斉藤清二先生による「物語の視点から見たEBM」~3つのEBM物語~

斎藤清二先生(@SaitoSeiji)による,日本における「正統派:Orthodox School」「ガイドライン派:Guideline School」「伝統科学派:Conventional Scientist School」の三つのEBM(Evidence Based Medicine)物語 ■関連まとめ 「医療におけるエビデンスとナラティブ」と「心理学におけるエビデンスに基づく実践」について http://togetter.com/li/236616
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斎藤清二 @SaitoSeiji

@psypub すごくおおざっぱにシミュレーションすると、正統派のEBMであれば、例えば「発達障害のある人に、ウコンを投与すると、プラセボ投与に比して、発達障害の特性による生きにくさを軽減するか?」という臨床疑問を定式化し、文献を検索することから始めることになると思います。

2012-01-14 15:59:00
斎藤清二 @SaitoSeiji

@psypub そうすると、おそらくそういうRCTは存在しないので、次の段階では、患者さん(あるいは家族)に「ウコンが有効であるというエビデンスは現在のところありませんが、私は○○という理由で、試してみる価値はあると思います。どうしますか?」と話すことになると思います。

2012-01-14 16:03:12
斎藤清二 @SaitoSeiji

@psypub もしK先生がこのように患者と対話したとすれば、それが実行される可能性はかなりあると思います。この場合、診療としてのEBMは成立しています。そしてこの場合、患者(あるいは家族)からみて、「満足」と評価される可能性はかなりあるのではないかと思います。

2012-01-14 16:06:39
斎藤清二 @SaitoSeiji

@psypub もしガイドライン派のEBMの立場から考えると、まず「発達障害のある人への治療ガイドライン」を作成するという点に関心をもつと思います。もしウコンをガイドラインの標準治療として採用してもらいたければ、RCTを計画することがベストですが、これはなかなかたいへんでしょう。

2012-01-14 16:11:06
斎藤清二 @SaitoSeiji

@psypub しかし、RCTで発達障害へのウコンの有効性を実証することは、理論的にはもちろんできないわけではありません。実は、アウトカムをどう設定するか、対照群をどうとるかなどの研究デザインが最も重要なのですが、この点について正面から論じられることは稀です。

2012-01-14 16:15:55
斎藤清二 @SaitoSeiji

@psypub もし、ウコン単独の効果を「プラセボウコン」との比較試験によって実証しようとすれば、おそらく研究は失敗するでしょう。しかし「ウコン併用神田橋療法」の効果を実証するために「待機者リスト登録群」を対照群としてRCTを行えば、おそらく効果は実証されるでしょう。

2012-01-14 16:20:56
斎藤清二 @SaitoSeiji

@psypub 実はCBTに限らずRCTを施行されているほとんどの心理療法は、薬物療法以上の効果量を示ことが実証されていますが、多くの場合、対照群の取り方に大きく依存していると考えられます。つまりこのような実験デザインでは、非特異的効果を含んだ効果が測定されているのです。

2012-01-14 16:26:46
斎藤清二 @SaitoSeiji

@psypub 伝統科学派のEBM物語から見れば、「ウコン」だの「小脳の邪気」だの「気功」だのが「科学的かどうか」が問題になります。ここで気を付けなければいけないのは、「小脳の邪気」はだめだが「小脳のMRI画像」とかだと、批判的吟味なしにOKとされてしまう傾向があるということです

2012-01-14 16:32:46
斎藤清二 @SaitoSeiji

@psypub つまり、伝統科学派のEBMの最大の弱点は、「非科学的なもの」を確実に排除しようという目的に反して「一見科学的に見える偽科学」を、むしろ呼び込んでしまう可能性があるということです。小脳と前頭葉のシナプスがどうのこうのは、正統派のエビデンスとは関係がないのです。

2012-01-14 16:35:59
*サイパブ @psypub

@SaitoSeiji なるほど。理解が進みました! 正統派としては,ウコンのRCTがあればなお良い,という感じでしょうか。ガイドライン派としては標準治療化は難しいが,治療パッケージとしてなら,効果実証の芽はありそう,伝統科学派としてはケシカラン,といった感じでしょうか。

2012-01-14 16:58:25
斎藤清二 @SaitoSeiji

はい、そのとおりです。おかげさまで、私の理解も進みました(笑)。自分で言うのは変ですが、この分析法結構使えますね。ホメオパチー問題をこの枠組みで論じてみようかしらん(←火傷注意)@psypubなるほど

2012-01-14 17:06:52
*サイパブ @psypub

@SaitoSeiji ひとつ気になりましたのは,こうした伝統科学派的な観点をユーザーが持つことの意味というのは,なんだろうな,ということです。ウコンを飲まないことで金銭的には得をしているのかもしれませんが,改善の機会を逃しているのかもしれない。その逆もまたありえますよね。

2012-01-14 17:04:03
斎藤清二 @SaitoSeiji

伝統科学派のEBM物語の存在意義は、こういった議論を通じて「科学とは何か?」という根本問題に、私達の目を向けさせてくれるきっかけを作る事だと思います。@psypub ひとつ気になりましたのは,こうした伝統科学派的な観点をユーザーが持つことの意味というのは,なんだろう .

2012-01-14 17:11:33
*サイパブ @psypub

なるほど。それを踏まえた上で,ウコンを選ぶ(あるいは選ばない)という判断に,意味があるということですね RT @SaitoSeiji 伝統科学派のEBM物語の存在意義は、こういった議論を通じて「科学とは何か?」という根本問題に、私達の目を向けさせてくれるきっかけを作る事だと

2012-01-14 17:14:35
斎藤清二 @SaitoSeiji

はい。EBMはもともと反権威的であり、簡単には信じないぞ!という挑戦的な心が出発点にあると思います。自らを権威づけたい人にEBMがハイジャックされることを許してはならないと思います。@psypubなるほど。それを踏まえた上で,ウコンを選ぶ(あるいは選ばない)という判断に,意味が

2012-01-14 17:26:58
斎藤清二 @SaitoSeiji

故アンナ・ドナルドの名言に、「医学における他のほとんどの認識論的システムと違って、EBMは単独の健康物語を信ずることを全く要求しない」という言葉があります。@psypub 治療者の専門性とユーザーの主体性が対立するときには、どちらを支援するかは、一概には、言えない(何も.

2012-01-14 17:32:20