第3話 「 あした 」

光野 水栄（Yukue_Hikarino） @Hika_Rarala

自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の1】　――ゆっくりと見えてきた、学校の裏門。未咲は、このとき初めて、学校で勉強できることがうれしいと感じました。（学校か‥。今までは、おにごっことか、着せ替えとか、美男子とか――しか思わなかったっけ） #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の2】　未咲（みさき）が門から入ろうとすると、「では、私たちは、これで」ふいに、お巡りさんが、やや小声で、威勢のいい声色で言いました。「送っていただいて、ありがとうございました」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の3】　秋本くんが、いつもの聞き取りやすい物静かな声で言い、まるで社会人のように一礼しました。その後ろから、未咲は幼い妹のように、ひょいっと顔だけのぞかせました。「うわ立派！」彩花（あやか）の驚きの声。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の4】　「その、助かりました」大助が言い、斜め後ろにいた愛も同時に、会釈のときのように頭を下げました。「いえ、そんな//」とお巡りさんが照れている間に、琴子（ことこ）は、ぺこりと門に駆け込みました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の5】　校長先生になにか訊かれて答えていた伊野（いの）先生が、バッとふり返って「ありがとうございます！」とだけ言うと、お巡りさんは「では」と言い、ブルー・ブーケとともに、歩道橋を上ってゆきました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の6】　未咲は、目で追っていた琴子が女子トイレに消えると、彩花に尋ねました。「愛ちゃんは？　麗央奈（れおな）は？」「えーと。麗央奈はね、たぶん教室。愛ちゃんは、保健室」「ふーん」考えようとしたら、 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の7】　廊下が寒いことに気がつきました。（明日から春にならないかな‥くすん）「明日か。何が待つんだろうな？」「大ちゃん」そこへ、髪と襟を直した秋本くんが戻ってきました。「って、半袖かよ！」「それより、」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の8】　秋本くんは、冬服で震える未咲と、詰襟のボタンをすべてとめ、学帽をかぶった大助を連れて階段を急ぎます。「おい、彩花は？」「教室」「マジか！」「さぶ！」教室へ着くと、2時間目のチャイムが響きました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の9】　「そこからは覚えていない。そういや、2時間目から出たのって、初めて」パタン。アキハノミコトは、何かを閉じてから、ふり向きながら言いました。「お上品とはいえ、後ろから見ないでくださいますか？」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の10】　「申し訳ありません」「いえ、よいのです」ラファエルの丁寧な謝罪が伝わったのか、アキハノミコトは、急にいつもの笑顔になりました。2時間目の授業が、あと10分で終わる教室――ラファエルは、そっと #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の11】　白い指先で、少女の髪に触れました。少女は、いちばん後ろの席で、白い花が揺れるような寝息を立てています。「寝てても清楚なヤツって、すげーな」「イビキかかない女、初めて見た‥」「あたしも！」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の12】　コン‥「授業中です！」先生が、黒板の木枠を軽くたたいて言いました。「は～い」とりあえず、皆、前を向きました。「琴子‥」（なんか、具合わるいの？？）未咲だけが、心配そうな顔をしました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の13】　「大丈夫ですよ」先生が、未咲に言いました。「え？」（こんな、優しかったっけ？）未咲が先生の顔をまじまじと見た、次の瞬間。チャイムとともに、休み時間になりました。‥そして‥ #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の14】　日直の2人が、黒板の前に出てきました。「次、何だ？」「ひゃ」大助と未咲が見守る中、2人は1つずつマグネットを貼り、ゆっくりと席にもどりました。――「5時間目」「自習」と書かれていました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の15】　「あれ？ もう、そんなだっけ？」「んー」半分寝ている雰囲気の人が、少しばかり増えてきました。未咲は、その反対です。ガタ‥「ねぇ、恐竜の話しない？」椅子もなおさず、秋本くんの席に駆けつけました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の16】　「ちょ‥落ち着け」大助が、ひっくり返った椅子をもとの位置にもどしながら、苦笑まじりに言いました。「てへ。ドンマイ♪」未咲は、マンガのように返事をすると、秋本くんの顔をのぞき込みました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の17】　「なんか、寝てるー」未咲が、無邪気なふくれっ面で言いました。告白しようと席にやってきた女の子たちは、3人ともズッコケました。「そっか」大助は、学帽を磨きながら、気を落ちつけておりました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の18】　「でも、朝からUFOとか、普通やらないよね」「先生、多分、気づいてると思う‥」未咲と大助は、ギョッとしてふり返りました。（ハート・クエスト‥だっけ？ 大丈夫かな、今回）未咲は、テンションが低い #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の19】　気持ちになりました。「しかし、明日か」「大ちゃん、どうしたの？」そこへ、男の子が2人きて、言いました。「『明日』、何があるの？」「お前ら、大丈夫か？‥ブレイン、寝てるし」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の20】　「たしかに」「察しがいいな」未咲と大助は、事実を認めました。（でも、みんなに聞こえてるのか――どうやってわかるんだろ？）未咲は、席に座ったまま、教室をぐるりと見渡しました――。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の21】　「やはり、我々の気配は感じずじまいですか」アキハノミコトは腕を枕に仰向けになり、片膝を立てた姿勢で、言いました。「しかしながら、未咲ちゃんのせいでしょうか？」ラファエルは考えながら言いました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の22】　2人は、姿と音声と存在感を消したまま、教室のいちばん後ろの席の後ろにおりました。「そうですね、‥もうひとたび、あの女の子に話しかけてみてください。――心で、ですよ？」「――かしこまりました」 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の23】　ガタ‥「え！？ 何？ きこえない！」未咲は、突如、席から立ち上がり、きょろきょろと探しながら言いました。ざわ‥「びっくりした‥」――アキハノミコトは飛び起きて、ラファエルの横顔を見つめました。 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の24】　（なんか‥あらら？ ヘンな気配がしてきた感じ？）未咲は、いつになく真っ直ぐな背中で立っていました。その瞳の先に、人のようなシルエット‥と思ったら、今度は≪光でできたシルエット≫に変わり、 #HQ_hikarino_youko

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自作冒険小説『ﾊｰﾄ･ｸｴｽﾄ』【第3話の25】　雪色の炎のようにきらきら揺らめきながら、それでいて、眼光の奥を癒す光を放ちながら、今はっきりとした一人の姿に変わりました。その淡い指先は「琴子！」の髪に触れ、ゆらめく光を共有しておりました。 #HQ_hikarino_youko