを。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:39:41「でも、トラックの酒保はしばらくお菓子を切らしてて、入荷に時間がかかるって聞いたかも……困ったかも、どうすれば……」 「お任せ下さい!!」 その時、ばたんという音と共に執務室の扉が開き、大声が響いた。提督が顔を引きつらせる。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:39:57それは悪の声。毒の音。 メガネをきらりーん☆と光らせた軽巡洋艦が1隻、執務室の前に立っている。一応、最新鋭ではあるかもしれないが、その腹肉はだぶついてはいなかった。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:40:21「秋津洲さん……ありますよ、ホワイトデーのクッキーを手に入れる方法が!」 「本当かも!?」 秋津洲は目を輝かせた。#秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:40:47大淀はバレンタインデーの時も、チョコをゲットする手助けをしてくれた。きっと今回もそうに違いないと。 そして提督は絶望に頭を抱える。この毒婦は、また内地からの連絡業務にかこつけて、恐ろしく邪悪なことを企んでいるに違いないと。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:40:58「まず、この地図をごらんください!」 「えっと……これってヨーロッパかも?」 「ヨーロッパからさらにちょっと離れたここ! アイスランドのハヴァルフィヨルド! なんと先日、深海棲艦のクッキー集積地が建設されていることが判明したのです!」 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:41:30「なんてことかも! トラックでも甘いものが不足してるのに、クッキーをこんなところで独り占めかも! ヨーロッパの人達は困っているかも! 許せないかも!」 「しかしあまりにも遠く不便な土地……欧州の神聖第三帝国海軍も手が出せずに困っていると聞きます」 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:42:00「我が海軍にとっても、これほどの遠隔地では……」 「そんなことはないかも!」 ワシを殺せる者があるか。ここにいるぞ。 そんなときの武将のような声で、秋津洲は胸を叩いた。毒婦は得たり、と口元を笑わせた。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:42:24「秋津洲と大艇ちゃんに不可能はないかも! 地球上のどんなところでもひとっ飛びかも!」 「さすが秋津洲さんです!」 「当然かも!」 そこで慌てて提督は口を挟んだ。今度はバレンタインデーの時のように、南米へ移動するようにはいかない。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:42:53大西洋には深海棲艦の有力な艦隊が出没しているし、天候もひどく荒れているらしい。 また、アフリカや地中海沿岸には、二式大艇のような大型飛行艇を整備できる根拠地もない。 つまり、移動は不可能だ、と。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:43:09「お任せください!」 頼んでいないのに、そこで毒婦はもう一枚の地図を広げた。それは北極を中心にした、いささか特殊な地図だった。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:43:20「秋津洲さん……北回りルートというものを知っていますか?」 「なにそれ? 知らないかも?」 「日本から欧州に飛ぶのは、ソ連上空を突っ切るのが最短ですが……あの国はなかなか許可を出してくれませんでね」 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:43:41「通常は、アジアをぐるりと迂回する南回りルートを使うのですが、最近はこういうルートが開拓されたのです!」 「おお~! かも!!」 驚く秋津洲を前に、大淀は手にした赤鉛筆で線を書いてみせる。 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:44:16「まず第一に日本国内からアラスカへ飛びます! 目指すは空港も備えた港湾都市のアンカレッジ! ソ連の領海を避けて、ざっと距離6000km!」 「余裕かも! 港湾都市なら大艇ちゃんも着水できるはずかも!」 #秋津洲ホワイトデー
2016-03-11 21:44:45