カース・オブ・エンシェント・カンジ、オア・ザ・シークレット・オブ・ダークニンジャ・ソウル #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第2部「キョート殺伐都市」より 「カース・オブ・エンシェント・カンジ、オア・ザ・シークレット・オブ・ダークニンジャ・ソウル」#4

2011-12-14 21:27:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダークニンジャことフジオ・カタクラは、小休止から目を覚ます。暗く湿った洞窟の壁に背を預け、脚を投げ出して独り眠っていたのだ。その胸には、カーボンケースとフロシキに収めたベッピンの破片。タケノコめいた鍾乳石から垂れる水音が、長い回廊めいた地下洞窟で静かに反響していた。 1

2011-12-14 21:33:43
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未だニューロンの奥には、色褪せ風化した過去の残響……人間だった頃の記憶がこびりついている。ダークニンジャはそれを否定も肯定もしない。いまや彼の精神はハガネの如く鍛え上げられ、カタナのように切れ味鋭くなり、妖しいカリスマさえも纏い始めていた。おびただしい血を吸った妖刀めいて。 2

2011-12-14 21:39:37
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ダークニンジャは胸元の折れたる魔剣を確かめてから、ゆっくりと立ち上がる。ここは地下数百メートルの暗黒の世界。キョート山脈に立つ廃テンプルで平安時代の隠し階段を発見し、そこから北東に向かって長い地下洞窟をひたすら降下してきた。現在地点はおそらく、琵琶湖の真下だ。 3

2011-12-14 21:46:26
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ブゥン……という小さなノイズを放ちながら、モーターチビが起動する。オムラ社が試作品として開発した握り拳大のデヴァイスで、12個のジャイロを備えた12面体フレームの中心に青色LEDが燈り、ハチドリのごとく飛び回りながらヒトダマめいた光を放つ。コンパスやIRC機能も備わっている。 4

2011-12-14 21:53:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダークニンジャは再び暗い地下洞窟を駆け始めた。ハイテク・ヒトダマがそれに続く。地下数十メートル地点でブッダ像を破壊し、さらにその先に道を発見して以来、階段のような人工的構造物とはお目にかかっていない。それどころか、鍾乳石の格子がたびたび行く手を阻んだ。 5

2011-12-14 22:05:48
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だがカタクラの目は、人為的な痕跡を見逃してはいなかった。完全に天然の洞窟に見えるが、所々、強引な物理的破壊によって道を作った形跡があるのだ。しかも、鍾乳石の檻が育つほど昔……つまり平安時代にここを通った者がいるということだ!コワイ!「重点!」突然、モーターチビが警告を発する! 6

2011-12-14 22:16:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何かいるな」ダークニンジャも、モーターチビのソナーレーダーとほぼ同時に、何かの存在を感じ取った。洞窟は次第に広がりを見せ、サッキョーライン地下鉄トレインが通れるほどの大きさになっている。奥から奇怪な物音と光が近づいてきた。「サンダーフォージが鍛えた門番……というわけか?」 7

2011-12-14 22:29:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャとの遭遇を想定し、カタクラはジュー・ジツを構える。……だが闇の中から姿を現したのは、ニンジャではなかった。ましてやモータルでもなかった。……おお、ナムアミダブツ!闇の中から現れたのは、微かに紫発光する刀剣を構えた、中身の無い身長8フィートのサムライアーマーであった! 8

2011-12-14 22:44:53
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「ARRRRRRRRGGG…」甲冑のメンポから、オバケめいた声が漏れる。モーターチビは困惑しダークニンジャの背後に隠れた。距離はタタミ10枚。鎧武者の手には、太古のバスタード・カタナブレードツルギが握られている。刀身には平安時代のハイクが彫られ、それが紫色に発光しているのだ。 9

2011-12-14 22:58:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「言葉を解さぬ木偶か……」恐らくはジツで動く自動人形。異形のカタナからはニンジャソウルの痕跡を感じるが、鎧武者本体にソウルは宿っていない。ニンジャでないならば、何の価値も無い敵だ。フジオは電撃的な速さでクナイ・ダートを抜き、右腕をムチのようにしならせ投げ放つ!「イヤーッ!」 10

2011-12-14 23:09:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン!メンポに四本のクナイが突き刺さる。だが全く動じる様子は無い!続けざま、ダークニンジャが高速接近し、胴当て部分に痛烈な連続カラテを喰らわせる。だがこれも効果無し!逆にケンドー・オートマトンは目の前のダークニンジャ目掛け、バスタード・カタナブレードツルギを振り下ろす! 11

2011-12-14 23:40:51
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キィィィィンン!激しい金属音!ダークニンジャは両腕を交差してかざし、その重い一撃を受け止めた。バスタード・カタナブレードツルギが生み出す衝撃によって、ダークニンジャの両腕を包む装束が千々に切り裂かれ……ブッダ!下から現れたのは三神器のひとつ、聖なるブレーサーではないか! 12

2011-12-14 23:50:52
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「RRRRRRRR……!」ケンドー・オートマトンが初めて呻いた。バスタード・カタナブレードツルギが刃こぼれし、古代ハイク部分の内側から発せられる紫光が、漏電ネオンサインめいた明滅と火花を散らす!間髪入れず、回転チョップで敵の手首を切断するダークニンジャ!「イヤーッ!」 13

2011-12-15 00:02:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ARRRRGGGGGHHH……」片手でも両手でも使える呪われた刃、バスタード・カタナブレードツルギが地に転がると、ケンドー・オートマトンの砕けたメンポの奥から断末魔の如き叫び声が上がった「……サヨナラ!」。そして中身の無い鎧もまた、糸が切れたかのようにがらりと地に転がる。 14

2011-12-15 00:06:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

真正面からぶつかり合えばより強い金属が勝る。何も不思議なことは無い。カラテと同じことだ。ダークニンジャは事も無げに門番の成れの果てを見た。バスタード・カタナブレードツルギのハイクは、八割方判読不能なほど光を失っている。カタカナを目で追うと……詠み人はやはりサンダーフォージ! 15

2011-12-15 00:17:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダークニンジャはバスタード・カタナブレードツルギを踏みつけながら先へと向かう。回廊めいた一本道の洞窟が終わり、境界を告げるように左右に古代の灯篭が並んでいた。先には広大なドーム状空間と巨大地底湖が広がっている。「灯篭重点!」モーターチビが警告する。「解っている、黙っていろ」 16

2011-12-15 00:37:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダークニンジャはモーターチビの電源を切る。もう必要は無くなったからだ。理由は解らぬが、ドーム球場並の広さを持つこの巨大な半球状空間は、淡く発光する地底湖の水によって照らし出されている。さらに湖の中心に向かって飛び石とトリイが続き、その先には小さなドージョーが立っていた。 17

2011-12-15 00:50:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

世界各地に残された数々の古代ニンジャ文明を渡り歩き、そこに残されたニンジャオーパーツを目にしてきたダークニンジャだが、さしもの彼もこの古事記的空間の出現には緊張を隠せない。慎重に飛び石を渡る。湖面は驚くほど静かで、底にはアルピノワニめいた生き物と兎の骨が眠りについていた。 18

2011-12-15 00:57:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そしてドージョーへ。それは高床式で、タタミ100畳のドージョーの四方をショウジ戸が取り囲み、その周囲にはさらに鉄製の狭い床が渡されていた。奥ゆかしさと荘厳さ、そしてどこかゼンめいたミニマル感を漂わせる、ぞっとするようなドージョーであった。 19

2011-12-15 01:05:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

果たしてこのドージョーが築かれたのはいつの時代なのか?正面エントランス部分に掲げられた力強くも禍々しい「平安」のウッドショドーが、その問いに対し静謐のうちに答えを返していた。そしてこの奥には、神話的存在が待ち受けている。ダークニンジャは鋼鉄縁側に正座し、ショウジ戸を開いた。 20

2011-12-15 01:12:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そのショウジ戸が開かれたのは、果たして何百年、いや何千年ぶりだったのであろうか。内部に篭っていた冷たく凛とした空気が漏れ出し、ダークニンジャの背筋がひとりでにぴんと伸びる。ダークニンジャの眼は、カタナ鍛冶ドージョーの中心で静かに正座する、異形のニンジャシルエットをとらえた。 21

2011-12-15 01:16:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ドーモ、サンダーフォージ=サン。ハガネ・ニンジャのソウルを宿し者、ダークニンジャです」カタクラは緊張で激しい喉の渇きを覚えながらも、何とかアイサツを行った。彼に憑依したのがハガネ・ニンジャでなく下等なレッサーニンジャソウルであったならば、たちまち失禁していたところだ。 22

2011-12-15 01:21:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、ダークニンジャ=サン、サンダーフォージです」異形の鍛冶ニンジャがアイサツした。それはゆっくりと立ち上がり、煤けたニンジャ装束に包まれた、13フィート強はある筋骨隆々の巨体を露にする。そして……ナ、ナムサン!彼の背中からは丸太のように逞しい8本の腕が生えていたのだ! 23

2011-12-15 01:26:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「我、永遠に生きる呪いを負うたる者……」そのニンジャは胸の前で組んだ6本の腕も開き、計14本の腕に力強い握り拳を作った。筋肉が漲る。上半身は異常に長く、ムカデめいた印象を与える。ナムアミダブツ!彼は古代ニンジャ文明において、果たしていかなる神として崇められていたのか。 24

2011-12-15 01:35:25