ナイト・エニグマティック・ナイト #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「低脳だと?」余裕に満ち溢れたイダの笑みがわずかに歪む。 「ああ、ハイクですらない!」レイジは唾が飛ぶほどの剣幕でまくし立てた「そもそもセンテンスが2つしか……アバッ……!」 突然膝を付き、苦しむレイジ。イダの刀の柄が突き出され、彼の鳩尾をえぐったのだ。 23

2011-10-16 23:19:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前のハイクは陰気なんだよ、虫唾が走るぜ」イダは、苦悶に歪むレイジの顔の横に、唾を吐き捨てた「お前のハイクは、キョートじゃ永遠に評価されることはないだろうよ、フリーク。僕の家はハイク協会にも顔が利くからな……アハハハハハハ!」 24

2011-10-16 23:28:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

顔を真っ赤にしてむせ込み、ひとしきり涙を流し切ってから、レイジは立ち上がる。イダの姿はもう無い。理不尽に満ちたイミテイションの社会。憎悪、反抗心、殺意、劣等感……ノートに描かれたあの絵のように、言葉にならぬどす黒いハイクが、彼の胸のうちでまたひとつ編み上げられていった。 25

2011-10-16 23:38:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((やはり俺の作品を理解できる者は、この学校にはいないのだ……)))レイジはハイク作品群を忌々しげに睨みつけながら、廊下を後にした。そもそも彼が提出したハイク10作品のうち、9作品は壁に貼られてすらいない。それらのハイクはあまりにも暗く邪悪すぎたため、黙殺されたのだ。 26

2011-10-16 23:45:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((世界は狂ってる)))レイジは頭を垂れながら、両手を鉤爪のように強張らせ、殺意の化身の如き重い足取りで校門へと向かった。(((俺が見てる世界は嘘だ)))彼の頭の中にしか存在しない、ねばつく暗黒の影のオーラを周囲に纏って(((全てが嘘だ)))。「アッ!レ、レイジ=サン!」 27

2011-10-16 23:59:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

不意に、女の声が聞こえた。レイジは濁った目でそちらを振り向く。青と白のLANケーブルウィッグ、サイバーグラス、ガスマスクで顔を隠したサイバーゴスが居た。「レイジ=サン……私と」シュコーパタンとガスマスクの弁が鳴る「LAN直結してください!ピ、PINGだけで…いいですから!」 28

2011-10-17 00:07:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

またこのサイコパス女か、とレイジは舌打した。隣のクラスのヨモギだ。彼女の家はペケロッパカルトと呼ばれる新興テクノカルト教団員であり、カースト的にはレイジと同じフリークに分類されている。「駄目だ、近寄るな」レイジは冷たく言い放つ。サイコパスに優しくするとロクな事が無いからだ。 29

2011-10-17 00:15:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハッ、ハイク、良かったです!」ヨモギがまとわりつく。「どこが?」レイジは苛立たしげに返す。「暗いところ……。アッ!レイジ=サン、ユ、ユーレイゴスとか、好きなんですか?わ、私も、好きなんですけど!好きなテクノユニットとか、DJとか、バンドとか……!IRCで話しませんか!?」 30

2011-10-17 00:27:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ブッダシット…!」怒りで腸が煮えくり返りそうになったレイジは、マシンガンを構えた校門警備員たちの間を駆け抜けて、客待ちリキシャーのひとつに飛び乗った。ヨモギが何事かペケロッパめいたスラングを叫びながら駆け寄るが、ガスマスクのため長距離は走れない。すぐに後方へと消えた。 31

2011-10-17 00:35:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」レイジは嫌な汗をかきながら、リキシャーの座席で息を荒げていた。様々な感情が胸に渦巻いているが、一つは明らかに怒りだった。「暗いところがいいだと?ユーレイゴスが好きかだと?何も、何も解っていない!俺が伝えたいことを、何一つも!」 32

2011-10-17 00:42:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「好きなテクノユニットだと?好きなバンドだと?馬鹿馬鹿しい!LAN直結したいだけの嘘だ!」胃が鉛のように重い。レイジは汗まみれの髪を強張った手で引っ張りながら、腿に垂れる汗粒を見た。「俺は誰も尊敬していない!俺は誰の真似もしていない!俺はこの世界の嘘を暴きたいだけなんだ!」 33

2011-10-17 00:49:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

レイジは酷い憔悴と共に、5階建てマンションの前まで辿り着いた。ガイオンでは美観保護の観点から、五重塔より高い一般建築物が存在しない。「ステータス/実際安い/木の温もり」……商業的サブリミナルハイクのノボリが、マンション前で揺れている。レイジはそれを蹴り倒して部屋に向かった。 34

2011-10-17 01:04:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

酒瓶やマグロの頭などが雑然と置かれ、酷い異臭を放つ自宅のドアの前で、レイジは顔をしかめた。ドアを開ける前からでも既に、アルコールの臭いが漂う。どこか遠い場所で発砲音とサイレンが鳴り、レイジの心に暗示めいた不安感を抱かせる。(((また、あのスカム野郎が来てるのか……?)))  35

2011-10-17 01:05:28