柿谷浩一先生の『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』考察ツイートまとめ。

2016年1月18日から3月21日まで毎週月曜日21:00 - 21:54に、フジテレビ系の「月9」枠で放送された有村架純・高良健吾主演、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』を考察した柿谷浩一先生(@prince9093)のツイートをまとめました。
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柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑤】物語は3・11を〈跨いだ〉。同じ手法をとった『SUMMER NUDE』の初盤、消えた香澄の存在=生死を案じたように、私達は次回に向け、省筆された5年間を巡り、皆が元気か…様々に思いを巡らし始める。当たり前のようだが、この〈経験〉こそが3・11以後のドラマだ。 #いつ恋

2016-02-15 22:47:02
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑤】片想いについて話す冒頭シーン。音が現代風の言い回しで「未練的なもの」という。彼女の気持ちが〈練〉にまだ届かない象徴みたいにも聞こえた。思えば、彼女の彼の呼び方は「引越屋さん」で、まだはっきり〈練〉と呼べていない。未だ〈練〉に到達しない、未練の残る音の恋…。 #いつ恋

2016-02-15 23:30:47
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑤】かつて作家・井上光晴は原爆前日の長崎の日常を描き、原爆の日を文学的想像力で捉えた(小説『明日』)。練の帰郷も、坂上二郎死去の挿話から3・11の前日と分かる。恋を巡る6人の悲劇、そこに忍び寄る天災の悲劇。多くあっただろう悲劇の重複・連鎖を描出した点は評価だ。 #いつ恋

2016-02-16 02:03:48

2月22日:第6話「衝撃の再会」

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑥】訪ねてきた音と〈目〉も合わせようとしない練、父が「目を見て話してくれた」ことに喜ぶ麻陽。じいちゃん(あるいは故郷)という帰る場を喪った者と、逆に実父に認められその場を獲得する者…。この相反する二者を、巧みに同じ〈派遣〉の仕事に就く者として切り結び描いていた。 #いつ恋

2016-02-22 23:31:05
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑥】3話で、木穂子に練が告白したバス停のベンチ。同じ場所(ベンチの色は剥げていたが)で、昔の木穂子のような身なりをした音が、練のブラックな仕事を検索で知る。以前そこにあった優しく純粋な練の姿が、想像もしない危うい姿に変わっているのを〈ここ〉で知るのは奥深かった。 #いつ恋

2016-02-22 23:51:16
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑥】音と木穂子の再会。それ自体でなく、互いが相手を練と一緒だと思ってきたことが重要。震災とそれ以後の時間、大事な人(練)の側に1人の人間がいるんだ、と二人は思ってきた。それは物語上、恋を巡る顛末だが、人が他者を〈思いやる〉姿として尊く、極めて震災後的でもあった。 #いつ恋

2016-02-23 00:18:00
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑥】前回から今回の「3・11」を挟んだ5年間で物語が描かんとするのは、人間の変化ではなく、冒頭の回想「恋って何?」が象徴するように〈恋の変質〉である。「恋」の意味は変わらざるを得なかった。だが、それに対する自覚や意識が追いつかない。その混乱やズレを描き出した回。 #いつ恋

2016-02-23 00:35:10
柿谷浩一(kaki) @prince9093

リサーチ力不足もあるんだろうけど、月9に関して、坂元裕二への批判・反論が極端に少ない気がするなぁ。ちなみにこの意見(RT)には、多分に大事な問題が含まれていると思う。坂元裕二は同じ様式の中に物語を流し込む。それはいい。何故その様式じゃなきゃいけないかが、時々見えない。

2016-02-29 09:22:58
柿谷浩一(kaki) @prince9093

クランクアップ間近のようですが、瑛太も出ないかなぁ…。『それでも、生きてゆく』→『最高の離婚』で時任三郎(たこ焼屋)が友情出演したように、坂元ワールドというなら突き抜けてやって欲しい。 QT @mituoda: 二話が楽しみだなー。俺は、何話に登場するかなー。(嘘、、 #いつ恋

2016-02-29 09:50:16

2月29日:第7話「明かされる真実 彼に何が起きたのか」

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑦】練のじいちゃんが「臭い臭い駅の便所」で死んだ出来事は、ここまでドラマが重要なモチーフとしてきた、駅での「人身事故」と「舌打ち」を強く喚起していた。2つは全く別物でありながら《駅ー死》というイメージのもと、一人で死にゆく者の〈死〉の重さと悲劇を集約して伝える。 #いつ恋

2016-02-29 22:42:15
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑦】坂元裕二お得意の「手紙」にはもううんざりだったが、今回のレシートは良かった。じいちゃん(死者)が生者へ遺そうとしたメッセージでない点が大事だ。そこに死者の声はない。死者の〈記憶〉を〈記録〉から掘り起こす…死者に近づき触れるようにして。凄く大事なシーンだった。 #いつ恋

2016-02-29 22:56:41
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑦】レシートから紡いだのは、音の作るいわば〈物語〉。そう考えると、このシーン、1話の母の手紙へ繋がっているとも捉えられる。たった一人の恋の相手は〈物語〉を聞いてくれるとあった。音の物語が練に届き、彼を救うことで初めて、母のいう本当の「恋」が二人に生まれ始めた…。 #いつ恋

2016-02-29 23:26:54
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑦】「君を幸せにする自信がある」という麻陽は、空瓶の花を握っている。それは彼の想いのよう。だが求婚が留保され、花は2つの瓶に分けられる。他方、ラストの音と練は1つの大きな花壇を一緒に眺めている。しかもこちらは花に(飴の)味が重なる。〈花〉が暗示する恋の行方…。 #いつ恋

2016-03-01 00:05:02

3月7日:第8話「好きです」

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑧】朝陽の父の「幸せになりなさい」は、決して結婚を認める純粋な祝福ではなかった。それは歓迎という覆いを被った〈貧困〉への差別意識の塊。裕福な自分達は幸せという前提のもと、音は裕福になることを善、貧しくも懸命に生きた過去を悪と規定された。それが彼女を傷つけたんだ。 #いつ恋

2016-03-07 22:30:42
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋】練と話す音はペンで「星」を作る。大事なのは2つのペンで作ってゆく点。星は園田さんに聞かせた話→朝陽の〈人間愛〉と、望遠鏡の場面→〈片想い〉を表す矛盾の記号。音と朝陽の間に潜むズレを巧みに象徴しながら、練を描く似顔絵のペンにも繋がることで、音と練の恋も暗示する。 #いつ恋

2016-03-07 22:54:48
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑧】練の告白シーン。ケーキから発展し何気なく「好きなものの話」をするが、それは徐々に無意識ながら、告白へ近づいてゆく言語の運動でもあった。「楽器の音」「雪を踏む音」「スニーカーの音」…好きな対象はみんな〈音〉だ。そう、音を「好き」という一言に向かって言葉が動く。 #いつ恋

2016-03-07 23:08:19

3月14日:第9話「決意のとき、別れの夜」

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑨】母の手紙に似た、花の透かし入りの拾った便箋で、音は〈何を〉書いたか。それと同じぐらい〈誰に〉書いたかが重要になりそうだ。書き出しは「お」の文字を綴ったように見えた。練への別れの手紙でなく、〈お母さん〉に向けた手紙ではなかったか…。最終回まで想像力を刺激する。 #いつ恋

2016-03-14 22:59:49
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑨】冒頭の何気ない「上→下田/下→上川」の名前の話は、音の落下という〈死〉のイメージと共に、じいちゃんの種から育った大根(芽は上へ、根は下へ)の〈生〉のイメージへも繋がっていた。そうした生死に運命をまるで割かれるように、練が上下の間=階段に佇んでいたのも印象的。 #いつ恋

2016-03-14 23:24:44
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑨】「そっちに向かって俺と杉原さん、走ってた」。1話の、あの時から既に、二人の恋の運命=三角関係は〈構図〉によって、見事に先取りされていたんだった。二人の先に待ち構えていたのは、他でもなく、夜明けに登る「朝陽」。そう、この物語は朝陽が要なのではと改めて思う。 #いつ恋

2016-03-15 06:24:14
柿谷浩一(kaki) @prince9093

【いつ恋⑨】結婚相手の音を「自分を一度捨てたことがある人間なんだろう」と朝陽の父が言い放つ。愛人の子として長く見捨ててきた、息子に向かって易々とだ。その非情と卑劣を前に、彼は崩れ落ちた。そして音を「守る」現実を選ぶ。形容し難い、父への屈折した感情を飲み込みながら。辛い。 #いつ恋

2016-03-15 06:47:13
柿谷浩一(kaki) @prince9093

だから何だって話なんですが、頭がクリームソーダで一杯になり少し調べてたら、朝陽の兄・和馬を演じる福士誠治さんも無類のクリームソーダ好きだということに辿り着きました。はい。 #いつ恋 #クリームソーダ

2016-03-17 00:54:38