被曝と甲状腺癌について分かっていることと分かっていないこと

放射性ヨウ素による被曝の影響と甲状腺癌についてFlying Zebraさんのツイートをまとめました。
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Flying Zebra @f_zebra

原子力事故の影響による小児甲状腺癌の増加はチェルノブイリ4号機事故でも確認されたものであり、福島で同様の事態が起きることを心配する人が多いのは無理からぬことだろう。ただ、将来癌になるかもしれない、という恐怖は非常にセンシティブなものであり、慎重に扱う必要がある。

2016-03-07 22:45:50
Flying Zebra @f_zebra

現実離れした「恐怖」を煽って当事者に呪いを掛けるような言動は厳に慎むべきだが、一方で根拠なく「安全」を主張し、心配している当事者を嘲るような言動も当事者を苦しめるし、不安、風評の解消には役立たない。分かっていること、分かっていないことを明らかにし、冷静に対応することが求められる。

2016-03-07 22:46:38
Flying Zebra @f_zebra

放射性のヨウ素131を吸入、経口などで摂取すると甲状腺に選択的に取り込まれ、その量が多ければ量(甲状腺等価線量)に応じて甲状腺癌のリスクが高まることが分かっている。チェルノブイリの経験からは、等価線量(実効線量とは異なる)で200mSv以上で有意な差が見られた。

2016-03-07 22:48:04
Flying Zebra @f_zebra

等価線量100mSv未満の甲状腺被曝で影響があるのかないのかは「分かっていない」。ただし、線量が高い方がリスクも高いことは「分かっている」ので、逆に言えば線量が100mSv未満であれば、リスクも等価線量100mSv被曝時のリスクより低いことは「分かっている」。

2016-03-07 22:49:38
Flying Zebra @f_zebra

ヨウ素131の半減期は約8日間なので、今となっては事故直後の初期にどれだけ被曝したかを直接測ることはできない。このことが多くの人を不安にさせているのだろう。ただ、直接測ることはできなくても統計的に推測することはできて、その結果も公表されている。

2016-03-07 22:50:39
Flying Zebra @f_zebra

推測の元になっているのは、事故の2~3週間後、2011年3/26から3/30にかけていわき市、川俣町、飯舘村で児童1080人を対象に行われた甲状腺スクリーニング調査だ。対象は、SPEEDI により甲状腺等価線量が高くなる可能性があると試算された地域が選定された。

2016-03-07 22:51:41
Flying Zebra @f_zebra

事故で放出されたヨウ素131を摂取した可能性のある人を対象に甲状腺等価線量を実測したデータはこれがほぼ唯一で、再調査は不可能なのでこれからもデータが追加されることはない。この結果と評価の妥当性については以下の田崎先生のページに詳しい。gakushuin.ac.jp/~881791/housha…

2016-03-07 22:53:56
Flying Zebra @f_zebra

チェルノブイリ4号機の事故では牧草を通して牛乳が汚染され、摂取制限が行われなかったために多くの子供が長期間経口摂取による被曝を強いられたと考えられる。福島ではこの経験から事故後直ちに牛乳、水、葉物野菜の摂取制限が行われたため、経口摂取のほとんどを防ぐことができた可能性が高い。

2016-03-07 22:56:05
Flying Zebra @f_zebra

加えて、慢性的に甲状腺の(放射性でない)ヨウ素が欠乏気味のウクライナ内陸部と異なり、日本では海草(特に昆布)から日常的に多くのヨウ素を摂取していて、甲状腺のヨウ素が飽和気味であることが知られていて、最近の研究でも確認されている。

2016-03-07 22:57:25
Flying Zebra @f_zebra

これは同じ量の放射性ヨウ素を摂取しても甲状腺に蓄積するヨウ素131がその分少なくなるということで、安定ヨウ素剤を服用するのと同じ結果となる。結果論ではあるが、福島では安定ヨウ素剤の服用は必要なかった(メリットよりデメリットの方が多かった)ことになる。

2016-03-07 22:58:32
Flying Zebra @f_zebra

チェルノブイリ事故での経験と、実測のスクリーニング調査の結果から、統計的に検知できるような甲状腺癌の増加が起きないであろうことは検査の実施前から予測されていた。この点は誤解が多いところだが、甲状腺癌の有意な増加がないのは不自然なことではなく、むしろ増える方が不思議なのだ。

2016-03-07 23:00:45
Flying Zebra @f_zebra

もちろん予測は予測に過ぎないので、実際に県内全ての子供を対象に大規模な検査を行って確かめることには(一定のリスクや痛みを伴う生検の是非など議論はあるものの、)それなりの意味がある。スクリーニング効果で「発見率」が上がることについても韓国の先行例があり、予測通りだ。

2016-03-07 23:03:00
Flying Zebra @f_zebra

これまでのところ事前の予測を覆すような結果は出ておらず、このままいけば最後まで事故の影響による甲状腺癌の増加は確認できないまま終わる可能性が高い。これは事故による発症が全くないという意味ではなく、事故とは無関係の発症と区別できず、増えたのかどうかは分からないという意味だ。

2016-03-07 23:07:26
Flying Zebra @f_zebra

検査に費やされるコストに見合った意義があるかどうかはさておき、子供たちの健康を願うのであれば事前の予想に反した結果が何も出ないまま終わることは誰にとっても喜ばしいことのはずだ。それなのに、子供たちの不幸を願っているとしか思えない人たちがいるというのは残念で、悲しいことだ。

2016-03-07 23:11:35