【突発SS】秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

なぜか続いてしまった秋津洲バレンタインの後のお話である 『秋津洲ホワイトデー』 はじまりまーす　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「ふっふふーん♪　かもかもか～も～♪　大艇ちゃんか～も～♪」 　トラック泊地。提督の執務室内に設けられたミニキッチンから、小気味よい鼻歌が響いていた。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

ミニキッチンには一人の飛行艇母艦が立っている。 そして、ぴーぴーと音を立てるヤカンには沸騰したお湯が。さらにその隣には封を破られたインスタント焼きそばがあった。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「とう～！　秋津洲流インスタント焼きそば術！」 　熱湯がごぼごぼと注がれた焼きそばのカップに、秋津洲はソースとかやくを躊躇なく投入した。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「ふっふふーん♪　大艇ちゃんと～秋津洲で～かもかも～♪」 　うっすら茶色の液体に何の疑問も感じずに、ふたたび鼻歌をうたいながら待つこと数分。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「できあがりかも！！」 　秋津洲は焼きそばのお湯をシンクに捨て始める。繰り返すようだが、うっすら茶色の液体に疑問を感じることはない。 　そして、当然のように急速に熱せられたシンクは、ぺこん！！と音を立てた。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「ひゃあ！　かも！！」 　秋津洲の両手から焼きそばカップがおちる。 　まるで狙ったようにひっくり返った焼きそばカップからは、半分以上の麺がぶちまけられていた。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「あわっ…や、やってしまったかも…さ、３秒ルー…あつっ！　火傷しちゃうかも～！」 　素手で焼きそばをカップに戻そうとして、悲鳴をあげる秋津洲。 　右手が勝手に水道の蛇口をひねる。シンクにそそがれた大量の冷水は、こぼれた焼きそばを排水口へと洗い流していく……。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「ううう、ちょっとしかカップに残らなかったかも……」 　カロリーにして数分の一以下となってしまった、お昼のカップ焼きそばと共に、がっくり肩を落とす秋津洲。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「………………」 「あっ、提督？　ううう、ごめんなさいかも～！！」 　そんな彼女を見守っていた提督の視線に気づいて、秋津洲はぺこりと頭を下げた。 　なぜか感極まったように涙ぐんでいる提督を不思議に思いながら、彼女はなんとか罪滅ぼしをしたいと考える。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「このたびは本当にごめんなさいかもなので、何か提督に……あっ、そうだ！　 　もうすぐホワイトデーっていうのがあるって、秋津洲聞いたかも！！」 　鎮守府最優秀艦にして、唯一の飛行艇母艦である秋津洲は知っている。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

なんでも、そのイベントはバレンタインデーがチョコを食べるものであるのに対して、クッキーやキャンディなど甘いお菓子を食べるらしい。 　そう、秋津洲は知っている。何か物を食う。ただそれだけを。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「でも、トラックの酒保はしばらくお菓子を切らしてて、入荷に時間がかかるって聞いたかも……困ったかも、どうすれば……」 「お任せ下さい！！」 　その時、ばたんという音と共に執務室の扉が開き、大声が響いた。提督が顔を引きつらせる。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

それは悪の声。毒の音。 　メガネをきらりーん☆と光らせた軽巡洋艦が１隻、執務室の前に立っている。一応、最新鋭ではあるかもしれないが、その腹肉はだぶついてはいなかった。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「秋津洲さん……ありますよ、ホワイトデーのクッキーを手に入れる方法が！」 「本当かも！？」 　秋津洲は目を輝かせた。#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

大淀はバレンタインデーの時も、チョコをゲットする手助けをしてくれた。きっと今回もそうに違いないと。 そして提督は絶望に頭を抱える。この毒婦は、また内地からの連絡業務にかこつけて、恐ろしく邪悪なことを企んでいるに違いないと。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「まず、この地図をごらんください！」 「えっと……これってヨーロッパかも？」 「ヨーロッパからさらにちょっと離れたここ！ 　アイスランドのハヴァルフィヨルド！　なんと先日、深海棲艦のクッキー集積地が建設されていることが判明したのです！」　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「なんてことかも！　トラックでも甘いものが不足してるのに、クッキーをこんなところで独り占めかも！ 　ヨーロッパの人達は困っているかも！　許せないかも！」 「しかしあまりにも遠く不便な土地……欧州の神聖第三帝国海軍も手が出せずに困っていると聞きます」　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「我が海軍にとっても、これほどの遠隔地では……」 「そんなことはないかも！」 　ワシを殺せる者があるか。ここにいるぞ。 　そんなときの武将のような声で、秋津洲は胸を叩いた。毒婦は得たり、と口元を笑わせた。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「秋津洲と大艇ちゃんに不可能はないかも！　地球上のどんなところでもひとっ飛びかも！」 「さすが秋津洲さんです！」 「当然かも！」 　そこで慌てて提督は口を挟んだ。今度はバレンタインデーの時のように、南米へ移動するようにはいかない。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

大西洋には深海棲艦の有力な艦隊が出没しているし、天候もひどく荒れているらしい。 　また、アフリカや地中海沿岸には、二式大艇のような大型飛行艇を整備できる根拠地もない。 　つまり、移動は不可能だ、と。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「お任せください！」 　頼んでいないのに、そこで毒婦はもう一枚の地図を広げた。それは北極を中心にした、いささか特殊な地図だった。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「秋津洲さん……北回りルートというものを知っていますか？」 「なにそれ？　知らないかも？」 「日本から欧州に飛ぶのは、ソ連上空を突っ切るのが最短ですが……あの国はなかなか許可を出してくれませんでね」　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「通常は、アジアをぐるりと迂回する南回りルートを使うのですが、最近はこういうルートが開拓されたのです！」 「おお～！　かも！！」 　驚く秋津洲を前に、大淀は手にした赤鉛筆で線を書いてみせる。　#秋津洲ホワイトデー

IngaSakimori/人工知能戦争2035 @IngaSakimori

「まず第一に日本国内からアラスカへ飛びます！ 　目指すは空港も備えた港湾都市のアンカレッジ！　ソ連の領海を避けて、ざっと距離6000km！」 「余裕かも！　港湾都市なら大艇ちゃんも着水できるはずかも！」　#秋津洲ホワイトデー