掌小説語り~自作つぃのべる集~26

自作つぃのべるのまとめです。 2014年8月分
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リュカ @ryuka511

見習いマジシャンの君はまだ一人で舞台に立てない。師匠のアシスタントをこなすのみ。夜の誰もいない舞台で懸命に練習する君を見かけてから僕は君の密かな観客になった。誰にも邪魔されないよう、一夜の舞台を君にあげる。君が自信を得られたら、堂々と君のファンだと名乗り出よう。 #twnovel

2014-08-01 00:48:34
リュカ @ryuka511

大臣は大勢の従者を連れ辺境の村を訪れた。「魔竜討伐の為この村の竜神を封印から解け。」だが村長は「竜神を安易に目覚めさせてはならない。」と首を振る。「このままでは世界が魔竜に滅ぼされるのだぞ!」「あれは魔の竜などではない。あれが世界を滅ぼすのなら、それは天意だ。」 #twnovel

2014-08-02 08:42:48
リュカ @ryuka511

仮面の涙が偽りなどと、一体誰が決めたのだ。涙を隠しきれぬから、道化の仮面に託すのだ。悲しみ憎しみ忘れぬよう、消えぬ絵の具で描くのだ。涙を拭ってくれた温き手は、あの日永久に失われたのだから。絶えぬ仮面の涙と共に、この手を血に染め駆け抜ける。 #twnovel

2014-08-03 00:12:35
リュカ @ryuka511

ろうそくと線香を買ってきた君に思わずカレンダーを見返す。「お盆はまだ先だよ?」「違うわよ。夏の最期だからちゃんと供養してあげないと。」「あぁ、そうか。」「未練残さずちゃんと滅びてもらわないとね。」頷いて線香を受け取る。世界の最期も間も無くだね。 #ひと夏の滅亡 #twnovel

2014-08-03 22:05:40
リュカ @ryuka511

夜更けに詩集を作るような夢見がちな奴だった。死にたいのなんて言ってたけど、まさか本当に自ら逝っちまうなんて。俺を人として見てくれたのはお前だけなのに、お前が居なくなったら俺はゴミ捨て場行きだ。目を開けろ、俺の名を呼べよ。 #twnovel 主の亡骸を古い人形は一心に見つめている。

2014-08-04 23:43:04
リュカ @ryuka511

あの日からずっと一緒に歩いてきた。君を一人に出来なくて。だけどそれは不自然な事。もうこの手を離さなくてはいけない。君をこれ以上連れてはいけない。君が生きたくなったらここでお別れ。僕は向こうへはもう戻れないから。向こうへ戻るべき君を引き留めていた僕をどうか許して。 #twnovel

2014-08-06 08:55:00
リュカ @ryuka511

異形と恐れられた私を唯一恐れなかった君。君と結ばれる夢を見た。だが夢は夢でしかなかった。どうせ朽ち果てる身、せめて君を思わせる暁の空に消えようと街を出る汽車に乗る。愚かな夢を見た私を許してくれ。君を私の穢れた毒牙にかけたく無いのだ。君の許可があったのだとしても。 #twnovel

2014-08-07 00:13:01
リュカ @ryuka511

街を騒がす義賊の正体は伯爵家の次男である。優秀な兄と比較され家を継ぐ権利も無い彼は第二の自分を作った。街を飛ぶ様に駆ける彼の活動は庶民から喝采を浴び貴族からは敵視される。誰も彼を捕らえられないと思われていた。彼の兄が、何も知らぬまま探偵として立ちはだかるまでは。 #twnovel

2014-08-07 23:25:01
リュカ @ryuka511

本当に綺麗なものなんてこの世にはないと思っていた。だけど君はいた。清廉潔白を具現化した君は、無償の愛をもって僕らに接する。やがて君の愛を独占しようと争いが起きた。公正な君は争いを止める術を持たない。本当に綺麗なものは存在しないのではない、存在してはならないのだ。 #twnovel

2014-08-08 22:49:58
リュカ @ryuka511

屠られた自分への弔いをしている。不思議な気分だった。バラバラにされた四肢を元に戻し死装束を整える。淡々とそれは進んでまるで他人事の様な気さえしてきた。「これは貴方がこちらへ来る為の儀式です。」そう微笑んだのは誰だったか。全てを終えた時、自分はどこへ行くのだろう。 #twnovel

2014-08-10 00:23:03
リュカ @ryuka511

一兵卒からのし上がった彼と代々王家に仕える騎士の青年。騎士団で行動を共にし生まれは違えど自分達は親友だと思っていた。青年が彼を城の祝勝会に招くまでは。礼儀作法など知らぬ彼は笑い者になり青年はそれに気付かない。彼は知る。青年が彼に抱いていたのは優越感と憐憫なのだ。 #twnovel

2014-08-11 00:54:07
リュカ @ryuka511

「戦の功労者が身分など気にするな」というあいつの言葉を、信じた俺が愚かだったのだ。あるいは城での宴など分不相応だと断るべきだったのだろうか。そうすれば、あいつと親友ごっこを続けられたかもしれない。それが幸福なのかは解らんが。本当に身分など関係ないのは、戦場だけだ。 #三連ツイノベ

2014-08-11 00:55:28
リュカ @ryuka511

お前の初陣での活躍を祝いたかった。王の耳に入ればきっと今後も取り立てられるだろうと宴に招いた。けどそれは誤りだったようだ。何かを間違ったのは確かなのにその過ちが何なのか最後まで解らなかった。それも含めて僕の罪は重いのだろう。次の戦で、お前の刃を受けてそう思った。 #三連ツイノベf

2014-08-11 00:56:21
リュカ @ryuka511

探偵は永い雨の夜に立ち尽くす。真実を暴く事は、果たして正しい事なのか。そこにあったのは無念と涙だけだった。闇から人を救ったつもりが、新たな闇に突き落としていただけなんて。事件を解決した今夜の一服は、ひどく不味かった。 #twnovel

2014-08-12 00:08:24
リュカ @ryuka511

夕陽は嫌いだと少年は空を睨む。故郷の燃える記憶。死屍累々たる光景と朧げな敵の姿。何故この村が襲われなきゃならない? 少年の仇討は世界の命運を左右するものになるが、彼には世界などどうでも良かった。世界が救われても村は戻らない。それでも何もせずにはいられないだけだ。 #twnovel

2014-08-12 22:07:31
リュカ @ryuka511

月が支配する夜の世界。海は月の光を受け静かにさざめく。淡い森の光は眠る生き物達が見る夢。闇夜から闇夜へ金色の瞳を光らせ彷徨う獏が群れを為す。砂時計が壊れた日から動かなくなった時は永遠に夜のまま、眠り続ける生き物を哀れむ獏だけが、その夢から夢へ蒸気のように漂う。 #twnovel

2014-08-14 00:07:36
リュカ @ryuka511

大人の楽しさを教えてくれたのは貴方でした。毎夜22時の気楽な約束。ラジオ一つで同じ時間を共有できた。想いを詰めた葉書とFAXに、周波数へ乗せた言葉のやり取り。「大丈夫全然大丈夫、なぁんも問題ないって!」貴方がよく口にした言葉は今も私の支えです。 #twnvday #twnovel

2014-08-14 21:51:53
リュカ @ryuka511

あれは他愛もなく穏やかで愚かな時間であった。私が人の心を持っていた頃。魔族と人の間に生まれ、人として育った数年は、私の中に美しい時間として記憶されている。だが、私が魔族の血を引いていると解った時の奴らの目は生涯忘れまい。お望み通り魔王として世界を滅ぼしてやろう。 #twnovel

2014-08-15 23:31:49
リュカ @ryuka511

夜の闇に紛れ、切り裂き魔と呼ばれる彼は屋敷のバルコニーに身を潜める。今宵の標的を定め高揚を抑えきれず口角を上げた。どんな宝石よりも君の血はきっと美しい。切り裂いた喉から溢れる鮮血は生命の証。それを見つめる事で僕は満たされる。殺しなんか趣味じゃない。ただの結果さ。 #twnovel

2014-08-16 23:55:31
リュカ @ryuka511

いつだって、欲しいものはもう誰かのもので、ならその他誰かごと手に入れようと思った。そしたらその誰かもまた別の誰かのものでそれも手に入れようと手を伸ばす。そうして辿っていったら世界ごと手に入る気がした。だけど気付いてしまった。誰のものでも無い僕の存在に。 #twnovel

2014-08-18 00:33:02
リュカ @ryuka511

今は亡き彼の人が目指した世界は訪れる事無く、世界は暗黒に堕ちていく。死して尚、光に満ちた世界を願い見守り続けた聖母の受けた衝撃は瞳から溢れ出で、聖母像の頬を伝う。それを見た人々は神に見放されたと自暴自棄になり世界の滅びを確定させた。 #世界もう滅ぼしたい協会 #twnovel

2014-08-18 23:11:21
リュカ @ryuka511

魔物に乗っ取られた神殿の奪還作戦から帰還したのは女戦士一人だけだった。よほど恐ろしい思いをしたのだろう、焦点の合わない瞳で震えている。神殿で何があったのかと問う神官達にも怯えた顔をするばかり。 #twnovel 女戦士は首を振る。言えるわけが無い。神官長が魔物と結託したなどと。

2014-08-19 22:49:05
リュカ @ryuka511

ここを最初に使ったのは俺だったらしい。それ以来、何故か知らないが俺は後続する奴をここで見つめている。年齢も性別も境遇も、ここへ来た理由も共感できる奴から理解し難い奴まで様々だ。ただ一つ、ここから先の行く末はどんな奴でも同じ。今日も俺はここで、命の終わる音を聞く。 #twnovel

2014-08-21 00:32:54
リュカ @ryuka511

君の魔笛の音は一瞬で強敵を殲滅した。「やっぱり私は世界のバランスを崩すのね。」唖然とする僕に君は悲しげに笑うと髪のリボンを解き差し出す。「君だけは私を忘れないで。」リボンを受け取った瞬間君は忽然と消える。魔王を討つ僕の旅は、消えたヒロインを探す旅に変わった。 #twnovel

2014-08-21 23:53:12
リュカ @ryuka511

世界平和を実現する為世界を一つにする。人種国境文化宗教性差格差、争いの素となるあらゆる違いを無くすべく、世界を融解し一つに纏めるのだ。母なる海に還り、平和な世界の為一つになろう。さぁ。いつまでそこにいるのだ、早く。 #twnovel さんざめく波の音、それが終わりの始まりだった。

2014-08-22 22:17:16