ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ 【6:アクセラレイト】 #4

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
1
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サブジュゲイターが左拳で殴りつける!「グワーッ!」「イヤーッ!」右拳!「グワーッ!」編笠が吹き飛び、割れ窓からネオサイタマ都税第3事務所内に転がり込んだサワタリを、サブジュゲイターは回転ジャンプで追い、マウントを取った。「私は自由だッ!」「貴様の自由とは、カイシャの継承か」

2016-07-19 17:29:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フォレストはサブジュゲイターを見据え、言い放った。彼の右手は床に伸びたトリガー・ロープを掴んでいた。サブジュゲイターはここへ至り、床に走った亀裂と不自然に重なった床のタイルの状態に気づき、このネオサイタマ都税第3事務所にフォレストが当初潜んでいた事に思い当たったが、遅かった。

2016-07-19 17:33:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フォレストが紐を引くと、二者の身体は浮き上がった。違う。床が崩れ、垂直に落下したのだ。ジグラットはひとつの都市にも比するべき巨大な複合建築物であり、床に偽装されていたそのタタミ二枚ほどの四方は、竪穴めいたシュートだった。

2016-07-19 17:37:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」フォレストはナイフをハーケンめいて側面に突き刺した。サブジュゲイターの手は空を切った。「おのれーッ!」サブジュゲイターだけが、そのまま10メートルほど下のフロアに落下し、受身を取る猶予無しに背中から叩きつけられた。「グワーッ!」

2016-07-19 17:39:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」フォレストはハーケンをテコにして真上へ体を持ち上げ、室内に戻った。「イヤーッ!」そのまま更に跳び、あらかじめ蓋を外しておいた天井付近のエアダクトへ、流れるように入り込んだ。振り返りもせず、彼はダクト内を這い進んだ。サヴァイヴァー・ドージョーと再び合流する為に。

2016-07-19 17:41:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おのれェェーッ!おのれェェーッ!おのれェェェーッ!」サブジュゲイターはのたうちまわり、床を殴りつけ、額が裂けるほどの強さで頭突きを食らわせた。その激昂はサヴァイヴァー・ドージョーにも、ソウカイヤにも届いていなかったであろう。T字路で分かれたのち、前者は上へ、後者は下へ向かった。

2016-07-19 17:44:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

先行したネヴァーモアが下層への直通エレベーターの扉を破壊し、こじ開けたところに、チバ達のフォークリフトが走り込んだ。ブラックヘイズが幾重にも張ったヘイズ・ネットをマーズが斬り裂く僅かな時間猶予をぬって、彼らは直通エレベーターを作動させた。ジグラットのシステム心臓部を目指して。

2016-07-19 17:47:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブーン……パワリオワー!ツキジ地下、暗いホールの中央で起動音とともに次々UNIX光が灯ると、周囲の人々は歓声を上げた。「「ヤッタ!」」「「「スゴイヤッタ!」」」それは弱々しい光であったが、ロービットマインの崩落を生き延びた人々にとっては、十分に輝かしい希望のLED光であった。

2016-07-19 22:08:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

崩落により、少なからぬ死傷者が出た。断線、さらにはUNIXデッキの完全水没により、ウイルス攻撃計画も頓挫した。だが彼らはまだ諦めてなどいない。ニンジャも、ハッカーも、エンジニアも、何の特殊技能も持たぬ者たちも、この閉鎖空間の中で全員が自分の役目を探し、互いを励まし合い助け合った。

2016-07-19 22:15:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らはケガ人の手当てを、生き残った予備UNIXの運搬と整備を、崩落危険箇所のチェックを、汚染水を鍾乳洞に逃がすための即席土木作業を、あるいはマグロの解体を、協力して行った。そして皆で、捌きたてのオーガニック・トロを分け合った。それは旧世紀から残るツキジ・ダンジョンの遺産であった。

2016-07-19 22:18:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

互いに声を掛け合い急ぎ足で行き交う。ホール中央に並ぶUNIX群は貧弱で、ウイルス攻撃に使われたデッキをマシンガンとするなら、精々ハンドガン程度のみすぼらしさだ。だが戦いようはある。UNIX光がハッカーたちの表情を照らす。その横にはTVや無線機が積み上げられ、海賊電波を拾っていた。

2016-07-19 22:27:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

なぜ彼らは、絶望せず戦い続けられるのか。無論、彼らは皆、逃げ場を失った者たちであり、覚悟の上でこのツキジへと逃げ込み、抵抗を誓っていた。だがそれと同じくらい重要なのは、半神的存在たるニンジャが何人も、自分たちの傍にいることであった。超自然の鉄条網は今なお、彼らの頭上を支えている。

2016-07-19 22:34:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「実際、こっぴどくやられたわ」チャブの前でナンシーが現状をまとめ始めた。ヤモト、イグナイト、アンバサダー、スーサイド、ルイナー、アナイアレイター、ユンコ。他、ニンジャやハッカーでなくとも現状を知りたい者は皆、周囲に集った。ジェノサイドはINWラボの状況を偵察に行き、まだ戻らない。

2016-07-19 22:41:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここに潜み続けていても、じきにアマクダリは掃討部隊を送り込んでくる。アマクダリは、他の場所への対処に手いっぱいだけど、優先度がいつ変わるかはわからないわ……」ナンシーが言い、アンバサダーに促した。彼は続ける「……ニチョームにザイバツのニンジャたちが現れ、ジグラットに攻め入った」

2016-07-19 22:52:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニチョームの皆は?」ヤモトはカタナの柄に手を添えながら彼に問うた。アンバサダーは、ディプロマットとのテレパシーにより、ニチョームの状況をつぶさに知ることができるのだ。彼は答えた。現状戦闘は起こっていない。またニチョーム自治会の士気は高く、自分たちの街は自分たちで守り抜くという。

2016-07-19 23:02:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトは納得したように頷いた。ふと視界に入るTV。そこにリピートで映し出され続けるマルノウチ周辺の映像を見て、彼女は不安な表情を作った。市民がハイデッカーや自律兵器によって攻撃された時の映像が、違法電波に乗って流されているのだ。市民の一部は、今これと同じ映像を見ていることだろう。

2016-07-19 23:07:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「現状、アマクダリの戦力はほぼジグラットに集中。少量ではあるけど部隊を送り続けているのが、マルノウチ。ローニンリーグのアジトがある。今の所、ローニンからの救援信号はまだ届いていない。レッドハッグ=サンたちがしのぎ続けてる。そう信じたいわ」ナンシーは戦略マップを投影しながら言った。

2016-07-19 23:12:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「問題は、どう反撃するかッて事だよな?」スーサイドが拳を掌に叩きつけながら問う。「そうね、説明するわ」ナンシーがマップを拡大する。「切断された地下ケーブルを再接続すれば、もう1回だけ攻撃のチャンスがある。でもそれを行った瞬間に、私たちが生きてることが察知され、砲撃されてオシマイ」

2016-07-19 23:15:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イグナイトは落ち着かぬ様子で、指を床に叩きつけた。「でもここでクサってたら、掃討部隊がやってくるンだよな。そのために艦隊をどうにかするのが……」「私の役目」ユンコはトロ・スシを補給しながら頷いた。「飛行ユニットの整備がもうすぐ終わる」『ヌンヌンヌン』「モーターチイサイも連れてく」

2016-07-19 23:22:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あンたら、かなり無茶だよな」イグナイトが笑った。計画はこうだ。ツキジから再ハッキングを仕掛ける前に、ユンコが艦隊に奇襲を仕掛ける。自殺行為にも等しい、危険な作戦である。また仮に砲撃を一時食い止められたとしても、掃討部隊が地上から送り込まれたならば、残った者で迎撃せねばならない。

2016-07-19 23:28:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「危険は承知」ユンコがスシを咀嚼し終え、立ち上がる。イグナイトから始まり、皆は出撃前のユンコと握手を交わし、解散した。ユンコとナンシーは階段を下り、エンジニアたちが待つ垂直射出ポイントへ。他のニンジャたちは再び、各々の持ち場へと戻った。

2016-07-19 23:41:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……今にも落ちてきそうな低い天井を縦横の鉄条網が辛うじて支えるホールの隅に、アナイアレイターが座して動かぬ場所がある。スーサイドが近づくと、黒い影に金色の目が開いた。「おう」スーサイドはぞんざいにアイサツし、タタミ数枚離れた位置にある破損家具の上に置かれたリンゴに触れた。「何だ」

2016-07-19 23:55:08