中沢新一批判をめぐる論争

中沢新一批判をめぐって交わされた、宗教学者の大田俊寛氏 @t_ota と文化人類学者の佐藤剛裕氏 @goyou の論争を中心にまとめました。 参考資料: 日刊サイゾー(2011年9月)〈対談〉元アーレフ代表・野田成人×宗教学者・大田俊寛 前編「自ら「グル」になろうとした中沢新一ら研究者たちの罪と罰」 続きを読む
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大田俊寛 @t_ota

★今回特に、私が佐藤さんの発言に抗議しなければならないと思ったのは、山口瑞鳳先生の中沢批判、さらには、山口先生との対談が収められた高橋英利氏の「僕と中沢新一さんのサリン事件」(以下、高橋論考と略)までもが、「私怨に満ちた言説」の一言で切り捨てられているように感じたからです。

2011-10-08 18:18:36
大田俊寛 @t_ota

★私が高橋論考を読んだのは、遅ればせながら昨年の夏のことでしたが、私はこの論考から、いくつものことを教えられました。まずその一つは、二〇歳前後までは私も熱心なファンであった中沢新一という人物が、本質的にどのような人間性を備えているかということについてです。

2011-10-08 18:18:48
大田俊寛 @t_ota

★中沢新一氏は地下鉄サリン事件後、オウム信者を「本気で引き受ける」と発言し、高橋英利氏を含む元オウム信者は、オウムがどこで道を踏み外したのかということを、中沢氏に質問しました。それに対して中沢氏は、どのように答えたか。

2011-10-08 18:18:59
大田俊寛 @t_ota

★詳しくは高橋論考を実際に読んでいただきたいのですが、それは「サリン事件の被害者が一万人とか二万人の規模だったら別の意味合いがあった」「坂本事件の犯人はオウムではない」「オウム事件の背後には大きな謀略がある」といった、耳を疑うような発言の数々だったのです。

2011-10-08 18:19:12
大田俊寛 @t_ota

★その答えに納得できない高橋氏は、「それはどういう意味か」と中沢氏に問い質しましたが、中沢氏はそれには回答せず、高橋氏の行動や人格を非難・侮辱する発言を繰り返した挙げ句、最後には一方的に「絶交」を宣言したのです。

2011-10-08 18:19:28
大田俊寛 @t_ota

★ここから分かるのは、中沢氏の思考が、きわめて濃密な幻想によって覆われているということです。こうした人間は、自分の幻想を共有してくれる人々に対しては、海のように深い優しさや包容力を示しますが、その人間が自分の幻想を否定していると分かるやいなや、態度を大きく豹変させます。

2011-10-08 18:19:47
大田俊寛 @t_ota

★そしてその際には、最初の人格とは正反対の人格、すなわち、陰湿な攻撃性や、混乱した感情に満ちた人格が現れてくるのです。率直に申し上げて、私はここに、「カルトの教祖」に類似したと言って過言ではない、特異な精神性の存在を感じ取らざるを得ません。

2011-10-08 18:20:01
大田俊寛 @t_ota

★第二に、中沢氏のチベット密教研究が、信頼に値しないものであるということです。もちろん、中沢氏を批判する山口瑞鳳氏のチベット密教理解もまた、一定の偏りや単純化が見られるものであるというのは、おそらくその通りだろうと思います。

2011-10-08 18:20:13
大田俊寛 @t_ota

★しかし、高橋氏のように、中沢氏の『虹の階梯』に真理性を見出してオウムに入信したという人間にとって、山口氏という専門家から中沢氏への苛烈な批判を聞かされたこと、また、仏教やチベット密教についての違った視点を与えられたことは、大きな意味があったのではないでしょうか。

2011-10-08 18:20:25
大田俊寛 @t_ota

★福田洋一氏の「日本のチベット学10年」も拝読しました。この論考は、チベット学の権威としての山口氏の業績を認めた上で、まさにそれを批判的に継承しようとしたものです。山口氏が盲目的に崇拝されていないという点で、日本のチベット学の学問的健全性を示していると感じました。

2011-10-08 18:20:38
大田俊寛 @t_ota

★それに比して気になるのは、中沢新一氏は、日本においておそらくもっとも著名なチベット密教研究者でありながら、この論文では一顧だにされていないということです。福田洋一氏もまた、山口氏と同じく、中沢氏の研究は学問的には「論外」であると見なしているのではないですか。

2011-10-08 18:20:51
大田俊寛 @t_ota

★また、手元に『サンガジャパン』6号を持っていたので、佐藤さんの「ダライ・ラマの慈悲とチベットの大地母神」を読みましたが、これのどこが山口批判やオウム批判になっているのか、門外漢の私にはよく分かりませんでした。もっと直接的な批判的論考を、別に書くべきではないでしょうか。

2011-10-08 18:21:04
大田俊寛 @t_ota

★中沢氏の「シュトックハウゼン事件」(『緑の資本論』所収、2002年)にも目を通しました。率直に申し上げて、唾棄すべき愚劣な論考、というのが私の印象で、これまで私が言ってきたとおり、中沢氏にはそもそもオウム事件を反省しうるだけの知的能力がないという事実を再確認させられました。

2011-10-08 18:21:15
大田俊寛 @t_ota

★音楽家シュトックハウゼン氏の舌禍事件と、宗教学者である中沢氏のオウム礼賛は、根本的に水準の違うものであり、両者を比較しても意味がありません。そして何より気になるのは、中沢氏がこの論考において、宗教の本質が「聖なる狂気」にあるという見解を繰り返していることです。

2011-10-08 18:21:26
大田俊寛 @t_ota

★宗教や芸術の本質は「聖なる狂気」にあり、それは場合によっては、圧倒的暴力や破壊に行き着くこともある。それを理解しない一般社会は、宗教家や芸術家の崇高な行為を妨害し、彼らを不当に貶めるための陰謀を張り巡らしている…。中沢氏の思考回路は、オウム事件以前と何ら変わっていないのです。

2011-10-08 18:21:40
大田俊寛 @t_ota

★今回中沢氏が、緑の党を結成して政治進出する意志を発表したことについて、私は中沢氏が、約二万人に及ぶ犠牲者を出したことで東北地方の「霊的磁場」が変わり、そこに救済者として降臨するという幻想でも抱いているのではないかという危惧を覚えずにいません。これは私の根拠のない妄想でしょうか。

2011-10-08 18:21:53
大田俊寛 @t_ota

★幻想やオカルトにしか触れたことのないロマン主義的思想家が、現実社会に不満を覚えて政治参加を志すとき、それがどれだけの惨禍を引き起こしてきたかを、私たちはもう知っているはずなのです。今の日本社会は、こうした幻想家に関わり合う余裕はもうないはずだというのが、私の考えです。/終

2011-10-08 18:22:07
りかちょびれ @rikaShuHALLI

中沢新一さんの話で一番印象に残ったくだり「僕は松田聖子になる」!!

2011-10-08 20:52:59
さ.て. @sktttr

@t_ota はじめまして。中沢氏への考察興味深く読ませて頂きました。オウム真理教の精神史も非常に面白かったです。ところで質問なのですが、ロマン主義が近代の影だとすると、未だにその影は消すことは出来ず蘇るのではないかと思うのですが如何でしょう?それが中沢氏かどうかは分かりませんが

2011-10-08 21:34:41
大田俊寛 @t_ota

@sktttr ご質問有難うございます。近代の構造が変わらない限り、その隙間からロマン主義的幻想が湧き出し続けるということも、変わることはないでしょうね。そしてそれは、芸術やエンターテインメントの次元に留まっている限り、必ずしも悪いことではないと思います。

2011-10-08 22:35:58
大田俊寛 @t_ota

@sktttr しかし、宗教や思想の研究者は、それが内部に危険な牙を宿していることを知っている必要があります。中沢氏のように、こうした近代的現象を「宗教の本質」と捉えてその幻想を自ら振り撒いたり、オウムの運動を後押ししたりするのは、まったくの見当違いということです。

2011-10-08 22:36:30
大田俊寛 @t_ota

@sktttr 私は、研究者に求められるのは、何かを扇動することではなく、むしろ社会の運動のブレーキ役だと思っています。「それ以上行くと危ないよ」という役割です。まあ、それ以前に、そもそもロマン主義とは何かということが分かっていない研究者も散見されますので、困ってしまうのですが。

2011-10-08 22:36:52
さ.て. @sktttr

@t_ota 返答ありがとうございます。ロマン主義は現実に直接影響を与えない領域で飼い慣らすという事ですね。なかなか難しそうですが、そうした知恵を持ちたいものです。

2011-10-08 22:45:15
大田俊寛 @t_ota

@sktttr 抽象的な回答になりますが、優れた芸術においては、幻想の魅力が十分に把握された上で、その危険性を乗り越える方途も示されているのだと思います。精神分析では、「昇華=崇高化」と呼びます。暴力として噴出する時点で、芸術としても失敗しているということではないでしょうか。

2011-10-08 23:03:25
さ.て. @sktttr

@t_ota 自分自身漫画やアニメに近い領域で仕事をする身としても考えさせられます。漫画やアニメの根には幼稚な欲求があるけれど、僕はその自浄作用を信じてもいます。でもオウムを例に考えると作者の意図とは別に後押ししてしまった側面もあるように思えるからです。

2011-10-08 23:23:53
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