【クール・バット・ノット・サムウェア・スマート】

カワイイ娘とかっこつかない二人の話です。
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不幸鳥 @hukurou_nayuta

【クール・バット・ノット・サムウェア・スマート】

2016-06-27 22:23:34
不幸鳥 @hukurou_nayuta

パブ「水面」。しっとりとした雰囲気の店だ。しっとりしてるのは雰囲気じゃないかもしれない。物理的にしっとりしている……ような気すらするようだ。カウンターの奥には、ここを経営する美女。店に入り、目が合うといつもそこで微笑むのだ。彼女目当ての客も、少なくない。むしろ9割そうだ。1

2016-06-27 22:24:55
不幸鳥 @hukurou_nayuta

カウンター越し、彼女の目の前に座るその男もそうだろう。…ム?男?「バカ野郎、お前、ランちゃんがお前なんか相手にするわけがないだろう!第一、既婚者の癖によ…ところでランちゃん。今度空いてる?てかIRCやってる?」『ランちゃん』は笑う。「IRCはやってないわねえ」2

2016-06-27 22:28:03
不幸鳥 @hukurou_nayuta

彼女は奥ゆかしいので、丁重にお断りをした形になる。そうかあ……と落ち込むその人物に、青色のカクテルを差し出した。その中に月が浮いている。「なかなかに……ポエットな」ひとことつぶやき、羽根つき帽子を目深に被ったそいつは飲み干した。「きっと、いい人がいるわ」「だといいがねェ」3

2016-06-27 22:31:25
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「人生長いぞ!色々ある!だからランちゃん!そいつはほっといておれとオキナワにでも行かないか?」威勢のいい声が聞こえた。『ランちゃん』も羽根帽子の者も、辺りを見回す。それらしき人物がいないのだ。「ア」羽根帽子が隣を見ると、高さ1mある椅子を必死によじ登るラッコの姿を確認した。4

2016-06-27 22:34:08
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「ごめんなさいね~、お店、長く開けるわけにはいかないから」彼女はすまなそうに微笑む。「ぬうん!!モーッ、ラッコだからか!おれにもなんかちょうだい!」「はいはい」『ランちゃん』はそのラッコに、彼の着る服によく似たピンク色のカクテルを出した。爽やかな、グレープフルーツの香りがした。5

2016-06-27 22:38:05
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「おっ!なんかお洒落なのでてきた!イタダキマース!」彼は、グラス……ではなく何故かジョッキに注がれたそれを一気に飲んだ!スゴイ!飲み終えたラッコは、隣を見て言った。「アレ?ゴシップミルじゃん?」「気付かなかったのか……こっちはまるわかりだったんだけど」おお、何ということか!6

2016-06-27 22:41:50
不幸鳥 @hukurou_nayuta

我々はその名を知っている!そして気が付くだろう。ゴシップミルとは、女なのだ。「君、なにやってんの…女の子口説いて」「ま、『人生色々ある』んだ。そういうプリプリアマエビ=サンはどうしたんだい」この、ピンク色の服を着たラッコの名はプリプリアマエビ。「ンンー、サケが飲みたくて」7

2016-06-27 22:45:21
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「あはは、そうよね。プリプリアマエビ=サン、たっぷり飲んでって」『ランちゃん』…否、もうよかろう。ウェットランジェリーは満面の笑みでボトルを取り出した。そして、「ゴシップミル=サンも」彼女はゴシップミルの手を取った。「そうね……見ろプリアマ=サン。ボディタッチ」「ズルいぞ!」8

2016-06-27 22:50:50
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「ゴシップミル、お前そういえばどうなったんだ」「どうなったって?」プリプリアマエビはゴシップミルに切り出した。「ほら、あの…ザ」「アアアーッ!」「ザ」「アアアアアーッ!」突然ゴシップミルは会話を遮り出した。コワイ!「言わせて!」プリプリアマエビはバタバタとカウンターを叩いた。9

2016-06-27 22:54:55
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「言わせないよ!?」「あら?なんの話なの、プリプリアマエビ=サン?」ウェットランジェリーは興味津々に身を乗り出す。プリプリアマエビはニヤリと笑う。「そう、ザザって奴知ってる?」「イキナリ名前出しやがったなァー!?」ゴシップミルは口に含んだサケを吹き出した。10

2016-06-27 22:58:06
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ウェットランジェリーはオボンでガードし、無事である。「ザザ=サンですか?知っていますよ、前にお店に来ました」オボンからひょこっと顔を見せ、なんかとんでもないことを口走った。すると、はっとして口許を押さえた。「アッ、ゴシップミル=サンてもしかしてザザ=サン…」「いやその」11

2016-06-27 23:01:51
不幸鳥 @hukurou_nayuta

その時!「水面」の扉が乱暴に開けられた。ドアにつけられたベルが激しく鳴る。「ドーモ酔っぱらいのクズ共!ドッグスノーズです!この店はオシマイだ」「うるせえ!今それどころじゃなイヤーッ!」「グワーッ!」プリプリアマエビは片手間に殴る!体は小さいがとんでもないパワー!12

2016-06-27 23:05:22
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「なんだ、このラッコは!?」乱入してきたニンジャは驚愕する。そこに仲間らしきものが二人入ってきた。その二人はニンジャではないようだ。「そこの女店主と前」「?店がうるさくなってきてイヤーッ!」「グワーッ!」ゴシップミルも片手間に殴る!「邪魔すんじゃねえ!」「イヤーッ!」13

2016-06-27 23:09:56
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ウェットランジェリーもオボンで殴る!「グワーッ!」「なんだこいつら!一人だけニンジャがいるぞ!」ラッコの叫び。店内にいた客が反応する。「アイエエ!ニンジャ!?」「ラッコナンデ!?」「「コワイ!」」青い店内が悲鳴に満ちる。「ヤカマシーッ!お前ら逃げろ!」「皆さん落ち着いて!」14

2016-06-27 23:14:50
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ウェットランジェリーがパニックに陥った客を的確に避難させた。落ち着くように声を掛けながら。「ドーモ。プリプリアマエビです!サケの席の邪魔立て、許さんぞ…」「ゴシップミルだ。お前らのせいでサケがこぼれた」「ウェットランジェリーです。商売の邪魔、なさらないでね?」14

2016-06-27 23:18:36
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「ザッケンナコラー、この店から出てくる客に俺たちァ迷惑してンだ、ここはウチのシマだ」敵ニンジャが凄む。「知らんな」プリプリアマエビは一蹴!「勝手にやってくれ。迷惑なら場所を変えろ。おれは知ってるぜ…ここの客が妙なのに襲われたって」敵は閉口する。このラッコの迫力に圧されたのだ。15

2016-06-27 23:23:53
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「死者も出てるよね。確か」ゴシップミルは腕を組み、ウェットランジェリーに視線をやった。「私は店主ですので。これ以上は看過できません」3忍は構えた。「ヘッ…アー、そうかい。ちなみに迷惑ってのは嘘だ。酔っぱらい殴って殺して、スカッとしてただけだ」開き直るドッグスノーズ!16

2016-06-27 23:27:10
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「フン…お前、虚栄心が裏目ったな。ゴシップミル、ランちゃん!!こいつらを倒す!」プリプリアマエビはシャッターを閉めるボーを握った。「おう!じゃ、ニンジャは任せたぞ!」ゴシップミルは手近な椅子を持った。「イクサは不得手ですが…頑張ります」ウェットランジェリーの周りに水が渦巻く!17

2016-06-27 23:34:55
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ニンジャたちのイクサが始まった。ゆけ、プリプリアマエビ!真面目にやれ、ゴシップミル!がんばれ、ウェットランジェリー!「水面」を守れ!!19

2016-06-27 23:39:23
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!!」「イヤーッ!」「グワッ、ちょっと待って」「ヤダーッ!イヤーッ!」「グワーッ!」ゴシップミルは椅子で敵のヨタモノを殴る!殴る!殴り続ける。相手がニンジャでないのなら、充分に彼女に勝機はある。むしろやりすぎている。1

2016-06-30 21:56:38
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ではウェットランジェリーの方はどうか。彼女は真剣な顔で、もうひとりのヨタモノに向けて手を翳している。ヨタモノの口許は、マフラーめいて水が覆っていた。おお、なんたる光景か。これが、彼女のスイトン・ジツだ。「ゴボボーッ」「く…!」だが、この状態を維持し続けるのは容易ではないらしい。2

2016-06-30 21:59:32