デス・フロム・アバブ・セキバハラ #3
おそらくダークニンジャはまだ、こちらがあの2人を捕獲したことに気付いていない筈……イグゾーションはそう推し量った。彼の社交能力は極めて高く、また彼自身もそれを誇りとしていた。だが、他のグランドマスターやパラゴンはどうか。ザイバツ上層部には彼と同等の政治力を持つ者が大勢いる。 20
2011-11-16 23:04:02あと数日この隠密行動を続ければ、その誰かが不信感を抱くやもしれない。その時、その者がダークニンジャの側に与する者でないという保証は、何処にも無いのだ。ザイバツ上層部を占めるのは、自分と同じ、油断ならぬ化け物ばかり。「残された時間はあと僅か…」イグゾーションは静かに口を開く。 21
2011-11-16 23:09:40イグゾーションはカラテだけでなく、政治的手腕にも絶大な自信を抱いていた。事実、ダークニンジャに1対1のカラテを挑めば、彼を倒せていただろう。だがそれは彼にとっての勝利ではないのだ。「エクスキューショナー=サン、御苦労だった。今日がセキバハラを離れる日となるだろう」「ハイ!」 22
2011-11-16 23:19:37「万が一、今日のスシ・トーチャリングでもまだ……彼が従順にならないならば、君に彼をやろう。肉体を自由に破壊してよい」「ヨロコンデー!」処刑者は頭巾の奥で目を輝かせた。ナムアミダブツ!かくも無慈悲にして冷酷なるニンジャたちを乗せたまま、サイバー馬たちはヘルボンチに到達する! 23
2011-11-16 23:32:42キャニオンに囲まれた盆地を駆け抜ける乗り手たち。イグゾーションとエクスキューショナーの鋭いニンジャ視力は、サイバー望遠鏡並みに視界をズームアップし、ストーンヘンジの丘に立つ磔台と、そこでうなだれるニンジャスレイヤーの姿を見た。上空ではバイオハゲタカたちがまた旋回している。 24
2011-11-16 23:39:51磔台にスシ・トーチャリングは、江戸時代の貴族が好んで使った残酷かつ雅な拷問方法である。自らの手を汚すことなく、対象が衰弱し狂う様子を観賞できるのだ。(……さしものニンジャスレイヤーとて今日こそは屈するだろう。そして次はフジオ・カタクラを……)イグゾーションが考えた、その時! 25
2011-11-16 23:46:39「「アーッ!?」」前方を駆けていた2騎のクローンヤクザが、丘のふもとのストーンヘンジで突如転倒!砂煙が巻き上がり、後続の視界を奪う!ナムサン!何が起こったのか!?列石と列石の間の地面に隠されていた古いシメナワがトラップめいて引き上げられ、サイバー馬たちの脚を襲ったのだ! 26
2011-11-16 23:53:34「「ザッケンナコラグワーッ!」」BLAM!BLAM!岩陰から聞こえる49マグナムの銃声とクローンヤクザの絶叫。いななき声をあげて棹立ちになるサイバー馬たち。ストーンヘンジの丘は大混乱に包まれた。そして磔台で拘束のニンジャスレイヤーもまた、砂煙に紛れて、動く! 27
2011-11-17 00:04:33罠はシメナワだけではない。前方を走るクローンヤクザたちのサイバー馬は、突然の事態に対応できず、1騎また1騎と非人道兵器マキビシに引っかかり乗り手を投げ出した。「アイエエエエエ!」こちらでは不運なクローンヤクザが落とし穴に落下し、タケヤリに刺さってキリタンポめいた死を遂げる。 28
2011-11-17 00:10:00並走していたイグゾーションとエクスキューショナーの馬もまた例外なく、マキビシ・トラップに引っかかる。「「イヤーッ!!」」だがニンジャである2人は、その直前にサイバー馬の鞍を蹴り、砂煙に包まれた丘の麓へと鮮やかな回転ジャンプで跳躍していた。二者は直ちに臨戦態勢に入る。 29
2011-11-17 00:18:21一方タカギ・ガンドーは、転倒したサイバー馬の横にいるクローンヤクザをピストルカラテで射殺し、素早く鞍の上に飛び乗っていた。タツジン!常人とは思えぬこの判断力と運動能力は、ズバリ過剰摂取によるニューロンの力である!そしてサイバー馬の首の後ろにあるLAN端子に素早くLAN直結! 30
2011-11-17 00:26:33わずか3秒のIRCハッキングで、サイバーグラスに「強制的な」の文字が。ゴウランガ!それに跨り、闇雲にストーンヘンジの外へ向け駆けるガンドー!生身の人間である彼は、ニンジャと直接戦闘すればまず勝てないことを知っていた。この混乱が収束しないうちに離脱せねば、実際命はないだろう! 31
2011-11-17 00:33:02「「「アバババババーーッ!」」」2、3個の爆発が起こり、クローンヤクザの断末魔の叫びが聞こえた。イグゾーションのおそるべきバリキ・ジツが人間爆弾を作り出し、その爆風で砂煙とトラップ煙幕を強引に吹き飛ばしたのだ。 32
2011-11-17 00:41:17そして砂煙と煙幕が晴れた直後、ガンドーの斜め前方にエクスキューショナーが現れ、サイバー馬に乗った彼の姿に気付く。「ヤバイヤバイヤバイ!」ガンドーが片手で49マグナムを抜き放つ!「イヤーッ!」サスマタでそれを弾くエクスキューショナー!そして卑劣なるサスマタをサイバー馬の首へ! 33
2011-11-17 00:44:55だが背後からトビゲリ・アンブッシュ!「Wasshoi!」「グワーッ!」エクスキューショナーの首が一撃でちぎれ飛ぶ!サスマタは地に落ち、ガンドーのサイバー馬は無事に通過!ガンドーは背後を見た。陽光の下で雄雄しくトビゲリ飛行するフジキドと一瞬視線が交錯した。「オタッシャデー!」 34
2011-11-17 00:53:45ストーンヘンジを軽やかに三度蹴り、回転ジャンプから着地するニンジャスレイヤー。その直後に、背後でエクスキューショナーの死体が爆発四散した。ナムアミダブツ!間髪いれず、その爆煙の向こうから、バンザイ状態のクローンヤクザと、口角から泡を噴いたサイバー馬たちが突き進んでくる! 35
2011-11-17 00:58:49ヤクザも馬もその目、口、鼻、耳から激しく発光している。イグゾーションのジツにより、バリキ爆弾と化しているのだ!ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを構え、スリケン連続投擲でこれに対抗する!「イヤーッ!」「アバーッ!」カブーム!「イヤーッ!」「アバーッ!」カブーム!ヤクザは弱い! 36
2011-11-17 01:01:57「イヤーッ!」続いてサイバー馬爆弾へスリケン!だがいかなニンジャとて、人間の何倍もの体躯を誇るサイバー馬を、一撃のスリケンで葬ることは不可能だ。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」カブーム!ようやく1頭を爆死させると……次には新たな2頭が現れ、猛スピードで距離を詰めてきた! 37
2011-11-17 01:08:16「イイイヤアアアーッ!」ニンジャスレイヤーは片膝立ち姿勢を取り、ピッチングマシーンめいた動きで大量のスリケンを交互に両手投擲!カブーム!カブーム!爆発の衝撃がニンジャスレイヤーの身体を揺らす。だが爆炎の彼方から、さらに3頭のサイバー馬爆弾が疾走してくるではないか!ナムサン! 38
2011-11-17 01:10:48開脚ジャンプによる回避も可能だろう。だが、方向がまずい。ジャンプでこの突進をやり過ごせば……暴走し異常脚力を見せるサイバー馬爆弾たちは、ガンドーの馬を追尾し、追いつき……彼を爆死させてしまうに違いないのだ。ニンジャスレイヤーは迫り来る馬爆弾に向け、ジュー・ジツを構え直した! 39
2011-11-17 01:16:38(第2部「キョート殺伐都市」より 「デス・フロム・アバブ・セキバハラ」#3終わり #4へ続く)
2011-11-17 01:17:37