- android_girls
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「美味しい?」「ん……はい。美味しいですね、あのお店のティラミス」「うん。甘みと苦みがしっかりしてる」「エクレアはどうでした?」「甘い。甘くておいしい」「なんですか、それ」「甘くておいしいんだって」
2016-05-05 20:45:18「ふーん……」「うん?」ここなは余ったパジャマの裾をきゅっと握り、宏和へと寄りかかった。宏和の手がここなの頭へと覆いかぶさり優しく、ゆったりと撫でる。「ここなみたいに。甘くて、おいしい」「……私、甘くておいしいんですか?」「うん」
2016-05-05 20:47:14「なんだろ、カフェモカみたいな感じ」「私の味が……ですか?」「うん。唇の味」ここなの目が泳ぎ、頬が赤くなる。裾を握る力が増し、宏和に体重をぐっとかける。「なになに、どしたの」「……何でもないです」「恥ずかしいの?」「そうじゃなくて」「じゃあ、何?」
2016-05-05 20:49:25「……意地悪」「好きな子には意地悪したくなるってよく言うよ?」「そういう事、さらっと言わないでください」「じゃあどう言おっか……ねえ、ここ」「……なんですか」「好き」宏和の腕がここなの体を抱き寄せる。後ろから抱き締められたここなは、俯きながら宏和に体を預けた。
2016-05-05 20:51:21しばし、無言が続いた。テレビに出ている俳優は愛の言葉を呟いている。宏和とここなの間には、言葉は必要ないようだった。宏和の頬とここなの頬が触れ合う。吐息が混ざる。ここなは宏和の胸が呼吸に応じて動いてるのを感じていた。
2016-05-05 20:53:16「ここな、良い匂いする。ボディソープの匂いかな」「……マスターはコーヒーの匂いしてますよ」「そっか」「いい匂い、です」「うん」「……マスター」「うん?」「そっち、向きたいです」
2016-05-05 20:55:10宏和が腕の力を緩めると、ここなはもぞもぞと体の向きを変え宏和に向き合った。朝と同じように、互いの額を付き合わせる。熱を帯びた息が互いの顔にかかる。視線が混ざり合い、匂いが混ざり合い、感覚が混ざり合う。
2016-05-05 20:57:14「……今日もお疲れ様」「はい」「また明日も頑張ろっか」「……はい」「そのためにさ」「はい」ここながきゅっと目を瞑ると同時に、宏和の唇とここなの唇が触れ合った。唇の、表面だけ。二人にはそれで十分だった。
2016-05-05 20:59:26ほんの5秒ほどで唇を離し、互いに見つめ合う。互いに笑いだすのを堪えながら、嬉しそうに見つめ合う。「……明日も頑張ろっか」「そうですね」「明日また、仕事終わったらさ」「はい」「キス、しよっか」「……それ、毎日言ってますよ」「そう?」「そうですよ」
2016-05-05 21:01:31「じゃあ、明日も言わなきゃね」「……そうですね。明日も、明後日も」「うん」「……マスター」「うん?」「好きです」「……うん」「……寝ましょっか」「そうだね」連れ立って寝室へ向かう。ダブルベッドの片方には無接点充電用のシートが敷かれていた。
2016-05-05 21:03:14ここながシートの上に寝転がり、掛け布団を被る。「充電されてる?」「はい。大丈夫です」「結構使い込んだしそろそろ変えなきゃダメかなあ」「まだ大丈夫ですよ、多分」その隣に宏和がごろりと横たわる。
2016-05-05 21:05:27「そういえば、マスターも寝てる間充電したりするんですか?」「するよ? ただ……」「ただ?」「全然回復しないから一日中寝てなきゃダメ」「ああ……」「起きれないのは充電できてないからなんだー」「マスター、結構ポンコツなんですね」「うう、つらい」
2016-05-05 21:07:22「明日はちゃんと起きてくださいね?」「今日もちゃんと起きたじゃん」「ちょっとぐずってたじゃないですか」「ぐずるって。俺は赤ちゃんじゃないんだから」「……ふふ」「……何さ」「ふふふ」「なになに」「なんでも、ないです」「何かあるでしょ、なんか」
2016-05-05 21:09:11「……寝ましょっか」「……はぐらかされた」「そんなんじゃないですよ」「……そう?」「はい……好きです、マスター」「……俺も。じゃあおやすみ。明日もよろしく」「はい。おやすみなさい」
2016-05-05 21:11:22人間とアンドロイド。人と機械の愛の形。それは意外と、人間同士のものと変わらないのかもしれない。こうして喫茶ジュンの1日は終わり、新たな1日へとスタートしていく。
2016-05-05 21:13:15人間とアンドロイド。人と機械の愛の形。それは意外と、人間同士のものと変わらないのかもしれない。こうして喫茶ジュンの1日は終わり、新たな1日へとスタートしていく。
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