答えを言わずにヒントを出す

答えをさっさと伝えた方が効率的に教えられるように思ってしまう。しかしそれでは相手の思考を促すという重要なステップを省略してしまい、理解と記憶を浅くしてしまう。迂遠なようでも本人に考えてもらう必要がある。
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shinshinohara @ShinShinohara

私は以前、質問されたら自分の考えを蕩々と(長々と)話していた。今も油断するとやらかしている。それはたぶん、自分の思索の深さを自慢したい思いがあるからだろう。「よくぞ聞いてくれました」とばかり、気分よく話すのだが、目の前の質問してくれた側は興味を失っている様子。

2016-07-23 16:55:10
shinshinohara @ShinShinohara

私の「ためになる話」は、私がご満悦なだけで、相手の心の琴線にはちっとも触れていなかった。そして悲しいかな、私の話はちっとも相手のためになっていないことにしばらくしたら気づかされる。これではまずい、と思うようになった。

2016-07-23 16:57:17
shinshinohara @ShinShinohara

一つ、ヒントになる経験がある。小学2年生だったか、助手席に座っていた私は運転する父に「なんで人間は生きていかなければならないの?」と質問した。だってテレビドラマでも生きるのがつらい、苦痛だというし、人間はどうせ死ぬ。だったらさっさと死んだ方がお得じゃないか、と。

2016-07-23 17:09:05
shinshinohara @ShinShinohara

父はしばらく考えて「難しい質問だな」と答えた。そして「ずっと自分で考え続けてごらん」と言われた。答えはもらえなかったが、その時からずっと私は考え続けている。もしあの時、安直に答えをもらっていたら考えなかったかもしれない。答えをもらわなかったからこそ考えたという面が否めない。

2016-07-23 17:11:22
shinshinohara @ShinShinohara

ならば、私がどのように考えているかを教えるよりも、本人に考えてもらった方がより思考が深まるのではないか。そう思うようになった。考えてみれば、プロ野球の選手がケチケチせずに極意を教えたとしても、生徒自身が考え努力しなければプロレベルになれない。本人にやってもらうしかないのだ。

2016-07-23 17:13:21
shinshinohara @ShinShinohara

そこでなるべく私が答えを言ってしまうのではなく、本人に考えてもらうようにしよう、と考えるようになった。しかしここで困ったことが一つ。日本の若者は自分の頭で考える訓練を受けていない、というか、そういう習慣を持ったことがない、ということだ。

2016-07-23 17:15:19
shinshinohara @ShinShinohara

「君はどう思う?」と話を向けても、自分の考えを突然聞かれて戸惑い、「分かりません」と小さくなって答えるのがオチ。これでは自分の頭で考えてもらうどころか、話が進まない。どうしたらいいだろう?いろいろ試行錯誤してみることにした。

2016-07-23 17:17:29
shinshinohara @ShinShinohara

相手から質問が飛んできた時は、安直に答えを言うのではなく、反問するようにした。ただし相手が反問に慣れないうちは答えが容易に推察できるように、ヒントをちりばめる。それでも最後のところは言わないようにして、「こういう条件が揃っている場合、どうなると思う?」と聞く。

2016-07-23 17:26:55
shinshinohara @ShinShinohara

十分にヒントをもらうから、オズオズしながらも「こうでしょうか?」と答える。私は少し大げさに「その通り!」「ご明察!」と反応。そうすることで、自分で考え、自分なりの答えを述べることへの恐怖を取り除いていく。しばらくすると、何を答えても叱られないと分かり、答えがすぐ出るようになる。

2016-07-23 17:29:48
shinshinohara @ShinShinohara

ヒントを述べている時点で、ほとんど答えを言ってしまったようなものでも、最後の最後で「さあ、君はどう思う?」と質問する場合は、話の流れをつかんで間違えないようにしようと必死になるから、頭はフル回転になる。「その通り!」と私が答えることで、自分の考えは間違っていなかった、と安心する。

2016-07-23 17:33:11
shinshinohara @ShinShinohara

自分の考えが追認される経験を積み上げると、自分の頭で考えることが好きになってくる。日本人は学校教育で正解を丸暗記する訓練ばかり受けているのでなかなか自分の頭で考える勇気を持てないが、指導する側がどんな答えも否定せず、「それは面白い発想だねえ」と前向きな反応をすれば違ってくる。

2016-07-23 17:35:34
shinshinohara @ShinShinohara

時々とんちんかんな答えがあっても否定せず、「そういう風に考えるのもアリかあ!」とか、「面白い発想だねえ」と前向きな反応を示すようにしたら、自分の頭で考える勇気を失わずに済む。自分の頭で考えることは、物事への理解を深め、記憶を刻むにも役立つ。だから自分の頭で考えたことは否定しない。

2016-07-23 17:38:04
shinshinohara @ShinShinohara

ヒントを十分にちりばめれば、そんなにとんちんかんな答えが出ることもない。もし意外な答えが来たら、それはそれなりの必然性があるので、面白がってちょっとその発想に付き合ってみるとよい。そうすると、教えるつもりだった自分が教わることになる。それもまた面白い。

2016-07-23 17:39:44
shinshinohara @ShinShinohara

私が語ってしまうのでなく、答えを言ってしまうのでなく、ヒントをどれだけちりばめたとしても最後には相手に答えを言ってもらう。自分の考えを述べてもらう。そうすることで、私が言葉で伝える以上に深みのある伝達が可能であることに気がついた。伝えるよりもやってもらうことが大切だったのだ。

2016-07-23 17:41:31
shinshinohara @ShinShinohara

私の考えを伝えるよりも本人に考えてもらう。私がやり方を教えるよりも本人にやってもらい、考えてもらう。ヒントさえちりばめれば、相当に深いところまで伝わる。伝えない方が深く伝わる、という面白い現象が起きる。

2016-07-23 17:43:03
shinshinohara @ShinShinohara

そう、伝わったのではない。本人が自分の頭で考え、自分で思考実験をやってみたからより深く理解でき、同じ答えにたどり着いたのだ。伝えようとするのではなく、本人にたどり着いてもらう。誘導は手伝うが、自分の足で歩いてもらうように、自分の頭で考えてもらう。

2016-07-23 17:45:12
shinshinohara @ShinShinohara

私が話すのではなく、反問し、答えてもらうようにすることで、かえって伝えにくいニュアンスも相手が習得できるようになった。話すのを我慢するのが、指導の要領なのかもしれない。

2016-07-23 17:46:28