デス・フロム・アバブ・セキバハラ #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(第2部「キョート殺伐都市」より 「デス・フロム・アバブ・セキバハラ」#3)

2011-11-14 22:13:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(前回までのあらすじ:イグゾーションに敗れたニンジャスレイヤーは、セキバハラ荒野で数日間に渡って磔にされていた。灼熱の太陽!空腹!サスマタ!拷問!バイオハゲタカ!バイオスズメ!そして狂気の影がニンジャスレイヤーを容赦なく襲う!もはやこれまでか?!だがそこへガンドーが駆けつけ……)

2011-11-14 22:15:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(……ガンドーは彼にスシを食わせたのだった!だがニンジャスレイヤーの負ったダメージは大きく、まともに歩くことすらできぬ有様。2人はストーンヘンジで休息を取り、体力の回復を待つ。一方その頃イグゾーションは、秘密アジトにてウミノの洗脳に成功。ヌンジャや三神器の情報を引き出していた…)

2011-11-14 22:20:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ここはバトルフィールド・セキバハラ。ガイオン・シティの遥か東に横たわる、広大な古戦場跡だ。江戸時代、ここで悲惨な大戦争が起こり、サムライやニンジャやダイミョが大勢死んだ。ネットワーク化された現在でもなお人々は太古の怨念やイービルスピリットを恐れ、この地に住み着こうとはしない。 1

2011-11-14 22:25:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そしてセキバハラの中心部である、ヘルボンチ。四方をキャニオンに囲まれたこの乾いた荒野に、太古の怨念を鎮めるために築かれた盛り土の丘とストーンヘンジがある。荒城が聳えるあのキャニオンも、かつては松の生い茂る美しい山だったが、異常気象等の影響を受け、いつからか現在の有様となった。 2

2011-11-14 22:33:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……って話はまあ、知識程度には知ってたが、まさかこんな所に自分で足を運ぶたあ、思っても見なかったぜ。サイオー・ホースだな」タカギ・ガンドーはしめ縄の巻かれたストーンヘンジに背を預け、49リボルバーの手入れをしながら、どこか他人事のように言った「俺の馬はくたばっちまったがよ」 3

2011-11-14 22:38:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヘルボンチの陽は傾き、夕暮れが近い。「スゥーッ!ハァーッ!」ニンジャスレイヤーは目を閉じ、チャドー呼吸を続ける。「ナンシー=サンに貰った金でサイバー馬を買ったはいいが、少し南でコブラに噛まれてよ…」ズバリ中毒のガンドーは一定の口調で語り続けていた「……あ、もしかして邪魔か?」 4

2011-11-14 22:49:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いや」ニンジャスレイヤーは目を閉じたまま素っ気無く答える「続けてくれ。気が紛れる。できれば何か、取り留めの無い話を…」。陽光の下で誰かと話をするなど、何時以来だろう。ふと、ニンジャスレイヤーことフジキド・ケンジの脳裏には、スガワラノ老人との余りにも短い安らぎの一時が蘇った。 5

2011-11-14 22:56:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「…でよぉ、馬の死体からショーユ瓶と水筒、どっち持ってくるかって言ったら、やっぱり水筒だろ…」ガンドーはリボルバーの回転を確かめながら続けた。チャドーをするフジキドの耳には彼の声が遠いラジオめいて聞こえる。「…スシを持ってきたのは、ナンシー=サンのリクエストで……それから…」 6

2011-11-14 23:07:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがそうした人間的な安らぎも、今の彼には酷く異質なものに感じられる。かつてのように素直に受け入れられない。フジキドは静かに、昨今の自分が呪わしき人外の存在へと向かっていたことを悟った。このままナラク・ニンジャを失い、人間性さえも失ったらならば、自分は何になってしまうのだろう? 7

2011-11-14 23:14:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

宿敵ラオモトを破ったあの夜以来、ナラクは長い休眠状態に入った。そして次第に、ナラクの自我と力が弱まりつつあることを、フジキドは感じ取っていた。かつて彼は、この邪悪なニンジャソウルを徹底的に嫌悪し、排除しようとしていた。それを喚んだのは、他ならぬ自分自身であったというのに……。 8

2011-11-14 23:25:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……でな、俺もガキの頃は、他愛もねえオスモウカトゥーンとかニンジャカトゥーンが好きだったよ……」ガンドーの低い声が心地良いネンブツめいて聞こえる。「……あの頃はまさか、ニンジャが実在するなんざ思ってもみなかった。ドラゴンとか吸血鬼とか、そういうのと一緒だと思ってたのさ……」 9

2011-11-14 23:33:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは半ばザゼン状態に入りながら、さらに数十分も瞑想と自問自答を続けた。ニンジャの世界では迷いが死を招くことを、彼は知っている。では感傷は弱さだろうか?「……で、まあ色々あったけどよ……俺が学んだのは、私立探偵の世界じゃ、シリアスになり過ぎた奴から死ぬってことだな……」 10

2011-11-14 23:41:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

成る程そうなのかもしれない、人間ならば。とフジキドは考えた。いつの間にか自分は、自分の中でさえ、人間ではないことに気付いた。問答はこれまでだ。自分はニンジャだ。ガンドーは人間だ。そして人間らしい人間が自分の隣にいてくれることが、まだ不幸中の幸いなのだろうと考え、目を開いた。 11

2011-11-14 23:52:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

すでにヘルボンチは血のように赤い夕暮れ刻だった。地平線の彼方にバイオスズメの群れが飛び去ってゆく。「起きたか?じゃあそろそろガイオンに帰ろうぜ?」ガンドーが49リボルバーをなめし革のホルスターに押し込んで立ち上がる。「できぬ」とニンジャスレイヤー。「ナンデ!?」とガンドー。 12

2011-11-15 00:07:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

すでにヘルボンチは血のように赤い夕暮れ刻だった。地平線の彼方にバイオスズメの群れが飛び去ってゆく。「起きたか?じゃあそろそろガイオンに帰ろうぜ?」ガンドーが49リボルバーをなめし革のホルスターに押し込んで立ち上がる。「できぬ」とニンジャスレイヤー。「ナンデ!?」とガンドー。 12

2011-11-16 21:51:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウミノ=サンを助け出さねばならぬ。私はスシを食えたが、今こうしている間にも、ウミノ=サンはどんな拷問を受けているか……」「帰り道に助けりゃいいだろ。俺はナンシー=サンとの約束どおり、あんたをガイオンまで連れ帰る」「ウミノ=サンの囚われているアジトの場所が、不明なのだ」 13

2011-11-16 22:01:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうやって助け出す算段だ?」ガンドーが問う。「アジトはこの荒野のどこかにある。奴らは明日の朝もここへ来るはずだ。私はニンジャを殺してサイバー馬を奪い、アジトへ案内させる」「オイオイ、俺はどうなる?」「先に帰っていてくれ」「帰れねえ」「オヌシ、そもそもどうやってここへ?」 14

2011-11-16 22:11:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

明朝。黄土色の砂煙を巻き上げながら無慈悲にセキバハラ荒野を渡る、13人の乗り手。鋭い日差しが、サイバー馬のサイバーサングラスに反射していた。 16

2011-11-16 22:26:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

隊列の中央付近には、赤橙のニンジャ装束を纏うイグゾーション。その横には、黒いニンジャ装束に黒い処刑人頭巾、そして上半身裸のエクスキューショナー。後ろにいる2人の側近クローンヤクザは「イグゾーション」と細くミンチョ書きされた旗を力の象徴として背負い、威圧的にはためかせていた。 17

2011-11-16 22:31:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

馬上のイグゾーションは終始無言であった。計算高い彼のニューロンには今、昨日のキョート城でのミーティング光景が反復再生されている。狡猾なる彼は、セキバハラでの秘密行動をパラゴンやダークニンジャに察知されぬよう、連日キョート城の黄金茶室と秘密アジトを涼しい顔で往復していたのだ。 18

2011-11-16 22:37:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

昨日の茶会中も、イグゾーションはダークニンジャの腹の内を探るべく、何度か奥ゆかしい言葉を交わした。採掘現場から行方をくらましたウミノがまだ発見されていないことが他の者からふと話題に上せられたが、ダークニンジャは平静を保ち、イグゾーションもまた淡々と高度な仮面劇を続けたのだ。 19

2011-11-16 22:52:57