内部被曝のリスク評価と福島・小児甲状腺癌増加が心配無用な訳
buvery氏による「内部被ばくのリスク評価について」レビュー

田崎先生 @HalTasaki_Sdot の内部被曝評価の文章を読んでおいてもらいたいという話だったので、レビューを書きます。 内部被曝評価 http://bit.ly/nWqMzp
2011-08-11 08:49:15
この田崎先生の文章で、すばらしいところは、『シーベルトはガン確率のリスク指標である』と見抜いているところにあります。数ある物理クラスタの人たちの中でも、ここまで明快に表現している人は一人だけです。 内部被曝評価 http://bit.ly/nWqMzp
2011-08-11 08:49:34
天気で言えば、気温や、湿度、風速などは物理量です。そういう物理量から計算してくる不快指数とか、体感温度は厳密な意味での物理量ではなく、人間への影響を考えて、それを一つの数値で表そうとしているものです。喩えて言えば、気温や湿度がグレイで、不快指数はシーベルトです。
2011-08-11 08:50:10
物理クラスタの人だと、まさかそんな適当なものを計算しているとは思いにもよらないのかもしれません。シーベルトは厳密な意味での物理量ではありません。私が内部被曝のベクレルからシーベルトへ換算するときの変換係数が地雷原だから踏み込みたくない、と言っていたのは、これが理由です。
2011-08-11 08:50:24
この文章はその、ややこしい、論理の地雷原のようなところが、どういう論理構成になっているのかを高校生くらいには分かるように書いてあります。 内部被曝評価 http://bit.ly/nWqMzp
2011-08-11 08:50:44
また、イギリスの内部被曝評価委員会の最終報告書、CERRIE http://bit.ly/qMFmgA http://bit.ly/pvswVv と食品安全委員会のレビュー http://bit.ly/qdGGIz に着目していることも、田崎先生に特徴的です。
2011-08-11 08:51:08
というのは、この英文で160ページ、日本語で230ページの資料は、両方とも、『ICRPからバズビー師匠まで』幅広く検討しているものだからです。
2011-08-11 08:51:20
田崎先生の文章を簡単に要約すれば、リスク計算の基本はLNTと、広島長崎の被爆者の生涯調査(Life Span Study = LSS)による。摂取量(=ベクレル)から、核種によってどのように臓器に貯留するのかをモデルや実測を使って計算し、
2011-08-11 08:51:53
放射性物質が出て行くまでにどのくらい各臓器が被曝するかを放射線の種類を考慮した上で計算します(=equivalent dose 等価線量。equivalence doseというのは誤植)。
2011-08-11 08:52:08
次に、各臓器での等価線量から、各臓器での癌の危険度を考慮して足し合わせて、全体での被曝を計算します(=effective dose 実効線量)。この足し合わせは、各臓器での癌の確率が独立であることと、LNTによる線形性に依存しています。
2011-08-11 08:52:21
それをLSSと照らし合わせて最終的に総合判断している、ということになります。詳しくは、田崎先生の文章を読んで下さい。内部被曝評価 http://bit.ly/nWqMzp
2011-08-11 08:52:40
実は、LNTとLSSで判断しているとは、ICRPの文書では強調されていないのですが、シーベルトの計算の仕方を見ると、結局そういうことになります。付け加えておきますが、『ICRPが内部被曝を考慮していない』とか、
2011-08-11 08:52:56
『放射線の種類による違いを考慮していない』とか、琉球大学の矢ケ崎さんとか、その話を真に受けた神保さんが繰り返していますが、それは、全くのデタラメで、一応それなりに根拠のある考えをもってリスクを計算しようとしています。
2011-08-11 08:53:04
ここで、一応留意すべき事は、シーベルトは一般には癌だけの影響を示している訳ではない、ということです。簡単に言えば、250mSvを越えると直接影響がでて、1Svで人が死に始め、7Svで全員死にます。こういう直接影響が出るような高線量もシーベルトで表しています。
2011-08-11 08:53:31
しかし、現実に高線量被曝を起こす可能性があるのは、特殊な例で(原発作業員など)、一般公衆は今回の事故でも、そのような高線量とは幸い無縁です。内部被曝で直接影響が出たのは、私の知っている限り、私が先日書いたゴイアニア事故だけです。 http://bit.ly/pQEQj5
2011-08-11 08:53:51
チェルノブイリでも直接影響は外部被曝です。ですので、私たちにとって意味のある範囲では、『シーベルトは癌のリスク指標』であると言って良いです。
2011-08-11 08:54:00
高線量、短時間被曝でのLSSを、こういう低線量での被曝のリスク計算に使って良いのか、というのはもっともな疑問です。しかし、低線量で薄く長時間に被曝することは、様々な実験で被曝効果が低いことが分かっていますから、実際にはリスクが過大に評価されている可能性があります。
2011-08-11 08:54:13
実際、ICRPは低線量、低線量率での放射線の効果が低いことの反映として、DDREF (a dose dose rate effectiveness factor=2、つまり効果が半分だということ)を、2-3Gyの照射の結果を0.2Gy以下、線量率6mGy/h以下の被曝に適用する時
2011-08-11 08:54:57
(私たちの被曝は全てこれに当てはまります)勧告していますが(ICRP 99, ICRP 103)、桁数が変わる訳ではないので、ここに入れる必要はないと思います。
2011-08-11 08:55:17
(ちなみに、ICRPがDDREFの話で言っている『低線量率』は『6mGy/h』で、『6µGy/h』ではありません。今、住むことが許されている地域は、6µGy/hすらでていないでしょう。)
2011-08-11 08:55:42
ECRRの、『ストロンチウム90の内部被曝はICRPの300倍』というものは、『ストロンチウム90がDNAに結合するから10倍』と、『Second Event Theoryにより、ストロンチウム90がイットリウム90にβ崩壊し、イットリウム90がさらにβ崩壊するので30倍』
2011-08-11 08:57:05
を掛け合わせたものです。しかし、ストロンチウム90がDNAに結合する実験的根拠はない、Second Event Theoryを支持する実験的根拠はない、さらに彼ら自身の動態モデルも実測もない、状態です。ICRPはこれら全てそろえています。ECRRが見劣りするのはしかたがない。
2011-08-11 08:58:13
別の例で、児玉先生も出していた、昔肝造影に使われていたトリウム232による被曝による肝臓がんがあります。α線核種であるトリウム232はRBE=20というα線の加重係数(α線の核種は放射線量の20倍の効果があるとみなすこと)で、LSSとだいたい一致するので、
2011-08-11 08:58:34
LSSを基準にすることは一定の理由があります。(ただし、トリウム232の被曝でおこる白血病の場合はRBE=1~2くらいだという話です。)
2011-08-11 08:59:16