「ネクロマンティック・フィードバック」 #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「人?」作業員が振り返ると、確かに道路の真ん中に立つ人影がある。「……なんだ、ありゃあ?」作業員は訝しんだ。人影の周囲に、青白い光の玉が漂っているのだ。昼の光の下でもその不気味な明かりははっきりと見えるのだ。「おーい、大丈夫か、あんた?」「アバー」

2011-02-11 19:19:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

人影は作業員とデリバリーガイの方へゆっくりと振り返った。そしてぎこちないオジギをする。「アバー、ドーモ。ウィルオーウィスプです。アバー」作業員は名状しがたい恐怖にとらわれた。その人影がニンジャ装束を着ているように見えるからだ。そして青白い炎もどうやら目の錯覚ではない……。

2011-02-11 19:23:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……え?」作業員は訝しんだ。青白い炎の一つが、作業員に向かって飛んできたからだ。「え……」直後、炎は作業員に一瞬にして引火した。ヒューマン・トーチ!「アイエエエエー!?」デリバリーガイは絶叫し失禁した。作業員は無言だ。叫ぶ間もなく死んだのだ!

2011-02-11 19:27:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「た、助けて!アイエエエ!」デリバリーガイは逃げようともがくが、左脚を骨折しており動くことままならぬ!「アバー、ドーモ、ウィルオーウィスプです。アバー」驚くほどの速さで、ニンジャ装束の男はデリバリーガイの目の前まで来ていた。その周囲を旋回する青白い炎!

2011-02-11 19:30:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバー」「アイエエエ!」デリバリーガイは絶叫した。ニンジャ装束の奥の目は焼き魚めいて白濁している!次の瞬間、デリバリーガイも作業員と同様に青白い炎の柱となり、人間松明として一生を終えた。ナムアミダブツ!

2011-02-11 19:33:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバー、ドーモ」ウィルオーウィスプと名乗ったニンジャ装束の存在は四つん這いになり、路上に散らばるスシを食べ始めた。「アバー」その周囲でセンコ花火めいた光がバチバチと輝く。……すると、どうだ!

2011-02-11 19:38:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一瞬にして炭化した死体と化した二人の体から青白い炎の塊が染み出し、浮かび上がって、他の火の玉の隊列に加わったではないか!コワイ!

2011-02-11 19:40:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

新たに道路を走行してきた軽自動車が、路上の様子に気づいて急ブレーキをかける。「なんだぁ、どうしました?気分が悪いの?」運転者は窓から顔を出し、ウィルオーウィスプに呼びかける。「アバー、ドーモ、ウィルオーウィスプです、アバー」白濁した瞳が、新たな犠牲者を見据える……。

2011-02-11 19:51:09
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「イーグルとカラスが食らい合う炎の夜……血の使徒が現れ、滅びの日を告げるであろう……罪人は再生し現世を食らう……血の使徒は燃える剣を突き刺し、やがて朝は死を洗い流し、聖杯に光は満たされり……アーマゲドン!ナムアミダブッダ!」

2011-02-11 21:23:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンドウは呟きながら、トコシマ地区の陰鬱な裏路地をあてもなく練り歩く。夜が近い。彼の心を満たすのはやり場の無い焦燥感だ。

2011-02-11 21:42:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンドウは涙をこらえた。彼の精神は狂信の只中にあったが、同時に、そんな彼自身を客観的に見下ろす自我も同時に存在した。悲しみだけでは、彼は狂いきることができなかったのだ。不幸な事であった。

2011-02-12 17:01:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンドウは手塩にかけて育てた娘の幸せが一瞬にして理不尽に奪われた瞬間を認識するまいと努力した。彼は必死に自分自信を狂気の中へ駆り立てた。でたらめの宗教とチャント、思いつきの予言を書きなぐり、まず、自分自身にそれを信じ込ませようとした。

2011-02-12 17:03:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は繁華街をフラつき、説法をしてまわっては、暴力を受け、ものを投げられ、疎んじられた。アンドウはハナから自分のデタラメの宗教が受け入れられるとは期待していなかった。他人を必死で布教してまわり、ナムアミダブッダと唱える事で、自らの正気を消し去りたかったのだ。

2011-02-12 17:15:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「血の使徒?アーマゲドン?ウフフ……」アンドウは立ち止まり、震える手のひらを見つめ呟く。私は何をやっているんだ…そんな自嘲が口をついて出かかる。しかしアンドウは思考を振り払い、再び叫び出す。「アーマゲドン!アーマゲドンだ!なぜ信じない!」通行人が、やれやれ、という顔で見返す……。

2011-02-12 17:18:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンドウはさらに薄暗い路地裏へ歩き進む。既に夜だ。今夜は長い。アーマゲドンだからだ。アンドウは祈り続けるだろう。「……え?」アンドウは前方の闇に目を凝らした。ぼんやりと鬼火めいた青白い炎が闇の中を漂っているのが見える。

2011-02-12 17:56:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

人が数人……こんな何もない路地裏で立ち話を?アンドウは訝った。どちらにせよ、説法の機会だ。アンドウは狂信者なのだ、相手を選んではいけない。……と、立ち話をしているかに見える彼らの一人が青い火柱になった!「アババババーッ!」ここまで届く断末魔!

2011-02-12 18:20:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!?」集団の二人が悲鳴をあげ、残る一人から逃げようとするが、ゴウランガ!「アバババーババー!」「アバーッ!」ヒュンヒュンと舞う鬼火が彼らの体に引火、たちまち同様の人間松明となる!ゴウランガ!

2011-02-12 18:30:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンドウは凍りついたように動けず、ガタガタと震えながら、その一部始終を……最後の男が鬼火をまとわりつかせながら脇道へ歩き去って行く様子を呆然として見つめていた。歪んだ口の端からヨダレがこぼれる。「ア、アイエエエ……ア、ア、アーマゲドン……」アンドウは地面にへたり込んだ。

2011-02-12 18:42:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「ネクロマンティック・フィードバック」#2 終わり。#3へ続く

2011-02-12 21:08:35