Ken ITO 伊東 乾先生itokenstein 自分の好悪について人は容易に愚かな独裁者となる。

リスナーはあくまで自由でいい。お笑いを見に寄席に行くときつまらん芸はその他関係なく「つまらんぞ」で構わない。ただ自分は芸人ではないし、芸人が芸を磨くにはべつの水面下があること、それは意識していてよいことで、そういう大人の眼力ある鑑賞者が芸を育てると思います
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Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

いまオ芸術という落書きを消した所だが、音楽を好悪のキブンでとらえたいヒトはちょっと考えていただければと思うのは、この18年ほど私は国立大学で音楽の教授屋をしているが、趣味と好き嫌いで税金の給料貰って文句がこないと思うだろうか?僕はそうは思わなかったのでこれだけ基幹開発もしてきた訳

2016-07-06 10:29:50
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

自分の好悪について人は容易に愚かな独裁者となる。慶應で昔「君が好きな音楽が何であれ、大半は民謡なんだよ」といって学生から大変不興を買った。フォークロアという言葉に全く悪い含意はないのだが、ロックやテクノはかっこよく民謡はダサい的な好悪の近視眼に捉われてしまう学生は少なくない。

2016-07-06 10:35:18
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

民衆の1として自分の好き嫌いの専横を謳歌する人は、PL法的な観点で供給者の責任を考えてみるといい。現在のコンテンツ産業にはその種のものがほとんどない。素人がダメとかいうことではない。何も考えず荒くて穴だらけの事をしていると早晩古典的な落とし穴にはまって破産や負債を抱えるよという話

2016-07-06 10:36:59
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

能もクラシック系統の音楽も国や企業から補助をもらって成立するお芸術の側面がある。それは安手の人気取りに走らなくてよいから、しっかりした伝統の核を守り、かつそれを営利無関係に発展させるようにという含意で成立するものだ。そういう責任を意識している人は、それなりの歩み方をしている。

2016-07-06 10:39:06
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

ザハ案があれこれ論議されたとき、サメの脳こと某M氏が「好き嫌い」で物事をいい、加えてどんぶりで2000億といった金額を口にしていたのを記憶している人もいるだろう。仮に素人の好悪でデザインして、構造計算のないスタジアムが崩壊して犠牲者など出たら、誰が何を言うのかな?というような話。

2016-07-06 10:41:05
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

いつごろからか、1990年代後半(私としては30代はじめ)から音楽雑誌がつぶれ始め、同時にリスナー批評家の感想文ばかり目に付くようになった。そういうものが売れる。売れるものを出す。で悪貨が良貨を駆逐しつくしたのが97,8年頃ではないだろうか。「音楽なんて好き嫌いだから」堕落の完成

2016-07-06 10:43:15
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

他の専門で大学の先生などをしていて、音楽はただただ「大好き」という盲目的な愛情を注ぐ人が、独断と偏見をむしろ売りにし、見る人が見ると失笑するような感想を書くと、むしろそういうものが持て囃され、まともな人が地味に真面目に書くようなものは市場に広く出回ったりしなくなる。そういう変質と

2016-07-06 10:44:51
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

あの愚かしい偽ベートーベン詐欺商法の成立時期がほぼ一致(2000年ごろ)というのは偶然ではない。判断つかない素人がああいうものを持ち上げる。中にはその種のものに迎合する音楽家も内外に出て来たりする。専門という言葉の意味が通じないというか変質してしまった。安っぽい小手先を指す言葉に

2016-07-06 10:46:29
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

例えば東大の学内で「本格的な交響曲みたいな作曲・・・」という言葉を2000年ごろ聴かされた。「あの、「交響曲みたい」な「本格的」な音楽というのは学部2,3年生ぐらいが習作的に書く種のもので、独り立ちした大人の芸術家が今日そういうものに手を付けるか別問題」とか言っても全く通じない。

2016-07-06 10:49:18
まかるがえし(Makaru.G) @Makaru_G

@itokenstein 同意見です。日本の音楽業界からは「ダメなものにはダメとハッキリ0点をつける」評論家がことごとく放逐された感があります。「専門家の意見なら間違いないだろう」という一般人の根拠なき確信を背景に、今の自称「批評家」は無意識に「めくら判」として利用されている。

2016-07-06 10:49:44
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

20世紀後半という時代に「交響曲」なるものを書くというのがどういうことか。まともにアーチストとしてアタマを使って考える観点がそっくり存在しない。武満徹が交響曲を残していますか?三善晃は?ブーレーズは?シュトックハウゼンは?ノーノは?ゼロでしょ?小手先の猿まねは評価の対象ではない。

2016-07-06 10:51:46
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

.@Makaru_G 批評って基本、宣伝ですから(by 小林秀雄)。ひとさまのことをあしざまに言わない 自分が売る役目のものを売り出して 対価として報酬を頂く そういう商売の類と 完全なアマチュアの好き嫌い この両者が圧倒的多数を占めてしまった感があります

2016-07-06 10:54:55
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

僕は一音楽家として何ものの束縛も受けたくない。演奏も作曲も一個人であって東大は全く関係ない。逆に大学の研究室でやっていることはバイロイトでも東大寺でも、あるいは装置の開発でも政策周りでも、一つとして僕個人では出来ないことばかりしている、そういうケジメと分別ははっきり意識しています

2016-07-06 11:01:29
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

中には中間項的なものもあります。僕は企業専従ではないので「自分の親友はオウムに洗脳されてサリンを撒いた」「今は正気に戻って再発防止に尽力している」とか顔と名を出して世に問える立場だったので11年前サイレントネイビーを書きました。開高賞など貰い地下鉄に中吊り等出ても大学は一切無反応

2016-07-06 11:03:43
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

例えば東大寺のお水取りの時空間分析とか二月堂の中に装置を持ち込んで計らせて頂いているが、こんなの個人で出来る話では絶対にありませんでした。保存修復的なもの以外にも、明治以降大きくなりすぎた真宗寺院のサイズに合わせて法要を作りなおす(「笑う親鸞」参照)とか大学でなければ出来ない仕事

2016-07-06 11:06:04
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

表現を受け身で見聴きする人は、自分が把握しているものがそのすべてだと誤解して暴君としてふるまわないようにしたほうがいい。オリンピック競技を見るのと、実際に選手としてやるのとは全く違う。CDを聴くのと、その録音の為に演奏家として20年30年生活するのとはまったく別は自明な筈なのだが

2016-07-06 11:09:27
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

一方で「鑑賞者」にとっては、その音楽家が何で収入を得ようと、今日ラーメンを食おうとギョーザを食おうと、音楽以外の事は一切無関係で構わないわけです。と同時に楽隊業側としてはクオリティを確保するのにありとあらゆる工夫(特に健康とコンディションの管理は決定的)を水面下で尽くしている。

2016-07-06 11:10:52
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

実技の最後のレッスンで、まず立たせて基本練習させたあと「練気功」「肘まる体操」「前屈指回し」その他、およそ普通の人が目にしない基礎的な方法を教えて、で改めて演奏となると腕や肩の芯が少し脱力して楽になっているのを経験できたと思う。こんなことはプロ以外本当は教えない、でも実際の方法。

2016-07-06 11:13:34
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

僕がアマチュアオーケストラなどの指導をしないのは、体の芯から直すという事が出来ないから。義理があり10数年前最後にN区民交響楽団とご一緒した際はせめてもと渡會教授をお招きして肘まる体操の類だけはご指導、弦楽器の脱力等は遥かにまともになった。固まったまま楽器首に挟んでても音はしない

2016-07-06 11:15:55
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

準備の出来ていないメンバーの前で指揮台に立ちたいなんて逆立ちしても思わない。きちんと出来ている所で初めて共演の第一前提が整う。それ以前の段階ではそれ以前のことをする。初楽者全般に準備が出来ないままむやみに形だけ練習しようとして効率悪い時間の使い方をしている。体はよろず芯がポイント

2016-07-06 11:18:18
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

合唱とか金管なんかではグループレッスン最初ランニングしたり「体おかゆ~」みたいな体操とかして十分ほぐしてから初めて基礎練習の1の1に入るでしょう?それなしにしゃっちょこばった身体のままアーとかウ―とかやっても近づかないから。受け身リスナの観点から全部落ちて見えない部分の一端ですが

2016-07-06 11:20:36
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

もう一つ僕がDJ系のものがいまいち苦手な点に、体の出来てなさ加減がある。MITなどが商売しようとすると「誰でも出来る!」式にテクノロジーで身体を代替させる露骨な傾向がありますが、DJはダンサー的に体が完全に出来てる子と、まったく無防備で体が死んでる子と二分されてる印象がありますね

2016-07-06 11:22:50
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

僕が駒場で身体の実技として音楽を教えている背景には30数年前の見田宗介ゼミ「自我論・間身体論」での決定的な経験があります。そこで僕が触れた活元とか竹内敏晴エチュードなんかは扱えないけれど、それ以前のもの(練気功とか)で音楽のウオームアップでも常用するような類は積極的に扱う考えで、

2016-07-06 11:25:11
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

一言でいえば「受け身マーケット全盛」の音楽産業、批評家さんはもとよりリスナー大半の体が死んでいる/あるいは眠っている それが僕には気持ち悪くて仕方ないわけですね。名盤100式の本でしたり顔の解説など恥ずかしくて読めず閉じてしまうのは身体の経験なくして語る感想が見るに堪えないからで

2016-07-06 11:27:25
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

リスナーはあくまで自由でいい。お笑いを見に寄席に行くときつまらん芸はその他関係なく「つまらんぞ」で構わない。ただ自分は芸人ではないし、芸人が芸を磨くには(枝雀師匠は極端として)べつの水面下があること、それは意識していてよいことで、そういう大人の眼力ある鑑賞者が芸を育てると思います

2016-07-06 11:29:37