《ヴァルプルギスの華燭》三日目昼――第一の間

昼フェイズ、戦闘 その心は如何なるものか
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《ヴァルプルギスの華燭》管理アカウント @walpurgis_marry

三度目の光が君たちに降り注ぐ。 その輪の外で、誰かが言うだろう。命を懸けよ、と。 その輪の中で、君は叫ばねばならない。否、と。 懸けるならば力を。 己が力を、力のみを。 力を示せ。力を奮え。 そうしてその命に、三度目の喝采を。 #ヴァル華

2016-08-21 20:00:01
ジタ・トリウィア @walp_zi

扉を開けた。その先は、夜だった。 「……は」 ジタは目を瞬いた。先程明けたばかりの夜が、目の前に広がっていた。何でもありなのかよ、と口の中で言葉を転がして、笑って。ジタは、一歩踏み出した。溶けるように、扉が消えた。 「……いい、夜だ」 目を伏せる。風を、月を、全身で感じながら、

2016-08-22 20:43:13
ジタ・トリウィア @walp_zi

ジタは空に向かって、微笑んだ。風に靡く髪が月光を受けて煌めいていた。 「……さて、」 緩やかに、目を開く。白い双眸は夜を味わうように艶めく。それで周囲を見回した。 崩れた石灰。黴の広がる絨毯。——朽ちた玉座。ああ、とジタは笑った。 廃れた、誰もいない城。それが今回の戦場だった。

2016-08-22 20:43:18
アルティメット @ultbeelz

女人は静かにほくそ笑んでいた。彼との闘いの中ではある種最適ではなかろうか、と。 廃墟と化した城の中には人も魔の気配もなかった。 食料の確保も、寝床としても劣悪なこの場所を誰が好き好んで訪れようものか。 故に、"我々"のような異端こそが根城とするにふさわしい場所である。

2016-08-23 01:18:36
アルティメット @ultbeelz

闇の種族たる彼がその周囲を見渡してから少々時刻を要して、それは現れた。 昆虫の甲高い奇声。楽しみにしてはしゃぐ子供がごとく、巨大蜘蛛が城の壁を破壊してきた。 蜘蛛の右側の前足にはパーティにいた女人がぶら下がっていた。杖を両手に抱きかかえながら、ゆりかごに揺られる子のよにして。

2016-08-23 01:20:11
アルティメット @ultbeelz

「待ったか!? いや妾(わたし)も少々準備が遅れた。その点については詫びよう」 女人は軽く頭を下げた。もともとフードに隠れた頭とぶら下がっているせいで、ぐっと腰を曲げるような形で謝罪の意を示すことになった。イマイチしまりがないが、女人大したこととも考えず、杖の先端を向けた。

2016-08-23 01:21:00
アルティメット @ultbeelz

「改めて名乗ろう。吾(わたし)はアルティメット!文明を食いつぶし蹂躙する大蜘蛛にして捕食者。そして《王》である。  妾の艶めかしい姿を眼にするのは貴様が最後。我が究極たる姿からの進撃を許容し、畏敬を持て」 蜘蛛の言葉を代弁するかのように女人は雄弁に語る。

2016-08-23 01:21:54
アルティメット @ultbeelz

蜘蛛に供えられた《虚飾》が確かに声を張った。女人は蜘蛛であり、蜘蛛もまた女人そのもの。 「それを否定するのなら、武力と意思をもって壊して見せるがいい」 蜘蛛は跳躍した。巨体の体と俊敏性を生かし、ひとつ飛んでみせただけでジタへと向かう。その体を踏みつぶさんと6つの足が向かってきた。

2016-08-23 01:25:08
ジタ・トリウィア @walp_zi

謝罪の声。雄弁な語り。ジタは、小さく笑った。 「大丈夫、俺も来たところだよ」 ——と、返したところで蜘蛛が跳躍するのが見えた。血が騒ぐ。後方に飛び退く。風圧で肌が避ける。血が、溢れた。 「否定ねえ」 血は流れる。点々と大地を濡らす。それは形を変え。 「何を否定したらいいのかな?」

2016-08-23 08:13:41
ジタ・トリウィア @walp_zi

君が王であろうと、何であろうと。 「口で語り命じるよりは、分かりやすい語り方があるんじゃない?」 俺は今のところ君の語りを否定する気はないよ。肯定する気もないけど。 そう言いたげな笑みは浅く。大地に散った血は、アルティメットに向かって、鋭い矢となり放たれる。その数、六つ。

2016-08-23 08:13:53
アルティメット @ultbeelz

「そう」 やせ細った月のように曲がった口元。後方へ避けたとあらば、蜘蛛は足を張り立たせ、巨大な口を開いて咆哮した。 「否定すべき材料がないなら、気に食わないことでも構わない」

2016-08-23 12:47:20
アルティメット @ultbeelz

さして、それすらないなら言葉にしまい。血液が矢となり翔けるなら、女人が杖から蜘蛛の糸をワイヤーのようにして絡めとる。取り逃した二本ほどは蜘蛛の足を穿つが、蜘蛛を揺らすのみに留まった。液体であれ容易く搦め捕れたものは女人の杖に染み込む。

2016-08-23 12:49:33
アルティメット @ultbeelz

長い糸は血液の矢に飽き足らず、床に散らばる瓦礫を密着させて、彼へと殴りかかる挙動に変えた。

2016-08-23 12:49:56
ジタ・トリウィア @walp_zi

「気に食わないこともないんだけどなあ」 くつくつ、とジタは双眸を緩めた。目の前に迫る糸。避けようともせず、見つめる。糸に染みた彼の血が、その威力を弱めるよに囁く。動く。——支配する。 とはいえ、染みたそれがすべてを支配出来る訳もなく、ジタは瓦礫を巻き込んだ拳に殴られ、飛ばされた。

2016-08-23 19:40:59
ジタ・トリウィア @walp_zi

床に叩きつけられ、肌はいたるところが擦り切れている。ジタはゆっくりと立ち上がった。彼の足元、血溜まりが広がっている。 「君は、否定してほしいの?」 血は鳴動していた。立ち上がる挙動と共にまた血が溢れ、広がり。ジタは笑った。血は絶えず流れ、広がり続けている。

2016-08-23 19:41:05
アルティメット @ultbeelz

思い切り振り切ったはずだのに、杖の先端が、糸の先が、瓦礫が動きを弱まってしまう。 不純物の混じった物体は確かに彼を叩くが、決定打には欠ける。 女人は杖を抱いて蜘蛛の背に乗りかかった。血液の流れを遠見から確認するがため。

2016-08-23 23:48:06
アルティメット @ultbeelz

「叶うのなら否定が欲しい。  妾は対等な声が欲しい。王に刃向かう輩は敬服か畏怖ばかりだからつまらないからね」 そう吐き出しながら、女人は杖をかざした。蜘蛛は応じて地面をめくるよう咀嚼しながら彼へと突進した。地面をめくるのは血液の流動の阻害と、先の血の矢のような攻撃を防ぐ目的。

2016-08-23 23:52:37
ジタ・トリウィア @walp_zi

「否定が対等だとは限らなくない? それは、理不尽な我儘かもしれない」 少しばかり離れた彼女を見ながら、ジタはくつくつと笑ってみせた。 地面が捲れ上がる。体が揺れる。血は後方へ流れる。おやおや、と彼は目を瞬かせた。血は、絶えず溢れている。 「君は存外、寂しがり屋なのかもね」

2016-08-24 00:41:28
ジタ・トリウィア @walp_zi

白い双眸は浅く、やさしく歪んで。その背後で血は溜まり、巨大な拳を作る。蜘蛛の突進。ジタの体は簡単に吹き飛んだ。地面に叩きつけられる。血溜まりが広がる。彼は、咳き込むよに血を吐き出し。 「抱きしめて、あげようか」 血が象った拳は二つ。それは捲れた大地を押し退けつつ、蜘蛛へ向かう。

2016-08-24 00:41:33
ジタ・トリウィア @walp_zi

圧し潰すように——或いは、抱き潰すように——。 二つの拳は左右から、勢いをつけながら蜘蛛と女人へと迫る。

2016-08-24 00:41:39
アルティメット @ultbeelz

「否定しようがないのも事実だ」 王は孤高でなければならない。追従する者なく、ただひたすらに蹂躙する他にない。 だからこそ――

2016-08-24 01:26:44
アルティメット @ultbeelz

「さみしい……」 女人はフードの奥で眼を揺らした。 そんな感情が己から出ていることが信じられない。驚嘆に眼を見開き、ただ吃驚としてしまう。 しかして戦い、捕食することしか能のない蜘蛛は動きに乱れも迷いもない。 瓦礫をかみ砕いて飲み込む蜘蛛の眼は爛々と輝いていた。

2016-08-24 01:27:19
アルティメット @ultbeelz

――吐き出した血液の量だけ膨れ上がる拳が迫る。 蜘蛛にも勝るそれが飛んできた時、蜘蛛と女人は互いに"前"しか向いていなかった。左右より来るそれらを回避できなかった。 めき、と音がする。蜘蛛と女人を構成する身が軋みを上げた。荒々しい腕に抱かれ、あるいはその身は果てると云わんばかり。

2016-08-24 01:28:01
アルティメット @ultbeelz

「ガッ、ふぁ」 ――蜘蛛は節々に障害を負った。女人は半身が機能しなくなった。 杖を蜘蛛の背に付きたてながら女人は膝をつく。蜘蛛は不格好な体勢で踏ん張り、咆哮を響かせていた。 「……ッハハ、なるほどこれが"抱きしめられる"という事か」 獣よりも荒々しく、赤に塗れたものだったが。

2016-08-24 01:30:04
ジタ・トリウィア @walp_zi

「抱きしめられるのは初めて?」 小さく首を傾げながら、彼はそう笑った。体から流れ出る血は止まらず、彼は動けない。そんな彼の代わりに、抱きしめるかのよに、血は蜘蛛と女人を離さない。 「少しでも君の寂しさが紛れるといいね」 そう、微笑む笑みは浅く。しかして、その言葉は本心であった。

2016-08-24 06:16:21