映画版『ちはやふる <上の句>』レビュー(cdbさん)

cdbさんによる、映画『ちはやふる<上の句>』(小泉徳宏監督・脚本)のレビューです
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『特技は英語・水泳・乗馬・殺陣・空手・レスリング・体操・水球・スキー・ピアノ・フルート。飛び級でビバリーヒルズ・ハイスクールに通い、同校の先輩にはレオナルド・ディカプリオやアンジェリーナ・ジョリーがいる』何ですかこれは。wikiからコピペしただけで140字埋まるじゃないですか。

2016-03-25 17:08:39
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でもそんな真剣佑くんが演じるからこそ、綿谷新には才能のオーラが立ち上っています。上の句での新の出番は少ないんだけど、その存在感と天才感はハンパではない。 才能という魔法を通じてちはやと深くつながっている新、そして太一の三人の物語は4月公開の『下の句』で語られるはず。楽しみです。

2016-03-25 17:08:59
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『ちはやふる』ここが素晴らしい④ 小泉徳宏監督の演出が素晴らしい いや本当これには脱帽で、31巻もある漫画原作を2時間の映画にするって非常に困難なんだけど、見事に再構築してるんですよね。たとえばクライマックスの運命戦なんて3つくらいのエピソードを合成して新しいものを作っている。

2016-03-25 17:09:26
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小泉徳宏監督の演出の素晴らしさを語るために一個だけネタバレすると、映画の始まりで屋上に閉め出された太一が助けを呼んでも誰も聞こえない、って所に千早が飛び込んでくる出会いの場面。この1シーンだけで千早の耳の良さと太一との絆、屋上に全速力で駆け上がってくる千早の行動力が表現されてる

2016-03-25 17:09:49
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これっていわば映画学校で教えるような基礎と言えば基礎なのかもしれないけど、基礎を徹底的に洗練すると、映画はこんなにも一つの場面で多くのことを雄弁に説明できる。『ちはやふる』の演出はまるで五七五七七に多くの情景を詰め込む和歌のように、美しいリズムで大胆な省略と繊細な描写が重ねられる

2016-03-25 17:10:12
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小泉徳宏監督、明らかに原作をめっちゃ読み込んで作っていて、単に原作をなぞるんじゃなくて、原作が表現したいものは何かという本質を捉えた上で、本質を外さず大胆に変えてるから、結構変えてるのに破壊感が少ない。台詞は変わっても、登場人物の人格は1ミリも変えていない。見事だと思う。

2016-03-25 17:10:54
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正直「このイケメン監督、どうせ小洒落た恋愛映画にしちゃうんじゃないの?」と疑ってたんですが脱帽。非凡な才能を備えた、誠実で『熱い』監督だと思う。 絶賛してますけど「慶応出身でイケメンで映画監督とかもう死ねよ」という言葉を飲み込んで絶賛せざるを得ない。それほど素晴らしい。死にたい。

2016-03-25 17:11:16

⑤机君、⑥ヒョロ君、⑦子役たち

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『ちはやふる』ここが素晴らしい⑤ 机君が浅田彰に似ている いやまあ、『ちはやふる』の広瀬すず世代で浅田彰知ってる子なんて一人もいないかも知れませんけど、似てる。浅田彰物語が映画化されたら主演不可避なレベル。されないけど。 pic.twitter.com/ZlCr0yTEkc

2016-03-25 17:12:20
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『ちはやふる』ここが素晴らしい⑥ ヒョロ君がヒョロ君に似ている これはもう説明不要というか、似すぎ。僕も銀幕に彼が登場した瞬間「世界よ、これが日本の誇るTOKUSATSUだ」と思ってしまいましたが、素顔です。素でヒョロくんなのです pic.twitter.com/vEyCqSTwTs

2016-03-25 17:13:02
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ブログでも初対面の原作者・末次由紀先生に 「ヒョロくんだ!ヒョロくんが生きている!」 とまるでそれは千早のような天真爛漫さではしゃがれたと書く坂口涼太郎氏。無理もありません。ナチュラルボーンヒョロくん。ボーントゥービーヒョロくん。 ameblo.jp/ryotaro-sakagu…

2016-03-25 17:13:41
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『ちはやふる』ここが素晴らしい⑦ 小学生時代を演じる子役が素晴らしい 映画の持っている「運」みたいなものを感じたのがここで、子役がそれぞれ三人に似てるんだよね。普通こんな面影のある子役ってなかなか見つからないと思うんですけど。 pic.twitter.com/WJcl6YhyVY

2016-03-25 17:15:17
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『ちはやふる』の小学生時代のエピソードって量としては少ないんですけど、物凄く重要で絶対に外せないシークエンスなんですよね。あそこに物語の本質があると言っても過言ではないというくらい重要なところで、そこを演じる時に、三人の面影があって、しかも演技の上手い子役が見つかったのがすごい

2016-03-25 17:16:10

⑧原作『ちはやふる』のすばらしさ

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『ちはやふる』ここが素晴らしい⑧ そもそも原作が素晴らしい アニメも実写映画も大評判という希に見るメディアミックスの成功例になった『ちはやふる』だけど、やっぱり土台になる「物語の構造」が原作にあるからこその成功だと思う。少女漫画でありながら、幅広い読者に訴える普遍性を持った作品

2016-03-25 17:16:44
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かるたというのは誰でも知るように幼児の言語教育の教材として使われるゲームの定番で、作品の中でも百人一首という競技は明らかに言語とか学問の隠喩として描かれている面がある。美人の姉に自我を投影するしかなかった小学六年生の千早に、自分自身を語る言葉を教えたのが孤立した少年綿谷新だった。

2016-03-25 17:17:12
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「わたしは野球という言葉を得てそれを話しはじめる。それを語り、生きはじめる。その言葉は野球である」というのは映画「フィールド・オブ・ドリームス」の原作になったアメリカの小説、「シューレス・ジョー」の一節だけれど、綾瀬千早は百人一首という千年前の歌を言語として世界との対話を始める。

2016-03-25 17:17:51
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原作者・末次由紀氏が最も好きな歌と挙げる『逢ひみての 後の心にくらぶれば 昔はものを 思はざりけり』の通り、千早はヘレン・ケラーのように、あるいは姓よりも早く『馬』の一字を書いた坂田三吉のように『ものを思う言葉』を手に入れていく ddnavi.com/dav-contents/2…

2016-03-25 17:18:22
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映画『ちはやふる』のクライマックスにも、試合の真っただ中の千早が歌を言葉として仲間に届ける、決定的で息を飲むほど美しい場面があるのだけど、それは見てのお楽しみ。 本当のことは/歌の中にある いつもなら照れくさくて/言えないことも youtube.com/watch?v=pJanaH…

2016-03-25 17:18:46
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村上春樹がたびたび言及する「総合小説」という概念があって、色々な世界観を1つの作品に詰め込んでそれらを擬似計算するような作品世界のことなんだけど、漫画でもそういう試みの作品はいくつかある。一見限定されたジャンルを描いているようで、小さな雨粒の表面が360度の世界を映すような作品。

2016-03-25 17:19:10
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例えばヤンマガに『湾岸ミッドナイト』という漫画があって、改造車両で首都高をぐるぐる回って決着のつかないレースを繰り返すスピード狂のおっさんや若者を延々と描き続けた漫画なんだけど、そこにはほとんど日本社会のすべてが描き映されている。経済があり、技術があり、世代があり、死がある。

2016-03-25 17:19:39
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『ちはやふる』もそういう意味で、今の時代の少女漫画にとっての総合小説の一つとして描かれている、もしくはそれを試みている作品なのではないかと思う。 原作ではまるで世界のサンプルのように多様なキャラクターが投入され、お互いの価値観をぶつけ合う。その中心に千早と太一、そして新がいる

2016-03-25 17:20:52
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巻を重ねる原作では、育児とキャリアの両立を望む女性選手と、名家に呪縛された天才少女が対決するクイーン戦が描かれ、『普通の男』である真島太一が 「俺が石でできてるとでも思っているのか」と千早を問い詰める。そして名人の座には世界に意味を認めず、ただ才能の強度のみを誇る怪物が君臨する。

2016-03-25 17:21:11
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映画をきっかけに、素晴らしい原作に触れる人がさらに増えるといいなと思います。もう既に累計1500万部のベストセラーコミックに対してこんなことを言うのも何だけど、少女漫画、あるいはふだん漫画自体を読まない人にまで届く長い射程距離を持った作品だと思う。百人一首ブームも来るといいな。

2016-03-25 17:21:27

⑨<下の句>4.29公開の予告が「神」