イタリア人映画監督は革命のさなかで何をしていたか?(セルジオ・コルブッチの“革命三部作” 蔵臼 金助(イタリア製西部劇研究家)

マカロニウエスタンの映画作家であるセルジオ・コルブッチ監督の通称“革命三部作”、『豹/ジャガー』『ガンマン大連合』『進撃0号作戦』についての解説。
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

『イタリア人映画監督は革命のさなかで何をしていたか?』 (セルジオ・コルブッチの“革命三部作”) 蔵臼 金助(イタリア製西部劇研究家) pic.twitter.com/xfQ4W5apAJ

2016-08-20 14:07:12
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

1960年代半ばに“シーモンキー”という鑑賞用動物性プランクトンが流行ったことがあって、そのことを大学の飲み会で話していたら、食いついてきた女がいたのだ。

2016-08-20 14:08:11
蔵臼 金助 @klaus_kinske

「どんな格好なの?」と聞くので「最初は海老みたいだけど、そのうち手足が生え、夜中に水槽を抜け出して部屋中をぺたぺた歩き回る」と答えた。

2016-08-20 14:08:49
蔵臼 金助 @klaus_kinske

目を輝かせた女は、「観たい!観に行く!遊びに行く!」とはしゃいで、私は本来の目的を達し、35年経った今でも「あなた、あの時私に嘘ついたでしょ?」と言われ続けている。

2016-08-20 14:09:20
蔵臼 金助 @klaus_kinske

このように私はあちこちで無垢な人々に都市伝説の種を植え付けて放流し、その後のフォークロアの発展を観察するのを趣味にしている。

2016-08-20 14:10:08
蔵臼 金助 @klaus_kinske

先日もあるイベントで手足だけは長い若者から、「“プチブル”って何ですか?」と聞かれたので、「18世紀中期にできたイギリス原産の犬で、チワワとブルテリアの交配種だ。トイプードルよりも歴史は古い」と答えておいた。

2016-08-20 14:10:29
蔵臼 金助 @klaus_kinske

“プチブル”も“ウチゲバ”や“アカガリ”と一緒に、とっくに死語の仲間入りか…と、ため息つきながら。

2016-08-20 14:11:04
蔵臼 金助 @klaus_kinske

欧州製西部劇の歴史は実はトイプードルよりも古く(嘘です。ルイ16世の時代には既にトイプードルはきゃんきゃん吠えていた)、1960年にはダーク・ボガード主演の『黒い狼』、 pic.twitter.com/PBhx4zmpaY

2016-08-20 14:19:42
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1961年にはフランスでフェルナンデル主演の『ダイナマイト・ジャック』が作られていた。 pic.twitter.com/5heyToMhoL

2016-08-20 14:21:49
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そしてドイツでは1960年初頭から“ウィネットー”シリーズを初めとする、朴訥生真面目な先住民族を主人公とした西部劇が量産されていたのである。 pic.twitter.com/t0tcgYctot

2016-08-20 14:29:06
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

ではイタリアではどうだったかと言うと、『whisky and soda』という西部劇のアニメーションが同時期に作られたり、日本でも有名な『トッポ・ジージョ』のコーナーで西部劇のコーナーがあったりと

2016-08-20 14:30:03
蔵臼 金助 @klaus_kinske

(テーマ曲「poco a poco」は最古のマカロニウエスタンのサントラだと、個人的に思ってます)、まあそんなに力は入れていなかったのであります。 pic.twitter.com/3NVnVdYvhv

2016-08-20 14:34:25
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

状況を一変させたのは、セルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』(1964)だ。それはほとんど革命でもあった。 pic.twitter.com/fYl6iolThe

2016-08-20 14:35:12
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

アルメリアでイタリアに遠征してきたハリウッドのスタッフ&キャストがバイト感覚で作っていた疑似西部劇群(『シルバーレークの待伏せ』とか『荒野の愚連隊』とか『カサグランデのガンファイター』と言ったぬるい欧州製西部劇が続々作られていた)とは格段に異なる面白さだったのだ。

2016-08-20 14:37:24
蔵臼 金助 @klaus_kinske

それから一年も経たぬうちに欧州製西部劇の主な産地はチネチッタに移り、世界中にスパゲッティなウエスタンが、アルデンテの状態で提供されたのである。ドイツ製の伸びきったものとはまったく異なる歯応えの良さで。 pic.twitter.com/6r35mhffoy

2016-08-20 14:38:44
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

その後ほぼ10年以上に渡り、一説には700本近く製作されたと言われる欧州製西部劇だったが、さすがに4~5年でやることはやり尽くしてしまう。アルメリアの荒野とチネチッタのゴーストタウンのセットでリボルバーをぱんぱん撃ち合うだけでは、観客も飽きるってものだよ。

2016-08-20 14:39:29
蔵臼 金助 @klaus_kinske

それを救ったのが、ハリウッド・メジャーのイタリア製西部劇への資本投下だ。20世紀FOX、パラマウント、ワーナー・ブラザースと言った映画会社が、才能のある監督たちにハリウッドの金でマカロニウエスタンを作らせたのだ。 pic.twitter.com/isQtzF2byC

2016-08-20 14:44:39
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

そして、舞台も時代背景も変化した。イタリア人は19世紀の北米大陸西部開拓史に見切りをつけ、20世紀初頭のメキシコ革命にアクション映画の新たな活路を見出す。 pic.twitter.com/OdaZakQ6MP

2016-08-20 14:48:37
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

メキシコ革命を舞台にした活劇は西部劇から離れて、ジャンル的には戦争映画に近い。

2016-08-20 14:50:49
蔵臼 金助 @klaus_kinske

まず、武器が変わった。大量殺戮兵器(重機関銃、大砲、航空機による爆撃、強力な弾薬を用いるボルトアクションライフル。しかも大量)の登場により、マカロニウエスタンのトレードマークである“皆殺し”増量数が大幅にアップした。

2016-08-20 14:50:55
蔵臼 金助 @klaus_kinske

『さすらいのガンマン』撮影時に、「何かもっと人を大量に殺せる方法はないか? そうだ! ダイナマイトだ! ダイナマイトを使おう♪」と歓喜したセルジオ・コルブッチにとっては、願ったり叶ったりのシチュエーションだ。 pic.twitter.com/C073IUKaiD

2016-08-20 14:54:04
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

そのシチュエーションを具現化させるにはより多くの資金が必要であったが、それをハリウッドメジャーが後押しさせたのである。

2016-08-20 14:54:27
蔵臼 金助 @klaus_kinske

先鞭をつけたのは、1966年の『群盗荒野を裂く』だったと思う。資本は米国メジャーではなかったが、野心家のプロデューサー、ビアンコ・マニーニが当時『禁じられた抱擁』『禁じられた恋の島』で才覚を表したダミアーノ・ダミアーニに目をつけ、彼を社会派アクション監督へと路線変更を促す。

2016-08-20 14:56:24
蔵臼 金助 @klaus_kinske

野卑で無学の盗賊ジャン・マリア・ヴォロンテが戦いの中でイデオロギーに目覚める迄を描いた、マカロニウエスタンとしては珍しい「主張が込められた」作品が完成し、観客にも批評家にもウケが良く、話題となった。 pic.twitter.com/p5Ey5FmcpC

2016-08-20 14:57:43
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蔵臼 金助 @klaus_kinske

左翼活動家でもあったセルジオ・コルブッチはチャンスを伺っていたのだ。 pic.twitter.com/jH2v1DaZsz

2016-08-20 14:59:18
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