編集部イチオシ

「へら絞り法」の加工精度を検証し、ブラックホールの撮像をめざす。これまで行った「へら絞りアンテナ」の精度検証まとめと今後の課題

クラウドファンドでその研究資金集めています。これまでの研究検討のまとめ https://academist-cf.com/projects/71
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

さて、アンテナ面の精度だけではなく、その形状(デコボコ具合)を調べてみた。するとある方向にはアンテナは広がり、その直角方向にはすぼんでいることが判った。作った8枚の全部がこの特徴をもっていることが判った。なぜだろう? pic.twitter.com/3srEKaxYNQ

2018-08-08 13:25:51
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

アンテナ面を調べると、ある方向に”目”が平行に走っている。へら絞り加工でできたものではなく、アルミ板にもとからあるものらしい。これはアルミ板製造時の圧延工程でついたもので、残留応力がこの方向に板を反らせていることが判った。 pic.twitter.com/0vWWl7tLoL

2018-08-08 13:30:40
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

残留応力はへら絞りアンテナの面精度を36~70ミクロンrmsほど悪化させているようだ。この残留応力を消し去ることができれば、面精度はもっと向上すると考え、焼き鈍し(熱加工)を加えて、面精度がどうなるか調べることにしらた。

2018-08-08 13:33:42
三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

絞り加工+焼き鈍し+調整絞り、と焼き鈍しを入れたところ、ついに30ミクロン台の面精度になった!また面の凹凸が半径によって変わる残差分布となり、これは金型自体の凹凸が表れているのではないか?と思われた。 pic.twitter.com/4Kpp9unGOy

2018-08-09 13:05:18
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

ここまで、研究結果をまとめると「へら絞り加工自体はもとの金型のかたちを大変よい精度で転写する。焼き鈍しでアルミ板のくせを除去し、金型自体の面精度が良くすれば、きっと良いアンテナ面ができるに違いない!」ということになった。良い金型を新しく作るにはお金が。。。。 pic.twitter.com/lbIybQFGhE

2018-08-09 13:11:30
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

そこで、古い30cm口径の金型を再切削で高精度化し、金型面とへら絞りアンテナ面の形状をともに測って比べることにした。金型は20kgくらい。これだけ軽量だとNAOJ技術センタの測定器にも載せられる(1m金型は重すぎ)。4ミクロンの精度で上々。残差分布は半径に依存するデコボコがある。 pic.twitter.com/fxMXsIQa1F

2018-08-10 10:47:47
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

30cmの小さい奴なら、低コストで、金型面とへら絞りアンテナ面の比較ができる。

2018-08-10 10:49:20
三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

へら絞り加工+焼き鈍し、の結果15ミクロン精度のパラボラ面が出来上がった。もちろん凹凸があるが、その分布は、金型の凹凸に対応している。 従って、「へら絞り加工+焼き鈍し」では元々の金型の形を20ミクロン精度で転写できることになる。実用のためには、2m口径でもうまくいくかである。 pic.twitter.com/9obffrdxT1

2018-08-10 12:58:14
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

2mの精密金型をつくって、へら絞りを行い、精度を調べるにはさすがにお金がないとできない。科研費もなかなかつかないしで、研究は停滞することになった。

2018-08-10 12:59:48
三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

宇宙研の坪井さんが「大澤科学技術財団の研究助成に出してみては?」と言ってきた。宇宙研にはその張り紙があったらしい。金属加工に関する研究助成だ。しぼり加工の研究は採用してくれるだろうか?ダメ元で応募した(2016年)。

2018-08-10 14:29:24
三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

ところが、大変幸運なことに、採択していただいた。それも申請額満額である。大澤科学技術振興財団は切削工具などを製造するオーエスジー株式会社(OSG)が作った財団だった。知り合いの銀行員にきくと、OSGは借入ゼロの優良企業なんだそうだ。osawazaidan.or.jp

2018-08-10 15:46:01
三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

贈呈式がOSG本社のある豊川(愛知県)で行われた。かつて空電研があり、ペンジアス・ウイルソンより先に宇宙背景放射を検出したところだ。聞いて見ると昔のことなのでどなたもご存じないようだった。東京天文台の台長に大澤さんと言う方がいたので、親類筋かと思ったが違うそうである。また(続く) pic.twitter.com/rwTuJkG6t6

2018-08-12 14:09:31
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

OSGは三鷹にあったことがあるので、天文台を何かつながりがあったのかとも考えたが、なんの関係もないそうである。なにかの縁で採択されたのかと考えたが、全く純粋な審査での採用らしい。

2018-08-12 14:12:18
三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

贈呈式の際に豊川駅まで迎えに来られた方が福井康雄さん(有名な天文学者と同姓同名)だったので、また驚いた。

2018-08-12 14:16:51
三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

切削がすぐできるかと思ったら難航。金型は鋳物である。ほとんどの切削屋は「鋳物は削ると細かい粉がでるから、嫌」といって引き受け手がいない。ようやく富山の伊勢領製作所が見つかって、2.4m金型再切削を行った(2017年後半)twitter.com/344Makoto/stat…

2018-08-14 13:00:12
三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

再切削をおこなった金型は、かって早稲田の64素子干渉計のアンテナを作るのに用いた由緒ある(つまり40年くらい前からある)金型である。切削を行う前の測定では面精度300ミクロンrmくらいであった。春日さんが「どうせ300ミクロンくらいだろう」と言っていた数字と一致する。(続く) pic.twitter.com/aAYvt6joxe

2018-08-14 21:49:36
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

つまり「へら絞りの加工精度はあんまり。。。」という説は精度の良くない金型を使った場合の話なのだろう。金型精度が悪ければ、へら絞り加工は、それをそのまま正確に再生してしまうから、当然、悪い面精度のアンテナになる。 pic.twitter.com/Qlv5bOqo1D

2018-08-14 21:55:38
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

切削後、金型面をレーザトラッカ使って測定してもらった。精度は10倍改善されて32ミクロンになった。しかし中心から50センチあたりにリング上の凹みがある。金型をよく調べると、修繕のための金属の埋め物がある。これにぶつかり、切削の刃が予定軌道からずれたのかもしれない。やり直しである。 pic.twitter.com/ibqdI0o6G8

2018-08-15 12:38:59
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

しかし、金型の精度は20ミクロンは欲しい。伊勢領さんの当初の感触では10ミクロン台はでる、ということだった。もう一度、金型の切削を行うことにした。スケジュール調整が難しく、12月第4週に行うことになった(2017年暮)。 pic.twitter.com/dFN1Peb9Zx

2018-08-15 22:40:54
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

例の埋め物の辺りで刃の軌道をきつめに設定、切削を実行した。すぐに、金型面の測定を行ったが、10月と違って測定値がおかしい。基準点座標の測定と金型面測定を交互に行い、座標の補正をかけて解析した。精度24ミクロンになったが、面の凹凸の様子がおかしい。測定誤差がたくさんのっているらしい。 pic.twitter.com/lJbCRjYTDB

2018-08-15 22:47:37
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

少なくとも面精度20ミクロン台の金型に仕上がったことは確認できた。これで良しとした(きっと本当はもっと精度は良いに違いない)。次は、この金型でへら絞りアンテナを作る番である。

2018-08-15 22:51:17
三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

年が明けて2018年2月末、北嶋絞製作所で、へら絞り加工が始まった。元のアルミ板は3ミリ厚。直径2 mちょっとの円型に切って金型にあて、固定しているところ。アルミの平板は本当にペラペラ(これで一定の剛性のあるアンテナになるのか?と心配になるほどです)。 pic.twitter.com/YeJqEBwQFD

2018-08-18 10:53:37
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

クラウドファンド academist-cf.com/projects/71 のリターンの説明にあるこの絞り加工の写真は2018年3月の加工の時のもの。 pic.twitter.com/R3SqPJfKqV

2018-08-18 11:01:25
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三好 真@ブラックホール撮像、まだ先。 @344Makoto

加工が終わり、金型からはずしたところ。表面は油が付着しているし、回転加工するうちにできる同心円状のキズがある。ただこのキズはかなり浅くて、面の精度には影響しない。この段階ではアンテナの縁はまだ加工していない。このあと、熱加工(焼き鈍し)を近所の工場で行う。熱して、冷まして一日。 pic.twitter.com/0JwXV7iCGC

2018-08-18 11:26:21
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