掌小説語り~自作つぃのべる集29~

自作つぃのべるのまとめです。 2014年11月分。
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リュカ @ryuka511

君は吸血鬼の私を恐れロクに話を聞いてくれない。私は、生まれて一度も人間の血を吸った事などない。かつて吸血鬼狩りを行った人間の所業が恐ろしくて近付けなかったのだ。だけど君は違うと思った。恐れられてもその想いは変わらなかった。だからいっそ、愛して欲しくて灰になる。 #twnovel

2014-11-01 00:31:37
リュカ @ryuka511

戦の勝利を祈る巫女姫に、私は密かな恋情を抱いていた。神に仕える貴女を、抱きしめたら罪になるのだろうか。「貴方に勝利を。」聖杯を掲げると、彼女はそっと目を伏せ囁いた。「どうぞご無事で。」その言葉は私の最大の護符。抱きしめる事は叶わなくとも、貴女の為に生還致します。 #twnovel

2014-11-01 23:18:00
リュカ @ryuka511

永遠の命があるという事は、永遠に愛し合える事だと思っていた。だが老いる事も死ぬ事も無い生は愛し合うには不向きだった。変化の無い日々は退屈で、やがて私達の心は愛し疲れて朽ち果てて。それでも命は尽きず、生に限りある世界には交われない。朽ちた心で二人きり、ただ生きる。 #twnovel

2014-11-02 23:07:08
リュカ @ryuka511

若き将軍が籠城する天守閣目指して敵兵が迫る。勝利を確信した敵兵の鬨の声がそこまで近付く。もはやこれまで、と目を閉じた将軍の顔を生温い液体が濡らした。顔を上げると夥しい量の血が紅蓮の雨の如く降り注ぐ。血濡れた刀を手に、将軍を庇うように立ちはだかる浪人の姿があった。 #twnovel

2014-11-03 23:16:44
リュカ @ryuka511

「ご無事で何よりです、若様。」背中越しに聞こえる声。「貴方は!」飢饉に苦しむ村人が城の備蓄を寄越せと押し寄せた事があった。追い払おうとする家老を将軍は止めたのだ。「可能な限り分けてやれ。」「若様! 何を仰いますか!」「戦に勝っても民の恨みを買っては意味が無い。」 #三連ツイノベ

2014-11-03 23:18:22
リュカ @ryuka511

「あの時の米の味、生涯忘れません。ご恩返しが出来て良かった。」「恩だなんて。」城にまで攻め込まれ国を守れなかった自分に、恩返しを受ける資格など無い。「若様が生きていらっしゃれば、道はあります。」夥しい量の血、そこにあるそれぞれの覚悟に若き将軍は泰平の世を誓った。 #三連ツイノベf

2014-11-03 23:18:53
リュカ @ryuka511

父上には父上なりの正義があったのでしょう。この国を守る為の、苦渋の選択だったのかもしれません。けれど僕には理解出来ない。実の娘が嫁いだ国を、国の都合で娘を嫁がせた国を、攻め滅ぼすなど許さない。国賊、親殺しの大罪人、何と言われようと構わない。妹の絶望を知るがいい。 #twnovel

2014-11-04 22:58:17
リュカ @ryuka511

ここは身寄りも希望も何も無い者が集まったスラム街で、僕は親に捨てられたのだと思っていた。だけどここは欠陥ロボットの廃棄場だったのだ。僕は人間ではなく、欠陥品で、要らない存在。そんな真実を知ってもなお、僕の機能は動き続けている。だからって今更どうしろって言うんだ。 #twnovel

2014-11-06 00:24:37
リュカ @ryuka511

吟遊詩人は唄う。彼ら民族が受けた苦難の歴史を、竪琴に乗せて唄う。弾圧を受けても彼は挫けず、街から街へ流れ、エンドレスラプソディを唄い続ける。それはやがて人々の心を打ち、彼を助ける力となって、歴史を動かす奔流となる。 #twnovel

2014-11-07 01:03:05
リュカ @ryuka511

腐りかけた木造校舎にその奇術師は住んでいた。かつての繁栄を無くした街だが育った街を捨てられなかった。披露する相手もいないトランプ捌きの手をふと止める。退廃した街に戻ってきた物好きがいるらしい。長い間会ってない幼馴染。「会いに行ってみるか。」私を覚えてるといいが。 #twnovel

2014-11-07 23:04:31
リュカ @ryuka511

女王の命令で反逆者は断頭台にかけられその首は大通りに晒された。遠巻きに首を見つめる民衆の前に女王が姿を現す。息を飲む民衆をよそに、女王は涙を零した。「無念であろう、苦しかろう。」死を命じたその口で憐れみの言葉を漏らす女王の釣り合いのとれた残酷性に民衆は戦慄する。 #twnovel

2014-11-09 00:20:18
リュカ @ryuka511

戦場から遠征軍が帰還した。凱旋する戦士達を民衆の歓声が包む。王の待つ城へ辿り着くと、王は労いの言葉と共に祝勝会の準備を命じた。華やかな宴は夜通し続く。笑顔で杯を交わす戦士達、上機嫌の王、吟遊詩人は戦士の英雄譚を唄い、民衆は英雄を一目見たいと城へ押し寄せる。 #twnovel

2014-11-09 23:52:58
リュカ @ryuka511

あぁ、これが現実であったなら。遠征軍に同行した神官は咽び泣く。同時に王も戦士も吟遊詩人も民衆も、全ての人は無惨な骸に戻る。美しい城も破壊と略奪の限りを尽くされた廃墟になった。遠征軍は神官を残し全滅、ただ一人帰還した彼は滅ぼされた王国に愕然となった。#三連ツイノベ #twnovel

2014-11-09 23:53:36
リュカ @ryuka511

戦の勝利と戦士達の無事を祈るのが私の役目であったのにと、彼は自分の無力さを責め続ける。ネクロマンサーでもある彼は、戦場から戦士達の亡骸を操り王国へ帰還した。王や民衆の亡骸を操り宴を開いた。それは弔いか贖罪か、彼自身の慰めか。彼自身にも解らぬまま幻の宴を繰り返す。 #三連ツイノベf

2014-11-09 23:54:28
リュカ @ryuka511

魔王を討った後、森の奥に隠居した。十数年後、魔王の後継者が現れ、力を貸してくれと懇願される。正直どうでも良かったが熱意にほだされ力を貸す事にした。だが人々は魔王をもう一度討てと他人事の様に言うばかり。何のために私は戻ってきたの? 馬鹿らしいから魔王に力を貸した。 #twnovel

2014-11-10 22:46:23
リュカ @ryuka511

敵の矢を受け落馬した所で記憶は途絶えた。自陣のテントで目を覚ます。落馬した時、戦友の絶叫を聞いた気がする。虚ろな意識の中聞いた死ぬなという叫び。人口呼吸をしたのだろう、血生臭い接吻の感触が蘇る。テントに奴の姿は無い。「俺は死なねぇよ。」熱い想いで戦場へ舞い戻る。 #twnovel

2014-11-12 00:07:05
リュカ @ryuka511

これが君にとって最良の選択だ。大丈夫、間違ってない。大丈夫だ、何度もシミュレーションした、ちゃんと言える。「これ以上関わらないでくれ。」君の言葉を遮る様に背を向けた。僕はこれから暴君を討つ逆臣になる。この国の、ひいては君の未来の為に。君は何も知らないままでいて。 #twnovel

2014-11-12 23:12:21
リュカ @ryuka511

飢饉に苦しむ国では赤ん坊の売買が横行した。赤ん坊を買うのは邪教の神官。邪神像建築に利用するのだ。信徒として育て、神の役に立てと過酷な建築現場に送り込む。完成した邪神像を彼らは乗っ取った。世界を恐怖に陥れた邪神を滅ぼした彼らの過酷な運命は伝説となって語り継がれる。 #twnovel

2014-11-14 00:46:00
リュカ @ryuka511

王国を滅ぼすと予言された子供を王は血眼になって探し国内の子供を片っ端から殺害した。王国は子を奪われた者達の悲しみと怒りで満ちる。彼らの怒りは訓練された城の兵士を容易く蹴散らし、憎き王を討つ。喜びと悲しみが入り混じる中、予言者だけが不敵に笑う。 #twnovel #twnvday

2014-11-14 23:43:03
リュカ @ryuka511

本物の翼なんて望めないから、ブリキの板で翼を作った。薄く軽いブリキなら空を飛べるかもしれないなんて、他愛ない憧れだったのに神様は許してくれないらしい。幾重にも重ねた羽は肌に無数の傷を刻む。空は高く遠い。飛べないブリキの翼は背に重くのしかかり、私を地に押し付ける。 #twnovel

2014-11-15 23:30:57
リュカ @ryuka511

欲望を何でも叶える不思議な石を富豪は探させていた。遺跡の奥で見つかったというその石を富豪は手に取る。大金を積んで手に入れた石だ、相応の働きをしてもらわねば。指輪だらけの手で石を撫でる彼はまだ知らない。富豪が石を探させた探検家が、富豪の破滅を石に願っていた事を。 #twnovel

2014-11-16 23:10:07
リュカ @ryuka511

天使も悪魔も毎日忙しい。世界のどこかで常に戦争が起きていて、迎えに行くべき死者が溢れているのだ。「何でこんなに忙しいのだ。」と嘆く死の国への使者達の中から声がする。「戦争好きな世界だからさ。」そう言って嗤ったのは、天使か悪魔か。今日も多くの死者を連れ、天を地を舞う。twnovel

2014-11-18 00:27:23
リュカ @ryuka511

反旗を翻そうとした我々に奴は呪いをかけた。彼女は連れ去られ、涙を流しながら神の塔を造らされている。解呪方法は解った。銀の鍵も入手済み。建設中の塔の何処かにある扉にこの鍵を挿せば、彼女は呪いから解放される。彼女と共にお前を料理してやるから待っていろ、傲慢なる神よ。 #twnovel

2014-11-18 23:05:37
リュカ @ryuka511

引金にかけた指が震える。銃口の先にいるのは射殺許可まで出たテロリストで、かつての上官。「撃ちたまえ。」「自分には出来ません。」「君は国家からその権利を保証されている。」彼の真っ直ぐな正義を知っている。どこで道は分たれたのか。テロを許さないという信念が、揺れる。 #twnovel

2014-11-19 23:16:13
リュカ @ryuka511

その歌い手が放つ歌声と竪琴の音は、聴いた者を死に至らしめる危険な魔法だった。呪詛の込もった歌が鼓膜を揺らせば誰も死から逃れられない。素性の知れぬ流浪の歌い手に注意せよと触れが出たが、歌い手の凶行は止められない。世界を呪って薄く笑いながら歌い手は街から街へ流れる。 #twnovel

2014-11-21 00:03:38