#再びの妄想DM

レオナ @leo_msk_tdys

#再びの妄想DM それは、たぶん偶然。 僕は画面の向こうの彼女に 恋をした。 pic.twitter.com/vVDR2ZClmf

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1. 「もーマル、また？」 例によってマルのエゴサ。しかもなんかニヤニヤして。 なんかええ事でも書いてあるんかな。 「んー、今ええとこやねん」 なんやねん、ってマルの横から手元を覗き込む。 「…何、これ？」 なんか…物語？みたいなんが書いてある。 #再びの妄想DM

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2. 「んふふー。あんな、妄想」 「妄想？」 いや、妄想て…何？意味わからんわ。 曖昧な顔をしている俺を見て、自分のスマホを操作しながら、嬉しそうにマルが続ける。 #再びの妄想DM

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3. 「んーとな、妄想師と呼ばれる子らが、俺らをモデルにして書いとる話。 1ツイートでシチュエーションとかセリフだけのもあれば、ホンマに小説みたいなのもあって、結構面白いねん」 そう言うと手を止めて、画面を俺に見せた。 「“エイトで妄想”…？」 #再びの妄想DM

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4. 「このタグで検索すると、こうやってワーッと出てくんねん。ほら、いろんなのあるやろ？」 「へえー、ホンマや。何これぇ」 その数の多さとバラエティに富んだ内容に、単純に感心した。 次々とスクロールしていく。するとあるツイートが目に留まり、指を止めた。 #再びの妄想DM

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5. 落ち着いた雰囲気の読みやすい文章。 特に目立つ感じではないのに、なぜか惹きつけられた。 たぶん、他の子たちより少し大人？ 「あ、葉月ちゃん？その子、俺も好きやねん。なんかええやろ？」 俺の画像がアイコン。 名前は、葉月。 #再びの妄想DM

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6. 自宅に戻りシャワーを浴びて、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。 グラスに注いで一口飲んで、スマホを手に取った。 ツイッターをインストールして、アカウントを作成する。 「名前は……倉子」 アイコンも倉子の画像にした。 それを見て、ふっと笑みが漏れた。 #再びの妄想DM

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7. なんか自分じゃないみたいや。ちょっと楽しくなってきたな。 そして、“葉月”を探す。 「あった」 妄想タグから、手探りで彼女のアカウントへ飛ぶ。 俺の画像のアイコン。そのバックには青空の画像が広がっていた。 #再びの妄想DM

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8. 彼女のツイートを見ると、そこに妄想は書いてなかった。 「ん？どこにあるんやろ」 ツイートを遡る。するとやがて、妄想と思しきものが出てきた。 先に見たのは、どうやら誰かへの返事らしかった。 「ん〜、なんかめんどいなあ。妄想だけ見たいんやけど」 #再びの妄想DM

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9. 「…ん？過去のものは“いいね”？……これ？」 試しに“いいね”と書かれた四角をタップする。 「…あった！」 宝箱を見つけた俺は、まずは一番手近な話を読み始めた。 それは短めのマルの話。 その次は信ちゃんの話。 どんどん遡って、夢中で読み耽った。 #再びの妄想DM

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10. そして、最初に見たいくつかのツイートは、話の感想への返事だという事もわかった。 それらも丁寧な言葉遣いで、彼女の話の雰囲気と合っていた。 気づけばビールはすっかりぬるくなっていて、時間の経過を知らせた。 どうやら俺は彼女にハマってしまったらしい。 #再びの妄想DM

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11. それから俺は、毎晩彼女の話を楽しみに、ツイッターを開いた。 彼女は毎日ではなくとも、2、3日に一度は新しい話を書いていた。 今日はすばるくんの話。 それはラブストーリーで、すばるくんの不器用さが、話を切なくもあたたかい印象に仕上げていた。 #再びの妄想DM

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12. 気持ちよく読み終えた後、ふと気づいたことがあった。 「あれ、俺の話、少なくない？」 今日はすばるくんやろ。 昨日はヤス、一昨日はマル、その前は信ちゃん。 マル 信ちゃん 信ちゃん ヤス マル マル…… 俺、全然出てこおへん。 #再びの妄想DM

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13. この子、俺のファンやんなぁ？ なんで俺の話、こんな少ないん？ ふとした疑問から、それは嫉妬に…かどうかわからんけど、とにかくちょっと面白くなかった。 彼女に直接聞いてみたかった。 でも、どうやって？ 会話は、できれば他の人には読まれたくない。 #再びの妄想DM

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14. すると、画面下部のメールのマークに気づいた。 《メッセージ》 これはきっとーー “彼女と話せるかもしれない” そう思うと、さっきまでの苛立ちのようなものを忘れ、指先に緊張が走る。 彼女宛の画面に、少しだけ震える指で、メッセージを書いた。 #再びの妄想DM

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15. 《こんばんは、初めまして。 聞きたい事があるんですけど、大倉くんのファンですよね？ それなのに、どうして大倉くんのお話が少ないんですか？》 少し不躾かと後悔したのは、後の祭りだった。 こんなん、返事してくれへんかもしれんやん。 #再びの妄想DM

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16. 案の定、暫くしてもスマホには何の通知もなかった。 そらそうやんな。初めましてでいきなりあんなん、失礼な奴やと思うやろ。 グラスに残っていたビールを飲み干し、もう寝よかな、なんて諦めたところで、スマホが着信を知らせた。 見ると、メールのマークに①。 #再びの妄想DM

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17. ドキドキしながら、メッセージを開く。 送り主は“葉月”。 〈こんばんは、初めまして。メッセージありがとうございます。 どうして私が大倉くんファンだと思ったのですか？〉 来た！ バーチャルな感覚を拭いきれなかった俺に、降って湧いたリアル。 #再びの妄想DM

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18. 即、返事をする。 彼女から返事が来た事に興奮していて、質問に質問で返された事には気づいていなかった。 《アイコンが大倉くんだから》 もう、受け答えが小学生やん！ なんやねん、俺！ 返信してすぐ、頭を抱えた。 ホンマに、俺いくつやねん…。 #再びの妄想DM

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19. 〈そっか。…そうですよね〉 次に送られてきた彼女のメッセージは、なんとも歯切れの悪い言葉だった。 《何か理由があるんですか？》 知りたいのと、せっかく繋がれた機会を逃したくない一心で、俺は言葉を送った。 #再びの妄想DM

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20. 〈んー…書かない理由があるんじゃなくて、今は他のメンバーを書きたいんです〉 《どうして？》 何がそう思わせてんの？ 〈マルちゃんは最近すごく色っぽいし、ヒナちゃんのカッコよさにも、ときめいちゃってるんです。だから〉 今度はホンマに嫉妬した。 #再びの妄想DM

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21. 《大倉くんも色っぽいしカッコいいと思うけど》 って、自分を擁護してる俺…どこがカッコええねん！ 〈うん、そうなんだけどね…〉 だから！何！ 〈拗らせてるの。自分で勝手に〉 …どういうこと？ 《…私でよかったら、聞くわよ？》 #再びの妄想DM

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22. またやってもうた！ あー、今度こそ返事けえへんかも…。 自分の失言に焦って、また頭を抱える。 半分諦めて画面を見ると、一つグレーのふきだしが増えた。 〈あはは！どうして上からなの！普通は“聞かせて”でしょ？〉 思いもよらない反応が返ってきた。 #再びの妄想DM

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23. え、なんでウケてくれたん？ 戸惑っていると、また一つ。 《さすが“倉子ちゃん”だね》 …なるほど。 たしかに、彼女の画面にはきっと、俺のアイコン・倉子が映ってる。それにふきだしがついとるんやから、倉子が喋ってるように見えるんやろ。 #再びの妄想DM

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24. 少し気を許してくれたのか、彼女は少しずつ想いを話してくれた。 《大倉くんは好き。好きなはず…なんだけど、最近は彼にときめかなくて。 それはたぶんね、彼がカッコいいから》 《…なんか矛盾してない？》 なら、ときめいてくれよ！ ますますわかれへん。 #再びの妄想DM