問題「国名が由来の元素は全部でいくつあるか?」

2016年11月30日、113番元素に対する、日本という国名を由来とした命名「ニホニウム(Nh)」が正式に受理されました。その際に飛び出したひょんなツイートを受けての一連のツイート備忘録です。
63
元素学たん@元素本発売中! @gensogaku

いやしかしこれは私の勉強不足なんだけど、命名者が厳密に何を意図して名付けたか、っていうのは、必ずしもたどれるとは限らない部分もあって、難しいところだね。あと仮に辿れてもかなり勉強しないと駄目ね。まず原著読むのは必須でしょー、それから時代背景でしょー、あとー人間関係とかー……

2016-12-01 22:39:17


ルテニウムの由来である「ルテニア」とは?

蒼鉛さん @MiracleBismuth

@gensogaku 今までルテニアって地域名だと思ってたんですけど、ひょっとしてロシアの古名としてのルテニアと地域名としてのルテニアの二種類があります? 元素111の新知識ではロシアの古名と書いてあるのに対しwikipediaのルテニアは地域となっていたので。

2016-12-01 22:09:38
元素学たん@元素本発売中! @gensogaku

@MiracleBismuth 私も詳しくないのですが、小ロシア、という地域がRuの由来とする本もあります。小ロシアとロシアの違いは恥ずかしながら存じ上げず…

2016-12-01 22:25:55
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

@gensogaku @MiracleBismuth ルテニア=ロシアの古名と言うのはかなり微妙そうです。ルテニアこれ自体はルーシのラテン語表記であり、ルーシがロシアの国名の由来になったのは間違いないのですが、語源が一緒でも関連性も一緒とは言えなさそうです。

2016-12-01 22:37:39
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

ルテニウムの由来はルテニアで間違いないが、ルテニアとは何ぞやと言われると、調べるとロシアの古名と言うのはかなり微妙な気がしてきた。ロシアはルテニアと同じく語源をルーシに因むのは間違いないし、ルーシに起こった国家としてキエフ大公国が深いつながりがあるのも確か。

2016-12-01 22:43:31
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

ただ、ルーシやルテニアという地域は国が栄えてはつぶれをやたら繰り返した「地域」であり、通常複数の国家を含んだ地域名である。国名である。特にルテニウムの語源であるルテニアはほぼ地域名である。

2016-12-01 22:47:15
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

もしルテニウムの語源が一歩進めてルーシに因むといえば、ルーシに起こり現在のロシアとも歴史的なつながりの深いキエフ大公国の国号と一致するので、ギリギリ「ロシアの古名」と言えるかもしれない。ただルテニアと言っているのでこの言説は成り立たないし、言語を変えてしまってはなんとも屁理屈的。

2016-12-01 22:48:23
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

ルテニウムは小ロシア由来と言うのも微妙。小ロシアという地域概念が発達したのはルーシ(キエフ大公国)が滅び分裂した後に生じた概念。更にルテニウム発見前後の時代には現在のウクライナあたりを指す言葉であり、この頃から文字通り小さいという意味で侮蔑的な意味で使われ始めたからである。

2016-12-01 22:55:29
エビフライ@宇宙の人 @kiruria281

いずれにしても「ルテニア」を「ロシアの古名」と言うのは間違いではないが、ここでいうルテニアは1つの特定の国家、あるいはそれの古い名を示している、と言う説明は、個人的には違うと思う。国家というピンポイントではなく地域名と言う緩い言い方なら間違いなく正解。

2016-12-01 22:58:06
火狐 @hi_kitune

@gensogaku @kiruria281 @MiracleBismuth ちょっと調べてみたのですが英語版wikipediaのクラウスのページen.wikipedia.org/wiki/Karl_Erns… の参考文献[9]の論文には祖国ロシアの栄誉ちなみラテン語名Rusから名づけたとあります

2016-12-01 23:38:20
火狐 @hi_kitune

@gensogaku @kiruria281 @MiracleBismuth その論文のリンクですtechnology.matthey.com/article/40/4/1… あとこれも英語ウィキペディアからですがオサンはドイツ生まれのドイツ人らしいですね 文字数よりリンク略

2016-12-01 23:41:19

古名に由来する場合、それを「国名由来」とするか「地域名由来」とするかの判断は難しいようです。

参考までに、原著がロシア人によって書かれた有名な元素本として『化学元素発見のみち』(D・N・トリフォノフ V・D・トリフォノフ 著, 坂上正信 日吉芳朗 訳, 内田老鶴圃, 原著は1980年, 訳書は1994年)というものがありますが、これのルテニウムの項には次のようにあります。

「その元素の名には,ロシアに対するラテン語(Ruthenia)からみちびかれています。クラウスは愛国的な感情と,この分野のすべての研究がロシアでなされたこと(オザン,スニアデーツキ,クラウス)を示そうとしてこの名前をその元素に与えました.」

この本は古くからある比較的有名な元素本で、多くの新しい元素本がこの本をリファレンスしていますから、現在出回っている多くの元素本ではルテニアをロシアの古名と説明しています。また上述にもあるように、オサンもロシア人と表記されることがほとんどです(ドイツ人とする言説は初めて聞きました。真偽を辿らねばなりませんね)。

この問題、特にロシアの歴史や文化について私は無知ですので、みなさんのご意見をお待ちしております。


「国名由来元素」談のおわりに

蒼鉛さん @MiracleBismuth

今日分かったこと。 ・アメリシウムは国名由来ではない ・ルテニウムはむずかしい

2016-12-01 23:23:45
元素学たん@元素本発売中! @gensogaku

私たちは日本にいるからピンと来ないのだけど、国っていうのは結構ころころ名前が変わるし有無すら変わる……ということが、国名由来の元素はいくつあるか?という問の答えを複雑にしているわけだね。

2016-12-01 22:12:46
元素学たん@元素本発売中! @gensogaku

国名や国そのものは、時間が流れることで案外容易になくなったり忘れ去られたりする。だからこそ、なんだけど、今回のニホ二ウムという命名を、日本人の私は嬉しく思うよ。周期表は、国や国名よりもはるかに時間に対する耐久性がある。たぶん、人類が化学という営みをやめるその日まで、なくならない。

2016-12-01 22:16:43
元素学たん@元素本発売中! @gensogaku

グローバル化が進む昨今、こうした「自国の誉れ」のような某に憧憬しすぎるのも賛否両論のところかと思うけど、私日本人だし化学徒なんで、まあ、うん、嬉しい。そしてもちろん、Nhの合成を成し遂げた森田先生とそのグループにも称賛を送りたいね。

2016-12-01 22:21:33