ニンジャスレイヤー二次創作【テンダー・ホワイト・ドラゴン・アンド・ブルタル・レッド・ブラック・ドラゴン】#4

プロキオン @MMMwithbe

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【テンダー・ホワイト・ドラゴン・アンド・ブルタル・レッド・ブラック・ドラゴン】#4

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夜のショクバン・ストリート。雑居ビルの煤けた壁面を、違法オイランハウス「三十分間夜間飛行」のネオンカンバンが空虚なピンク色に照らす。そのビルの2階。ホーン・オブ・ハンニャ・ヤクザクラン事務所。

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部屋の隅にうずくまり、ガタガタと震える一人のリアルヤクザ。スキンヘッドの後頭部に刻みつけた「神ツヨイ」の刺青は、その頭を抱える両手の指でほとんど隠れている。冷たい汗がヤクザスーツの襟首や脇下をじっとりと濡らす。「アイ、アイエエエ……！」その体格からは想像もできないか細い悲鳴。

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その哀れな様子を、事務所の奥から睥睨する人影あり。バイオ水牛皮の立派な椅子に腰掛け、一枚板の木製デスクに脚を投げ出して、違法薬物メン・タイ入りの葉巻をくゆらす。「フー……オイ！」短くなった葉巻を、震えるリアルヤクザの後頭部に投げつける。「アイエッ!?　熱いです！」

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反射的に振り返ったリアルヤクザの側頭部を「イヤーッ！」何かがかすめて飛んだ。モータルの目には見えない速度。衝撃波だけで、テンプルに喧嘩慣れしたヤクザの拳を受けたような感覚。「アイエエエ!?」後方のコンクリートの壁に、ガツッと何かが突き立った。見えなくても何かはわかる。スリケンだ。

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「それでもヤクザか。下らぬ。家族が殺された？　だから何だ。貴様らはただアマクダリ・セクトと、俺のために駆け回ればよい。理解せよ、モータル」「アイエエエ……！　ですが！　貴方がやってきて以来、このショクバン・ストリートで俺らに楯突く奴らなんていなかったのに！」

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「それを、まさか、女房と子供を皆殺しだなんて……！」へたりこんだまま、リアルヤクザは涙声で訴える。しかし相手はニンジャだ。「なんと愚かなモータルか。裏の世界で家族なぞ持とうとしたのが間違いだ。守るべきものとは即ち弱点。攻めて奪う。奪って殺す。それだけだ。また『教育』されたいのか」

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「アイエッ!?」リアルヤクザは硬直した。そしてドゲザした。圧倒的な恐怖を刻みつけられたことによる条件反射。「ゆ、許して下さい！」「ならば、貴様は何をする？　ホーン・オブ・ハンニャ・ヤクザクランのために」「こ、殺します！　家族を殺した奴を！　コロス！」なんたる恐怖支配か！

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「よろしい。表のクローンヤクザの様子でも見てこい」「ハイヨロコンデー！」カリグラの威圧感に失禁寸前となりながら、リアルヤクザは事務所の扉を開けた。そこにニンジャがいた。黒い装束、襟元の白い縁取り。太く短い手足、突き出た太鼓腹。左胸には見慣れたアマクダリ紋の刺繍。

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リアルヤクザが悲鳴を上げるより早く「イヤーッ！」ニンジャは右手のショートカタナを袈裟懸けに一閃！「アバーッ！」胸元と股間を種類の違う液体で濡らし、リアルヤクザはどうと倒れた。事務所の主は、脚をデスクに投げたまま入り口を見た。「フン、予想より早かったな。命知らずは貴様か」

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「たとえアマクダリ紋をつけていようと、このホーン・オブ・ハンニャ・ヤクザクランの、即ち俺のテリトリーを荒らす奴は許さん。イヤーッ！」バイオ水牛皮の椅子から回転ジャンプし部屋の中央に着地。そのままアイサツに移る。「ドーモ。カリグラです」「ドーモ。セジョンデワンです」

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カリグラはやや腰を落とし、両手を前に出した。手指の関節を鈎爪めいて軽く曲げ、掌は下向き。古代ローマカラテ第一の構え、「獅子の構え」。黄土色の装束とあいまって、その様はさながら狩りのため飛びかかるタイミングをうかがうメキシコライオンの如きアトモスフィアを醸し出す。

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セジョンデワンと名乗った闖入者は、左側を前にして体をやや半身に開き、右手のショートカタナを斜め下段に構えた。その太く短いシルエットに似合わぬ小刻みで軽快な跳ね足。既に両者の間では、打撃、蹴り、掴み、斬撃、それらの無数のフェイントを伴うイマジナリー・カラテが繰り広げられている。

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カリグラは相手のステップに追随し、常に掲げた両手の間に相手を捉えている。「貴様のそのムーブ、襟元の縁取り……テコンドー使いか。さてはペク・ファランのドージョーの関係者か？」「いかにも。門下生が世話になったなあ、カリグラ＝サン。あのドージョーはおいそれと譲るわけにいかねえんでな」

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カリグラは事務所の入り口で死んでいるリアルヤクザを顎で指した。「そこのモータルの家族も、貴様の仕業だな」「おうよ。ただ事務所に殴り込みじゃ、お前らみてえなヤクザがまたウロチョロするかもしれねえからな。インガオホーってもんを、きっちり示しとかねえとよ」セジョンデワンは残忍に笑う。

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「なるほど、ニンジャとしての自覚くらいはあるようだな。よろしい、ならばイクサで死ね。イヤーッ！」「イヤーッ！」両者が同時に仕掛けた。カリグラは踏み込みから喉へのチョップ突き！　セジョンデワンは高く跳んでの空中後ろ回し蹴り！　カリグラの右手は空を切る！

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勢いが乗った側頭部への蹴りを、カリグラは左腕でガード！　ブレーサーが強烈にきしむ！「ヌウーッ！」着地からセジョンデワンの斬撃が続く！「イヤーッ！　イヤーッ！」「イヤーッ！　イヤーッ！」カリグラはブレーサーで受ける。続く中段スピンキックを、両手でキャッチ、そして「イヤーッ！」

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CRASH！「グワーッ！」受け止められたセジョンデワンの左脚ではなく、右の膝から異音！　カリグラは蹴りにきた脚をキャッチして両手で固定したまま、軸足の膝を正面から蹴りつけたのだ！　間髪入れず、掴んだままの左脚を引いて相手を地面に倒そうとする。得意のサブミッション狙いである！

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「イヤーッ！」セジョンデワンは痛めた右脚で必死に跳ねて転倒を防ぎ、カリグラの顔面にショートカタナの柄頭を叩きつけた。「グワーッ！」カリグラは脚を離し、たたらを踏む。セジョンデワンは深追いせずバック転で距離を取る。右膝の激痛。着地がおぼつかぬ。「ヌウーッ……！」メンポの奥で呻く。

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「俺の一撃は手応えがあった。もはやその右脚で蹴りは使えまい。テコンドー敗れたり。ハイクを詠め、セジョンデワン＝サン」メンポを直し、カリグラは再び部屋の中央に陣取って獅子の構えを取る。「ハッ、ナメるなよカリグラ＝サン。その程度の覚悟であれだけ手を汚すと思ってんのかよ……！」

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先ほどのような跳ね足はもはや使えぬ。セジョンデワンは構えを右前に切り替え、ショートカタナを前に出してジリジリと距離を詰める。カリグラは獅子の構えを崩さない。蹴りの速さと重さは実際脅威であったが、カタナのワザマエはブレーサーで捌ける程度。徒手と武器のカラテがかみ合っていない。

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打撃技と未熟な武器カラテしか持たぬテコンドー使いとのイクサ。脚を破壊してしまえばもはやベイビー・サブミッション。カリグラはそう考えた。端的に言って、それはウカツであった。「イヤーッ！」セジョンデワンが跳躍した。カリグラは斬撃にくる右腕を絡め取ろうと半歩踏み込んだ。

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次の瞬間、セジョンデワンの丸く太い背中が、上下逆さまでカリグラの目の前にあった。手も足も出ていない。首は足元。キャッチできる部位がない！「グワーッ!?」カリグラはセジョンデワンの全体重と運動エネルギをまともに受けた！　後方に吹き飛び、木製デスクの天板の縁に腰を強打！「グワーッ！」

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セジョンデワンは斬撃をフェイントだけで実際には出さず、低く直線的な跳躍と同時に前方半回転。プロレスカラテめいて、カリグラめがけ背中から突っ込んだのだ！　無論テコンドーにこのようなワザは存在せぬ。なんたるヤバレカバレか！　「キューソーは猫を噛んだら殺す」のコトワザ通りの現象！