日本人が食べてるパンコムギの起源候補地アルメニアで戦争が始まったー「アルメニアの野生コムギ種と農耕起源」を読むー

パンコムギは、アルメニアを含むコーカサス地方で先史時代の農耕民が栽培してた説が有力になってきました。
94
巫俊(ふしゅん) @fushunia

ちょっと待って!小麦の起源候補地のひとつのアルメニアが全面戦争になったら、西アジアの穀物・植物栽培の歴史の研究が遅れるんじゃ?

2020-09-28 02:30:50
巫俊(ふしゅん) @fushunia

コラム「コムギ博士の1分豆知識」 Vol.20 アルメニアの野生小麦とアララト山の話 homemade.co.jp/column/archive…

2020-09-28 02:43:02
巫俊(ふしゅん) @fushunia

「私たちが食べている小麦と同じコムギ属に分類される野生種は世界に4種ありますが、アルメニアにはそのうちの3種が生えています。しかも、そのうちの2種、ウラルツ小麦とアルメニア小麦は、学名をそれぞれT・ウラルツ、T・アララティカムと言い、どちらもアルメニアの地名由来です。」

2020-09-28 02:41:58
巫俊(ふしゅん) @fushunia

リンゴの原産地はカフカスの北麓で、ブドウの原産地は南カフカスらしい。カフカスの複雑な地形と高低差は、地理的隔離障壁になるので、わずかな距離でも種分化を助長する。そのため、小麦や果樹などの有用植物を人類に提供することになった。

2019-12-16 01:39:38
巫俊(ふしゅん) @fushunia

何も無い砂漠の中に大河が流れてるメソポタミアと、植物の宝庫のカフカスが人類の文明揺籃の地になったとのことです。適切な距離関係だったとか。現在のパン小麦の起源も、カフカスから地中海岸に出てきた野生の小麦と人類が接触し、その栽培小麦がカフカスでもう一度野生種と交雑したりして誕生した。

2019-12-16 01:45:11
巫俊(ふしゅん) @fushunia

たしか、このツイートはアルメニアの野生小麦の研究論文を読みながら書いたはずなので、私たちが食べてる小麦は、今戦争をやってるところで、太古の昔に生まれたもの。 twitter.com/fushunia/statu…

2020-09-28 01:26:10
巫俊(ふしゅん) @fushunia

調査報告「アルメニアの野生コムギ種と農耕起源」(丹野 研一・藤島 文・有村 誠、『西アジア考古学』第19号、2018年) このタイトルで、Google検索すると、Researchmapって名前のPDFのリンクが出てくるから、クリックすると、この論文が誰でも読めます。

2020-09-28 02:38:30
巫俊(ふしゅん) @fushunia

この論文、国会図書館でコピーしたんだけど、いつの間にか、ネットで公開されてました!専門家の理系の議論は分かりませんが、文化とコムギの匂いを感じることはできるので、是非読んでみてください。図とか表、写真を見るだけでも、へぇーってなります。

2020-09-28 02:48:02
巫俊(ふしゅん) @fushunia

世界に4種あるという、コムギの野生種は、 ウラルトゥコムギ(AAゲノム) アインコルンコムギ(AAゲノム) エンマーコムギ(AABBゲノム) アルメニアコムギ(AAGGゲノム) だそうです。そして、パンに使う栽培種パンコムギのDNAは、AABBDDゲノムで、これらのどれかが交雑したものの子孫がパンコムギ

2020-09-28 03:24:06
巫俊(ふしゅん) @fushunia

パンコムギ(AABBDDゲノム)は、野生種コムギ属4種には無いDDゲノムを持ってるんだけど、これはエギロプス属のタルホコムギと最後に交わったからだそうです。タルホコムギはコムギと呼ばれてるけど、コムギ属では無いから、ちょっと違う植物だった(素人が見ると、どれも小麦にしか見えないけど)。

2020-09-28 03:29:57
巫俊(ふしゅん) @fushunia

へぇ、ということは、パスタやマカロニに使う「デュラムコムギ」(AABBゲノム)は、野生コムギ属4種のうち、エンマーコムギ(AABBゲノム)の直系子孫だから、パンコムギが交雑した傍系の家系だとすると、こっちは直系を誇ってたりする訳ですね(歴史上の王家っぽく言うと)。

2020-09-28 03:37:58
巫俊(ふしゅん) @fushunia

室町幕府の第10代将軍・足利義稙(あしかがよしたね)が、デュラムコムギに見えてきた。たぶん、パスタかマカロニだと思う。稙(たね)って、名前がコムギっぽい。

2020-09-28 03:40:55
巫俊(ふしゅん) @fushunia

論文によると、カスピ海南西部からコーカサス地方にかけては、エンマーコムギの本来の自生地では無いとのことで、相当無理な環境で生育されてたので、寒さで全滅しかけるなどして、交雑種(その子孫がパンに使うパンコムギ)が代わりに登場したのではないか?とのことです。

2020-09-28 04:20:17
巫俊(ふしゅん) @fushunia

アルメニアとその隣国アゼルバイジャンには、紀元前6000年から前5000年にかけての農耕遺跡が存在してて、アゼルバイジャンのギョイテペ遺跡では、紀元前6000年に近い頃から、エンマーコムギと裸性コムギ(デュラムコムギかパンコムギ)が、大差無い量で検出されてるとありました。

2020-09-28 04:48:41
巫俊(ふしゅん) @fushunia

それが銅石併用時代や青銅器時代になると、しだいに裸性コムギの方が多くなるとのことで、見つかった遺跡での居住の最初から、それらを栽培してたとのことです。なお、量としてはコムギとは別の種類のオオムキの方が多く出土してます。

2020-09-28 04:51:14
巫俊(ふしゅん) @fushunia

アゼルバイジャンの戦車が撃破されてる映像もあって、「うわぁ…」と思ったのですが、数を減らしつつも突破して、アルメニアの領土(とくに東南部の実効支配地域)を分断してしまえば、成功ということですか。

2020-09-28 04:56:00
巫俊(ふしゅん) @fushunia

アゼルバイジャンの電撃戦で、分断されそうになってる場所(アルメニア東南部)、論文によると、パンコムギの祖先栽培種と交雑してた野生種タルホコムギが群生してるみたいです。

2020-09-28 04:59:46
巫俊(ふしゅん) @fushunia

私たちが食べてる小麦(パンコムギ)、つまりパンとかうどんの材料は、紀元前6000年近く前に、アルメニア周辺にいた先史時代の農耕民が栽培してたもので、繰り返し収穫するうちに、アルメニアの寒さに適応した野生種のタルホコムギと交雑して、パンコムギが生まれたとのことでした。

2020-09-28 05:10:30
巫俊(ふしゅん) @fushunia

グルジア西部では、現在のパンコムギが生まれる以前から存在した古い栽培種(アルメニアコムギ)の栽培地があったが、グルジア西部のその栽培地は全滅したとあり、戦争が長期化すれば、貴重なアルメニアのコムギ(先史時代から続く種)はどうなってしまうのか?心配ですね。

2020-09-28 05:17:17
巫俊(ふしゅん) @fushunia

紀元前6000年から前5000年の間に、トルコ南東部やシリア北部の農耕が、アルメニア・アゼルバイジャンに伝来したとありまして、外から持ち込まれた先史栽培種のコムギが植え付けられ、アルメニアに現在も群生してる別の野生タルホコムギ(コムギ属の植物では無い)と交雑してパンコムギが生まれたらしい

2020-09-28 05:27:43
巫俊(ふしゅん) @fushunia

おもしろそうな論文、見つけました。 「コーカサスの紛争を巡る歴史的背景の客観的事実と認識ギャップの比較研究 」 jfe-21st-cf.or.jp/furtherance/pd…

2019-12-19 01:23:12

現在の国家のアルメニア・アゼルバイジャンなどは、旧ソ連や近世以来のコーカサスの歴史の結果、成立した国家ですので、これから話をする古代のコーカサスの話とは、直接つながらないかもしれないです。

「アルメニア語」は、英語やドイツ語、ロシア語、ペルシア語、サンスクリット語などと同じ「インドヨーロッパ語族」(印欧語族)に属する言語で、青銅器時代開始前後の紀元前2500年頃に、ギリシア語の言語的祖先と分岐しました。黒海の航海民の言語に由来し、コーカサスに定着したようです。

その後、歴史時代に、古代アルメニアはイランのゾロアスター教や、キリスト教の影響を受けながら、国家形成が進み、一説には「ヒッタイト」を自称したともされてます(関係は不明)。

古代アルメニアは、ローマ軍が攻めてくるなど、色々ありましたが、近世になると、コーカサスがイスラームの大国に分割されたりとかして、更にロシア帝国やソ連の支配を受けた後、現在に至るとのことです。

アゼルバイジャンの方は、古代アルメニア王国の隣の古代アルバニア王国があった場所ですが、現在のアゼルバイジャンは、トルコ系(突厥など、テュルクを自称した中世の遊牧民が西アジア一帯に進出したもの)らしいので、中世以降の歴史が関係してます。

とは言いましても、混血など多く、多種多様な人達が域内で生活してるはずで、歴史はしばしば政治利用されてるとのことです。

巫俊(ふしゅん) @fushunia

アルメニアといえば、古代史クラスタ的には、DNAの研究が気になってます。ギリシア語とアルメニア語は共通の語派から分岐してまして。 「ミノア人とは異なってミケーネ人には、青銅器時代のユーラシア草原地帯またはアルメニアの集団からの遺伝子流動が確認されました。」 sicambre.at.webry.info/201708/article…

2020-09-28 01:18:54