- hukurou_nayuta
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「ゴボーッ」「……!ハァーッ、ハァーッ…!」1、2分保たせるのが限界らしい。「ど、どうです…これに懲りたら出ていって……」ウェットランジェリーは肩で息をしている。ヨタモノは…「な、ナメやがって!ウオオーッ!!」無事である!「キャアア!」CRASH!「グワーッ!」何が起きた!?3
2016-06-30 22:03:10ウェットランジェリーに襲いかかるヨタモノに、何かがぶつけられたのだ。彼はそのまま動かない。気絶したようだ。その側には、割れたジョッキがヨタモノとともに転がっている。「女の子に手ェ上げる野郎は、感心しないぜ」言ったのはプリプリアマエビだ。彼はウェットランジェリーにウィンクした。4
2016-06-30 22:07:02「プリプリアマエビ=サン…!」「ランちゃんはもう下がりな。怪我しちゃうぞ!イヤーッ!」アマエビを頭に乗せたラッコは、自分の身の丈を優に越えるヨタモノニンジャへと跳び蹴りを放った!「フン、ラッコチャンはタマ・リバーに帰りな…グワーッ!?」見た目に反し鋭く重い蹴りが刺さった!5
2016-06-30 22:11:03その頃ゴシップミル!「グワーッ!は、話し合いしよう」「今さら何よ!イヤーッ!イヤーッ!」以前ヨタモノを殴り続けている。椅子が壊れかけている。「わかった、もうここには一切立ち入らねえ!立ち入らねえから!!」「嘘だーッ」降り下ろされる椅子!「グワーッ嘘じゃねえ!」「アー!?」椅子!6
2016-06-30 22:14:37「せ!い!い!を!み!せ!ろ!」もはや背もたれだけになった椅子で地面を叩く!「せ、誠意ぃ…?」ヨタモノは困ってしまった。ゴシップミルも正気に戻り、なんだか困ってきた。「……」「……」両者無言のまま、視線で語った。「お前ェ」言ったのはゴシップミルだ。ヨタモノは少々ビクッとした。7
2016-06-30 22:17:55「よく見たら綺麗な目ェしてるな」「アッハイ、ありがとうございます」ゴシップミルは椅子から手を離した。そしてヨタモノに近づき、その肩を叩いた。「帰れ。お前、未成年だろ。こんなところで人生棒に振るな」「ア…」彼女は見逃さなかった。袖を千切り、攻撃的に改造されたそれは制服だったのだ。8
2016-06-30 22:22:09よくよく見なければ、わからないほどの魔改造ではあったが。「帰してくれんスか」「ん。もうここには二度と立ち入らんし、ああいうニンジャとも関わらんだろ。な?」「ハイ」「わかっているのか!」「ハイ!」彼はもはやヨタモノの顔ではなくなっていた。彼女はそれを見て頷いた。「…行ってよし!」9
2016-06-30 22:25:04彼は、気絶した友を抱え、去っていった。「彼ら、未成年だったのね…」ウェットランジェリーが、ゴシップミルの隣に立ち、呟いた。「どうして、こういうことをするまでになってしまったのでしょうね」ゴシップミルは帽子を被り直し、頭を振った。「アー…ひどい世だ」10
2016-06-30 22:28:05…強い。ドッグスノーズは冷や汗がいくつも伝うのを自覚した。根源的恐怖。自分はなんてものの怒りを買ってしまったのだろう。目の前にいるのは、愛くるしいラッコだ。ラッコのはずだ。否違う。これはニンジャだ。化け物だ。遥かにイカれたとんでもないニンジャ…!12
2016-06-30 22:35:04「イヤーッ!」プリプリアマエビの振るうシャッター棒が、死神の鎌めいてドッグスノーズの喉元に食らい付く!「グワーッ!」彼はこの小さな強者に終始圧されていた。巨驅を活かした大振りなカラテを何度も打ち込んだものの、それらは受け止められ、受け流され、避けられ、カウンターを食らった。13
2016-06-30 22:38:04「何者だ……テメェ」ドッグスノーズはそれに問うた。バーカウンターに降り立った彼は、シャッター棒を回し、カツンとカウンターを突いた。「プリプリアマエビ!ニンジャだ!ヒカエオラー!!」 「ふざけた名前と見てくれしやがって!イヤーッ!」棒と拳がぶつかる!打ち負けたのは拳!14
2016-06-30 22:42:05「グワーッ!!」圧倒的!だが、ドッグスノーズはただで終わるわけにはいかなかった。「い、イヤーッ!」「!?」ドッグスノーズはプリプリアマエビの足を掴んだ。「イヤーッ!」「なんだ…グワーッ!」そのまま乱暴に投げた!バーカウンター無惨!「……やったか?」土埃が舞う。一瞬の静寂。15
2016-06-30 22:45:45しかし気づくのが遅かった。土埃を切り裂き、躍り出たプリプリアマエビを視認した時には既に。「ドッグスノーズ=サン、いいことを教えてやるぞ」プリプリアマエビのシャッター棒は釣り針めいて彼の口を捉えた。そのままドッグスノーズごとシャッター棒を大きく振りかぶり、床へと叩きつけた!16
2016-06-30 22:56:01「アバーッ!」「『やったか?』はデス・ノボリだ!」プリプリアマエビはザンシンする。「サヨナラ!」ドッグスノーズ爆発四散!ヨタモノ達は帰り、敵は死した。…「水面」は、酷い有り様になってしまったが。ウェットランジェリーは困ったように笑う。「ハスカール=サンに直してもらわなきゃね」17
2016-06-30 22:59:01「いや、ハスカール=サンは何でも屋じゃあないからね」埃を払いながら、プリプリアマエビは言った。「あら?でも彼、色々してくれるのよ。お店の照明とか、外観のお手入れとか」床にはボトルや椅子が散らばっている。「ほとんどアタシらのせいだな……ごめんよ…」ゴシップミルが謝罪する。18
2016-06-30 23:02:29「お、おれも考えなしに暴れちゃったから…ごめんな?ごめんなさい!」プリプリアマエビも両手を合わせ、謝罪した。その様子を見、「水面」の女店主はふわりと微笑んだ。「いいえ。あなたたちのお陰で、ここが守れたのは事実だから。…ありがとう」店はめちゃくちゃだが、三忍も客も無事だった。19
2016-06-30 23:04:55無事だったのなら…再起出来るのだ。何度でも。「ランちゃん……」「女神やん…」二人は口々にこぼした。実際、後光が見えていたとか何とか。そのあと、彼女らはある程度店を掃除した。狭いところの片付けに、プリプリアマエビ=サンが重宝したらしい。新たなジョブの可能性が見えた、と本人談。20
2016-06-30 23:08:37「それじゃあな、ランちゃん!」「また来るぜ」片付けを終えた二人は、「水面」を去ろうとした。「待って」その背を、ウェットランジェリーが止めた。二人は首をかしげ、振り返る。「何か、忘れていますよね?」ランちゃんはにこにこと笑む。「な、何だったかな…?」彼らの顔は青ざめる。21
2016-06-30 23:12:02「お・し・は・ら・い。まだですよね?」今までに見たことがないほどの眩しい笑顔。「あのう…今日もツケってことに…」「おれも50円しかないし…」二人は苦しい誤魔化しを始めた。「今まで何回ツケてると思っているのです?それにプリプリアマエビ=サン。今日はお金が入ったと聞きましたが」22
2016-06-30 23:15:12「や、やだなあ。おれそんなこと言ったっけ…言ったわ…」ウェットランジェリーはプリプリアマエビのマフラーをがっちりと掴んでいる。「わかった、わかったから、払う。払うんでマントからおみ足を退けてね」ついでにゴシップミルのマントもしっかりと踏みつけている。逃げ場はない。金を払え。23
2016-06-30 23:18:42プリプリアマエビとゴシップミルは、ウェットランジェリーの醸し出す、何としてでも金を払わさんとする迫力に観念し料金とツケの分を払った。そして、「水面」を後にした。夜道。情けない二人を白い月が照らしていた。「財布が空っぽだ」「アタシもハスカール=サンと山分けした金がこの様」24
2016-06-30 23:22:10自業自得だが。「おれたち、肝心なところでどうして、カッコ悪いんだろうな」「どこか、締まらねェよな…」二人はため息をついた。今日も今日とて、かっこつかない、一日。「ハシゴしようぜ」「そうだな…たまにゃ朝まで」変なふたりは、うらぶれたネオンの光の中へ消えていった。25
2016-06-30 23:25:56